日銀利上げ観測・円キャリー巻き戻し・米雇用統計が焦点
2026年8月のドル円相場は、7月末の円買い介入による急落の余波が残るなかで始まった。
月初には弱い米雇用統計を受けて156円台まで下落したものの、その後は日米金利差を背景に159円台まで反発。月末にはジャクソンホールでウォーシュFRB議長がインフレ警戒を示したことで160円台を回復した。
しかし、8月31日週に入ると日銀の9月利上げ観測が急速に高まり、円キャリー取引の巻き戻しも加速。ドル円は160.39円から155.30円まで急落し、相場の主役がドルから円へ移る大きな変化がみられた。
主な注目材料
- 7月末の円買い介入後の値動き
- 米雇用統計
- 米CPI- PPI- PCEデフレーター
- FOMC議事要旨
- ジャクソンホール経済政策シンポジウム
- ウォーシュFRB議長のインフレ警戒発言
- FRBの9月利上げ観測
- 米2年債、10年債、30年債利回り
- 米財政と国債需給への懸念
- 日米金利差
- 日銀の9月追加利上げ観測
- 日本10年国債利回りの上昇
- 円キャリートレードの巻き戻し
- 160円台での為替介入警戒
- 中東情勢と原油価格
8月前半は円買い介入後の相場と米雇用・物価指標が中心となった。
月後半にはジャクソンホールを受けたFRB利上げ観測によってドル円が160円台を回復したものの、8月31日週には日銀の利上げ観測が急速に高まり、円キャリー取引の巻き戻しが進んだ。強い米雇用統計と米金利上昇でもドル円が反発を維持できなかったことから、月末には円側の材料が相場を支配する状態へ変化した。
週ごとの相場まとめ
8月3日週:介入後の反発力と米雇用統計が焦点
8月3日週のドル円は、7月末の日米協調介入の影響を引き継いで始まった。
週初には追加介入への警戒から155.23円付近まで下落したが、その後は日米金利差や原油高、米国債利回りの上昇を背景に買い戻され、7日には一時158.57円まで反発した。
しかし、7月米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想外の減少となり、過去分も下方修正されると、9月FOMCでの利上げ観測が後退した。ドル円は156.68円まで急落した後、157.76円で週を終えた。
週初時点の展望は「来週のドル円見通し(2026年8月3日~7日)|米雇用統計と為替介入に注目」で整理している。
8月10日週:米CPIとFRB利上げ観測が焦点
8月10日週のドル円は157.78円付近で始まり、介入後の円高を巻き戻す動きが続いた。
週初から日米金利差や株高を背景に円売りが優勢となり、一時159円台まで上昇した。米CPIは市場予想に沿った内容となり、PPIも前月比横ばいとインフレ鈍化を示したため、FRBの9月利上げ観測は後退した。
それでもドル円の下落は限定的で、週を通じて159円台を中心に底堅く推移した。週末には弱い米小売売上高もドルの上値を抑えたが、ドル円は159.32円付近で週を終えた。
週初時点の展望は「来週のドル円見通し(2026年8月10日~14日)|米CPIとFRB利上げ観測に注目」で整理している。
8月17日週:158~160円でもみ合い、米金利上昇でもドルは伸び悩む
8月17日週のドル円は159.30円付近で始まり、18日に159.78円まで上昇したものの、その後は158.03円まで下落し、158.96円で週を終えた。
FOMC議事要旨ではインフレへの警戒が確認され、FRB内部には追加利上げを支持する意見が残っていることが示された。一方、米長期金利が上昇してもドルは買われにくく、米財政赤字や国債需給への懸念が意識された。
週初時点の展望は「来週のドル円見通し(2026年8月17日~21日)|FOMC議事要旨と日本CPIに注目」で整理している。
8月24日週:米PCEとジャクソンホールが最大の焦点
8月24日週のドル円は158円台後半から159円台を中心に推移した。
米PCEではインフレの粘着性が意識され、米景気の底堅さもドルを支えた一方、日銀の追加利上げ観測や為替介入への警戒から160円手前では上値の重い展開が続いた。
しかし、28日のジャクソンホールでウォーシュFRB議長がインフレ率を2%へ戻す姿勢を強調し、追加利上げの可能性を示唆すると、9月利上げ観測が急上昇した。ドル円は160.20円まで上昇し、160.09円で週を終えた。週初時点の展望は「来週のドル円見通し(2026年8月24日~28日)|米PCEとジャクソンホールに注目」で整理している。
8月31日週:米雇用統計と160円攻防が焦点
8月31日週のドル円は160.07円で始まり、週前半には160.39円まで上昇した。
しかし、日銀の9月利上げ観測が急速に強まると流れが反転し、円キャリー取引の巻き戻しも加わって3日には155.30円まで円高が進んだ。当初は為替介入も疑われたが、実際の介入ではないことが確認され、円そのものが買われた動きであることが鮮明となった。
4日の米雇用統計は非農業部門雇用者数が16.2万人増と予想を大幅に上回り、FRBの9月利上げ観測と米2年債利回りも上昇した。それでもドル円は反発を維持できず、156円台前半で週を終えた。週初時点の展望は「来週のドル円見通し(2026年8月31日~9月4日)|米雇用統計と160円攻防に注目」で整理している。
月全体の流れ
2026年8月のドル円相場は、7月末の円買い介入による急落の余波が残るなかで始まった。月初には弱い7月米雇用統計を受けてFRBの利上げ観測が後退し、ドル円は156円台まで下落した。
しかし、その後は日米金利差を背景に買い戻しが進んだ。8月10日週には159円台を回復し、米CPI・PPIや小売売上高が弱くFRBの利上げ観測が後退しても、円高は定着しなかった。この時点では、米国側の金融引き締め期待が弱まっても円が売られる状態が続いていた。
8月17日週には、FOMC議事要旨でインフレ警戒が確認された一方、米長期金利が上昇してもドルが買われにくい場面がみられた。米財政や国債需給への懸念による金利上昇が意識され、「米金利上昇=ドル高」という関係にも変化がみられ始めた。
8月24日週には再びドル高へ傾いた。ジャクソンホールでウォーシュFRB議長がインフレ抑制を重視する姿勢を示すと9月利上げ観測が急上昇し、ドル円は160.20円まで上昇した。7月末の円買い介入後でははじめて160円台を回復し、再び円安が進むとの見方も強まった。
ところが、8月に始まった最後の週で流れは大きく反転した。日銀の9月利上げ観測が急速に高まり、日本の長期金利も上昇すると、円キャリー取引の巻き戻しを伴う円買いが加速した。ドル円は160.39円から155.30円まで急落した。さらに、強い米雇用統計によってFRB利上げ観測と米2年債利回りが上昇してもドル円は反発を維持できなかった。
8月相場は、円買い介入後の円高から始まり、日米金利差を背景に160円台まで戻した後、最後は日銀利上げ観測とキャリー巻き戻しによって再び155円台へ押し戻された。月初には「ドル側の材料」が相場を動かしていたが、最後には「円側の材料」がドル円の方向を決める構図へ変化したことが最大の特徴である。
テクニカル面で意識されたポイント
8月31日週のドル円は、160.39円から155.30円まで約5円急落し、短期的なチャートの形状は大きく変化した。これまで支持帯として意識されていた159円、158円、157円を短期間で下抜けており、ジャクソンホール後の上昇はほぼ打ち消された。
下方向では155.00~155.30円が最初の重要な支持帯となる。155.30円は週間安値であり、155円は心理的な節目でもある。この水準を明確に割り込む場合は、円キャリー取引の巻き戻しがさらに進み、次の支持水準を探す展開が意識されやすい。
上方向では、まず156.50~157.00円を回復できるかが焦点となる。その上では157.00~157.50円、さらに158~159円台が戻り売りの出やすい価格帯となる。とくに158円台後半まで戻せるかは、今回の円高が一時的な調整なのか、より大きなトレンド転換なのかを判断する材料となる。
週次記事で取得した9月4日時点のデータでは、価格は50日線と200日線を下回り、RSIは43台、MACDもマイナス圏となっている。ただし、これらは週末確定前の取得値であるため、月別まとめでは具体的な数値より、155円台の支持と157~159円台の戻りを重視して確認したい。
翌月に向けた注目点
9月のドル円相場を見るうえでは、「FRBが利上げするか」だけでなく、「FRBと日銀のどちらの利上げ観測がより強くなるか」が最大の焦点となる。
米国では8月雇用統計が予想を大幅に上回り、FRBの9月利上げ観測は再び約60%まで上昇した。次の重要材料は9月10日のPPIと11日のCPIであり、とくにCPIは9月15~16日のFOMCを前にした最後の大型インフレ指標となる。強い雇用にインフレ高止まりが加われば利上げ観測が一段と強まりやすい。
一方、日本では日銀の9月追加利上げ観測が急速に高まっている。8月31日週には、この見方を背景に円キャリー取引の巻き戻しが進み、米金利上昇を上回る円買い圧力が確認された。日本のGDPや物価指標が強ければ、日銀利上げ観測がさらに円を支える可能性がある。
したがって9月は、単純な「米金利上昇=ドル円上昇」ではなく、米金利上昇にドル円が実際についていくかを見る必要がある。155円付近を下抜けば円高が加速する可能性がある一方、157~158円台を回復し、米2年債利回りとFRB利上げ観測も同時に上昇する場合はドルの反発が意識される。
9月最初の相場展望については「来週のドル円見通し(2026年9月7日~11日)|米CPIがFOMC利上げ判断の最終関門」で詳しく整理している。
まとめ
2026年8月のドル円相場は、7月末の円買い介入による急落を受けた円高から始まった。月初には弱い米雇用統計で156円台まで下落したものの、日米金利差を背景に買い戻され、ジャクソンホール後には160円台を回復した。
しかし、8月に始まった最後の週には相場の構図が大きく変化した。日銀の9月利上げ観測が急速に高まり、円キャリー取引の巻き戻しが進むと、ドル円は160.39円から155.30円まで急落した。さらに米雇用統計が予想を大幅に上回り、米金利とFRB利上げ観測が上昇してもドル円は上昇を維持できなかった。
8月を通じてみると、ドル円は「円買い介入」「米雇用悪化」「日米金利差による円売り」「ジャクソンホール後のドル高」と何度も方向を変えた。そして最後には、日銀利上げ観測と円キャリー巻き戻しによって円側の材料が相場の主役となった。9月はFRBと日銀の政策見通しを同時に見ながら、155円台の支持と157~158円台を回復できるかが最初の焦点となる。
関連記事
- 来週のドル円見通し(2026年8月3日~7日)|米雇用統計と為替介入に注目
- 来週のドル円見通し(2026年8月10日~14日)|米CPIとFRB利上げ観測に注目
- 来週のドル円見通し(2026年8月17日~21日)|FOMC議事要旨と日本CPIに注目
- 来週のドル円見通し(2026年8月24日~28日)|米PCEとジャクソンホールに注目
- 来週のドル円見通し(2026年8月31日~9月4日)|米雇用統計と160円攻防に注目
本記事は市場動向の解説を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨する投資助言ではない。
