2026年8月24日~28日のドル円見通しを解説。米PCE、ジャクソンホールでのウォーシュFRB議長講演、東京都区部CPIを中心に、158~160円の注目水準を分析する。
2026年8月17日~21日のドル円は159円台を中心にもみ合った後、週央に158円台前半まで下落した。米景気指標の弱さからFRBの追加利上げ観測が後退する一方、FOMC議事要旨ではインフレ警戒が確認され、米金融政策の見方は割れている。
また米長期金利上昇にもかかわらずドルが売られるという通常とは異なる動きもみられた。来週は8月26日の米PCE、27~29日のジャクソンホール会議、28日のウォーシュFRB議長講演が最大の焦点となる。
1.今週のドル円相場を振り返る
2026年8月17日~21日のドル円は、週初159.30円付近で始まり、18日に週間高値159.78円付近まで上昇したものの、19日には158円台前半まで急落した。その後は159円台を回復したが、週末は158.96円付近で終了した。
| 項目 | USD/JPY |
|---|---|
| 週初値 | 159.30円 |
| 週間高値 | 159.78円 |
| 週間安値 | 158.03円 |
| 週終値 | 158.96円 |
| 週間値幅 | 約1.75円 |
| 前週末比 | 約-0.34円(-0.21%) |
日次OHLCデータでは、17日159.300円で始まり、18日に159.778円の週間高値、20日に158.029円の週間安値を記録し、21日は158.960円で終えた。
週初:米利上げ観測後退でも円買いは限定的
17日は159円台前半でスタートした。
前週に発表された米小売売上高などの弱さを受け、FRBの追加利上げ観測は後退した。Reutersによると、9月FOMCでの利上げ確率は前週の52.2%から17日時点で30.6%まで低下した。通常であれば、「米景気指標悪化 → FRB利上げ期待後退 → 米短期金利低下 → ドル売り」という流れになりやすい。
実際、ドルは対ユーロなどで軟調となったが、ドル円は159円前後で下げ渋った。円についても日米金利差やキャリートレードを背景とした売り圧力が残っていたためである。
週央:FOMC議事要旨でFRB内部のタカ派色を確認
19日に公表された7月28~29日FOMC議事要旨では、インフレに対する警戒が前回より強まっていたことが確認された。
7月会合では政策金利を3.50~3.75%に据え置いたものの、3人のメンバーが0.25%の利上げを主張して反対票を投じた。また複数の参加者が、インフレが2%を上回る状態が続けば追加引き締めが必要になるとの考えを示している。
これは市場の「米景気減速→FRBは追加利上げしにくい」という見方とはやや異なる。
つまり現在のFRBには、
雇用・景気の弱さ → 据え置き要因
と、
インフレ・原油高 → 利上げ要因
が同時に存在している。
このため米金融政策の方向性が以前より読みづらくなっている。
一方、日本では17日に発表された4~6月期GDPが年率1.1%増と市場予想の2.0%増を下回ったものの、日本国債市場では日銀の追加利上げ観測が残り、10年国債利回りは一時2.925%と約30年ぶりの水準まで上昇した。
週末:米長期金利上昇なのにドル安
今週の動きの中で特に注目したいのは、米長期金利が上昇しているにもかかわらずドルが買われなかったことである。
米財務省が10~30年債の買い戻し規模を拡大する方針を示したが、市場では米財政赤字や政府債務への懸念がむしろ意識された。
米30年債利回りは2007年以来の高水準まで上昇した一方、ドル指数は週間で約1%下落した。Reutersは、米長期債買い戻し策が財政への不安を払拭できず、ドルへの信認をむしろ圧迫しているとの市場の見方を伝えている。
これは通常の、
米金利上昇=ドル高
とは異なる。
今回の長期金利上昇には「米景気が強いから金利が上がる」という要素だけでなく、
財政赤字
→ 国債需給への懸念
→ タームプレミアム上昇
→ 長期金利上昇
という側面があるとみられる。
タームプレミアムとは、長期間国債を保有するリスクに対して投資家が要求する上乗せ金利のことである。このタイプの金利上昇では、必ずしもドル買いにつながらない点に注意したい。
2.来週の重要イベント
来週は米国の重要指標が8月26日に集中し、週後半にはジャクソンホール会議が開催される。
| 日付・日本時間 | 国・地域 | イベント | 市場予想・前回値 | ドル円への注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 8月25日(火)23:00 | 米国 | CB消費者信頼感指数 | 予想91.2/前回90.8 | 米景気減速の程度 |
| 8月26日(水)21:30 | 米国 | 7月PCEデフレーター | コア前年比:前回3.3%、市場予想は確認時点で未確認 | FRBが重視するインフレ指標 |
| 8月26日(水)21:30 | 米国 | 4~6月期GDP関連指標 | 前回値・市場予想は指標区分により異なる | 景気とインフレの組み合わせ |
| 8月26日(水)21:30 | 米国 | 7月耐久財受注 | 前回+0.3%、市場予想は確認時点で未確認 | 設備投資・景気の強さ |
| 8月28日(金)8:30 | 日本 | 東京都区部CPI | 総合前回2.0%、コア前回1.9% | 日銀9月利上げ観測 |
| 8月28日(金)23:00頃 | 米国 | ウォーシュFRB議長・ジャクソンホール講演 | ― | 9月・年内の利上げ姿勢 |
PCEの次回公表日は米BEAが8月26日と案内している。直近6月のコアPCEは前年比3.3%であった。
注目① 米PCEデフレーター
もっとも重要な経済指標は26日のPCEである。
PCEはFRBがインフレ判断で重視する物価指標であり、とりわけ食品とエネルギーを除いたコアPCEが注目される。
6月のコアPCEは前年比3.3%で、FRBの2%目標を依然として上回っている。
現在の市場では、
弱い雇用・景気
vs
高いインフレ
という構図になっている。
PCEが再び強ければ、
インフレ高止まり → 9月利上げ観測上昇 → 米2年債利回り上昇 → ドル買い
につながる可能性がある。
逆にインフレ鈍化が確認されれば、追加利上げの必要性が低下し、ドル円の上値を抑える材料となる。
注目② ジャクソンホールとウォーシュFRB議長
2026年のジャクソンホール経済政策シンポジウムは8月27~29日に開催される。テーマは「Financial Innovation: Implications for Payments and Policy」である。
今年のジャクソンホール会議については、関連記事「ジャクソンホール会議2026とは?」でも詳しく解説している。
市場の最大の関心はウォーシュFRB議長の講演だ。
Reutersによると、8月21日時点で市場は、
9月利上げ:約35%
12月までの利上げ:約66%
を織り込んでいる。
17日時点の9月利上げ確率は30.6%だったため、FOMC議事要旨などを経て約4ポイント上昇した計算になる。ただし、CME FedWatchの過去時点の確率を同一画面で直接取得できなかったため、この比較はReutersが報じた市場確率を基準としている。
ウォーシュ議長がインフレへの警戒を強調すれば、9月利上げ確率が再び50%方向へ上昇する可能性がある。
一方、弱い雇用や景気への配慮を示せば、利上げ観測は後退するだろう。
講演は8月28日に予定されている。
注目③ 東京都区部CPI
28日には東京都区部CPIも発表される予定である。
東京都区部CPIは全国CPIに先行するため、日本のインフレ動向を見るうえで重要である。
日銀の次回金融政策決定会合は9月に予定されており、市場では追加利上げ観測が残っている。
東京都区部CPIが強ければ、
日本のインフレ継続
→ 日銀利上げ観測上昇
→ 日本国債利回り上昇
→ 日米金利差縮小期待
→ 円買い
という経路が意識されやすい。
3.来週のドル円見通し
メインシナリオ
筆者のメインシナリオは、158~160円を中心としたレンジを維持しながら、週後半のPCE・ジャクソンホールで方向を探る展開である。
現在はドル買い材料とドル売り材料が混在している。
ドル買い材料は、
- FRB内部のインフレ警戒
- 原油高によるインフレ再加速リスク
- 依然として大きい日米金利差
である。
一方、ドル売り材料は、
- 米景気・雇用の減速
- 米財政への懸念
- 長期金利上昇でもドルが買われない状況
- 日銀追加利上げ観測
だ。
このため、PCEとウォーシュ議長講演を確認するまでは、一方向へのポジションは作りにくいと考える。
メインシナリオを修正する条件: 160円を明確に上抜け、米2年債利回りも上昇する場合、または158円を明確に割り込み、米短期金利低下と円買いが同時進行する場合。
ドル高・円安シナリオ
ドル高シナリオの条件は、
PCE上振れ+ウォーシュ議長のタカ派発言
である。
この場合、
PCE上振れ
→ インフレ懸念
→ 9月利上げ確率上昇
→ 米2年債利回り上昇
→ ドル買い
という流れが考えられる。
160円を明確に突破すれば、心理的節目として160.50円、161円方向が意識される。
ただし、日本当局による為替介入への警戒が強まりやすい水準でもあり、上昇局面では急落リスクにも注意が必要である。
シナリオ修正条件: PCEが弱い、FedWatchの利上げ確率が低下する、または米2年債利回り上昇にもかかわらずドルが買われない場合。
ドル安・円高シナリオ
ドル安シナリオは、
PCE鈍化+ウォーシュ議長が景気・雇用への配慮を示す+東京CPI上振れ
という組み合わせである。
この場合、
米利上げ観測後退 + 日銀利上げ観測上昇 → 日米短期金利差縮小期待 → 円買い
となりやすい。
158円を明確に割り込めば、157円台への下落を試す可能性が出てくる。
シナリオ修正条件: 158円割れ後も米金利が高止まりし、ドル円がすぐ159円台を回復する場合。
4.ドル円のテクニカル見通し
今週の値動きから見ると、ドル円は158~160円のレンジ色が強まっている。
日足では7月23日に163.99円付近まで上昇した後、高値を切り下げている。一方、8月上旬の155円台からは反発しており、短期的には上下どちらにも決定的なトレンドが出ていない。日次価格データでは17~21日も158.03~159.78円に収まった。
上値の注目水準
159.50~159.80円
今週何度も上値を抑えられたゾーンである。18日の週間高値は159.78円付近だった。
160.00円
心理的節目である。オプションも設定されやすく、市場参加者が意識しやすい。前週にもトレーダーズ・ウェブが160円のオプション設定を報じていた。
160円を日足終値で明確に上回れば、短期的には上方向へのレンジ離脱と判断しやすくなる。
下値の注目水準
158.00円
今週の安値158.03円とほぼ一致する重要な支持線である。
157.70~158.00円
8月上旬にも売買が交錯したゾーンであり、158円割れが定着するかが重要となる。
その下では157円台前半~156円台後半が次の候補となる。
テクニカル上の分岐点
来週の最大の分岐は、
上:160.00円
下:158.00円
と考える。
160円を突破すればドル高方向、158円を割り込めば円高方向へ短期トレンドが出やすくなる。
一方、158~160円の範囲内にとどまる限りはレンジ相場として扱う方が自然である。
10日・20日・50日移動平均線、RSI、MACDについては、今回取得できた信頼できる日次データだけでは正確な最新値を十分に検証できなかったため、数値は掲載しない。公開時に利用しているチャートで再確認したい。
5.まとめ
2026年8月17日~21日のドル円は、159.30円付近から始まり、159.78円まで上昇した後、158.03円まで下落し、158.96円付近で週を終えた。値幅そのものは約1.75円と比較的小さかったが、市場内部では重要な変化が起きている。
とくに注目したいのは、米長期金利が大きく上昇しているにもかかわらずドルが買われなかったことである。米国の財政赤字や国債需給への懸念が長期金利を押し上げている可能性があり、「米金利上昇=ドル高」という従来の関係だけでは説明しにくくなっている。
来週8月24~28日は、26日の米PCEと28日のウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演が最大の焦点となる。PCEが強く、FRBがインフレ警戒を強調すれば160円突破が視野に入る。一方、PCE鈍化と日銀利上げ観測が重なれば158円割れから円高が進む可能性もある。
したがって来週は、単に米金利の上下を見るのではなく、「なぜ金利が動いているのか」と米2年債・長期債・ドルが同じ方向へ動いているかを確認することが重要である。
なお、2026年8月のドル円相場全体の流れは、「2026年8月のドル円相場まとめ」で整理している。こちらも併せて確認すると今月のドル円相場の流れをつかみやすい。
本記事は市場動向の解説を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨する投資助言ではない。
