2026年9月28日~10月2日のドル円見通し。米雇用統計、ISM製造業、日銀短観、FRB追加利上げ観測、円安是正・為替介入リスクから来週の相場を分析する。
今週は、先週の日米金融政策を受けた「金利差」と、週末に急浮上した「円安是正圧力」が正面衝突した一週間であった。ドル円は9月21日の156.58円から24日の159.04円まで上昇したが、25日は日米首脳・財務相レベルで円安への懸念が示され、一時156.94円まで急落した。来週9月28日~10月2日は日銀議事要旨、米ADP雇用統計、日銀短観、米ISM製造業景況指数、そして米雇用統計が続く。米10年債利回りが5%台に乗せる一方、為替介入への警戒も強く、金利だけではドル円の方向を決めにくい局面となりそうである。
1.今週のドル円相場を振り返る
対象期間は、2026年9月21日(月)~9月25日(金)である。
| 項目 | ドル円 |
|---|---|
| 週初値 | 156.81円 |
| 週間高値 | 159.03円 |
| 週間安値 | 156.57円 |
| 週終値 | 157.28円 |
| 週間値幅 | 2.46円 |
週初:日銀利上げ後も円売り、157円台へ
9月21日は日本市場が祝日で休場となるなか、一時156.58円まで下落したものの、その後はドル買い・円売りが優勢となり157.53円まで上昇、157.36円で終了した。
日銀は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げたが、7対2の決定となったことで追加利上げのペース加速期待が後退したことが円売り要因となった。
日銀の公式文書を見ると、今回の利上げ後も「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ」る方針自体は維持されている。
一方、利上げのタイミングとペースは経済・物価や中東情勢、為替などを点検しながら判断するとした。したがって、市場は「利上げ打ち止め」と判断したわけではなく、次の利上げまでには時間がある可能性を意識したと考える方が適切である。
週央:米金利上昇がドル円を押し上げる
22日は156.83円まで下落したものの、その後は米10年債利回りの上昇を受けて157円台後半へ戻した。終値は157.39円だった。
流れが明確になったのは23日である。
9月の米製造業・サービス業PMI速報値が市場予想を上回ると、米10年債利回りは一時5.0685%付近まで上昇した。これを受け、
強い米経済指標
→ FRB追加利上げ観測
→ 米国債利回り上昇
→ ドル買い
→ ドル円上昇
という比較的素直な反応となった。
ドル円は158.36円まで上昇したものの、この時点では200日移動平均線が位置していた158.45円付近が抵抗となった。
FRBは9月16日のFOMCで政策金利を0.25%引き上げ、3.75~4.00%とした。決定は12対0の全会一致であり、声明では「インフレは依然高い」と明記された。
さらに今週はFRB高官から追加利上げを支持する発言が相次いだ。セントルイス連銀のムサレム総裁はインフレ抑制には追加利上げが必要になる可能性が高いとの認識を示した。
週後半:159円到達、200日線を突破
24日には流れがさらにドル高へ傾いた。
中東情勢への警戒からWTI原油先物が94ドル台へ上昇。原油高によるインフレ懸念から米国債が売られ、米10年債利回りは5.20%まで上昇した。ドル円も159.04円まで上昇し、158.86円で終了した。
重要なのは、23日まで上値を抑えていた200日移動平均線(約158.45~158.47円)を明確に突破したことである。市場ではテクニカル面からもドル買いが入りやすくなったとの指摘が出ていた。
一方、米10年債利回りの5%台上昇は、単純な「米景気が強い」という話だけではない。原油高によるインフレ懸念やFRB追加利上げ観測も含まれており、ドル円にとっては強い上昇要因となった。
週末:流れが一変、「円安是正」で156円台へ
25日は、それまでのドル高・円安の流れが大きく巻き戻された。
片山財務相から、日米首脳会談でトランプ米大統領が円安への懸念を示したことが明らかになると円買いが強まった。さらに日米財務相のオンライン会談では、「円の過小評価は問題である」との認識が再確認された。
ドル円は158.95円から一時156.94円まで約2円下落した。
興味深いのは、この間に米10年債利回りが一時5.2254%と2007年6月以来の高水準を付けていたことである。通常ならドル高材料だが、それを上回って円買い圧力が強まった。
つまり週末時点のドル円には、
米金利上昇 → ドル高・円安
と、
日米当局の円安是正姿勢 → 円高・ドル安
という2つの力が同時に働いている。
これが来週の相場を見るうえで最大のポイントである。
2.来週の重要イベント
対象期間は2026年9月28日(月)~10月2日(金)である。日本・米国とも、この期間に市場休場となる祝日はない。中国は10月1日から国慶節休場となる。
28日の日銀議事要旨、30日のADP雇用統計・米GDP確報値・個人所得支出、10月1日の日銀短観・米ISM製造業、2日の米雇用統計などが予定されている。
| 日付・日本時間 | 国・地域 | イベント | 市場予想・前回値 | ドル円への注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 9月28日 8:50 | 日本 | 日銀7月30~31日会合議事要旨 | ― | 9月利上げに至る議論の変化 |
| 9月30日 21:15 | 米国 | ADP雇用統計(9月) | 予想未確認/前回+3.8万人 | 2日の雇用統計の前哨戦 |
| 9月30日 21:30 | 米国 | 個人所得・個人支出(8月) | 予想未確認 | 消費の強さとインフレ圧力 |
| 10月1日 8:50 | 日本 | 日銀短観(9月調査) | 予想未確認 | 次回日銀利上げ観測への影響 |
| 10月1日 23:00 | 米国 | ISM製造業景況指数(9月) | 予想未確認/前回54.6 | 景気・雇用・価格指数を確認 |
| 10月2日 21:30 | 米国 | 米雇用統計(9月) | 予想未確認 | 来週最大のイベント |
① 10月2日:米雇用統計
来週最大のイベントは米雇用統計である。
9月FOMC後、市場のテーマは「FRBが10月にも連続利上げするのか」に移っている。
9月FOMC直後のCME FedWatchでは10月0.25%利上げ確率は40.1%だったが、その後18日には約55%、20日には56.5%まで上昇した。さらに今週はFRB高官のタカ派発言が続き、Reutersは21日時点で55%まで上昇したと報じている。
つまり市場は、
「9月だけの単発利上げ」
から、
「10月も利上げする可能性がある」
へ織り込みを変化させている。
雇用統計が強ければ、10月利上げ確率がさらに上昇し、米2年債利回りを中心に金利上昇→ドル高となる可能性がある。
逆に雇用者数・失業率・平均時給がそろって弱ければ、連続利上げ観測が後退し、今週積み上がったドル買いが巻き戻される可能性がある。
なお、CME FedWatchについては、関連記事『CME FedWatch Toolの見方と使い方|利下げ確率をドル円分析に生かす方法』にて説明している。
② 10月1日:米ISM製造業景況指数
8月ISM製造業景況指数は54.6で、7月の55.6から低下したものの、50を上回り製造業の拡大を示した。
来週は総合指数だけでなく、価格指数と雇用指数が重要である。
価格指数が高止まりすれば、
企業の仕入れ価格上昇
→ インフレ長期化懸念
→ FRB追加利上げ観測
→ 米金利上昇
となりやすい。
一方、雇用指数が弱ければ翌日の雇用統計への警戒からドル買いが巻き戻される可能性もある。
③ 10月1日:日銀短観
ドル円を見るうえでは日銀短観も無視できない。
日銀は9月18日の会合で政策金利を1.25%へ引き上げたうえで、今後も経済・物価情勢に応じて利上げを続ける方針を示した。さらに基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れるリスクにも言及している。
短観で企業景況感、設備投資計画、企業の物価見通しが強ければ、10月29~30日の日銀会合での追加利上げ観測を支える可能性がある。
逆に企業景況感が大きく悪化すれば、「9月利上げ後はしばらく様子を見る」との見方が強まりやすい。
なお、9月会合の「主な意見」は10月1日8時50分公表予定である。日銀自身が公表予定を明記しており、短観と同時刻になるため注意が必要だ。
これは来週の重要イベントとして追加で警戒したい。
3.来週のドル円見通し
メインシナリオ:米金利上昇と介入警戒の綱引き
筆者のメインシナリオは、156円台後半~159円台を中心とした方向感の出にくい展開である。
ファンダメンタルズだけを見ればドル高材料は強い。
FRBは9月に利上げし、追加利上げ観測も上昇している。米10年債利回りは5%台まで上昇しており、日銀が1.25%へ利上げしても日米金利差は依然大きい。
しかし159円付近では状況が変わった。
日米首脳・財務相レベルで円安への懸念が共有され、25日には実際に約2円の円高が発生した。市場参加者にとっては、160円へ近づくほど為替介入リスクを意識せざるを得ない。
したがって来週前半は、
下では米金利がドル円を支える
一方、
上では当局警戒がドル円を抑える
構図になりやすいとみる。
このシナリオを修正する条件は、159円台を回復しても当局から追加のけん制がなく、米10年債利回りが5.2%台以上で定着する場合である。
ドル高・円安シナリオ
米ADP、ISM、雇用統計がそろって強く、とくに賃金やISM価格指数がインフレ圧力の継続を示した場合である。
強い米指標
→ 10月FRB利上げ確率上昇
→ 米2年・10年債利回り上昇
→ ドル買い
→ 159円再突破
という流れが考えられる。
159.04円を明確に突破すれば、心理的節目160円と9月2日の160.39円が次の焦点となる。
ただし、160円接近では当局発言やレートチェック、実弾介入のリスクが急速に高まるため、通常のテクニカルだけでは判断しにくくなる。
このシナリオを修正する条件は、米指標が強いにもかかわらず米金利が上昇しない、またはドル円が159円を維持できない場合である。
ドル安・円高シナリオ
米雇用統計が弱く、10月FRB利上げ観測が大きく後退するケースである。
そこに日銀短観や「主な意見」がタカ派的となれば、
米利上げ期待後退 & 日銀追加利上げ期待上昇
→ 日米金利差縮小期待
→ 円買い・ドル売り
が同時に進む可能性がある。
さらに日米当局から円安是正に関する発言が続けば、156円台を割り込んで下値を探る展開も考えられる。
このシナリオを修正する条件は、156円台へ下落しても米10年債利回りが5%台を維持し、ドル円がすぐ157円台へ戻る場合である。
4.ドル円のテクニカル見通し
今週のチャートでもっとも重要だったのは200日移動平均線である。
23日は158.45円付近の200日線に上値を抑えられたが、24日にこれを突破すると159.04円まで上昇した。ところが25日の円安是正を巡る報道によって再び200日線を大きく割り込んだ。
これは来週の重要な分岐点となる。
上値の注目水準は、まず158.45~158.50円付近の200日移動平均線。その上が25日高値158.95円、週間高値159.04円、さらに160.00円、9月2日高値160.39円である。
下値の注目水準は、25日安値156.94円、22日安値156.83円、21日安値156.58円である。156.58~156.94円は今週複数回反発したため、156円台後半が短期的な支持帯となっている。
したがってテクニカル上は、
158.5円付近を回復 → 再び159円方向
156.5円付近を明確に割る → 下方向へのレンジ拡大
という構図である。
興味深いのは、今週一度200日線を突破したにもかかわらず、週末には再びその下へ押し戻されたことである。これは「上抜け失敗」と判断される可能性があり、来週前半に200日線を取り戻せるかが重要となる。
10日・20日・50日移動平均線、RSI、MACDについては、今回信頼できる最新値を取得できなかったため数値は記載しない。4時間足についても同様である。
5.まとめ
2026年9月21~25日のドル円は、週前半からFRB追加利上げ観測と米国債利回り上昇を背景に156.58円から159.04円まで上昇した。
米10年債利回りが5%台へ上昇し、200日移動平均線を突破したことで、24日まではドル高・円安の流れが鮮明だった。
しかし25日には日米首脳・財務相レベルで円安への懸念が示され、ドル円は156.94円まで急落した。
来週9月28日~10月2日は、米雇用統計を筆頭にADP、ISM製造業、日銀短観、日銀9月会合の「主な意見」が控える。焦点は、米指標によって10月FRB利上げ観測がさらに高まるか、それとも後退するかである。一方、159~160円方向では日本単独ではなく米国側からも円安是正への警戒が示されたことが、これまでとの大きな違いである。
したがって来週は「米金利上昇ならドル円上昇」と単純に考えるのではなく、米金利・FedWatch・日銀追加利上げ観測・日米当局の為替姿勢を同時に確認したい。
本記事は為替市場の分析を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨する投資助言ではない。
