来週のドル円見通しを解説。2026年8月10日~14日は米CPIが最大の焦点。FRBの利上げ観測、米国債利回り、156円・158円の重要水準を整理する。
2026年8月3日(月)~8月7日(金)のドル円は、前週末の日米協調による円買い介入の余波を受け、週初に155.20円まで円高が進んだ。その後は日米金利差を背景にドルが買い戻され、8月6日には158円台半ばまで反発したが、8月7日の米雇用統計が予想外の雇用減少となったことで再びドル売りが強まった。来週8月10日(月)~14日(金)は、米CPIを中心に、PPIや小売売上高がFRBの9月会合に対する市場の織り込みをどう変化させるかが最大の焦点となる。
1.今週のドル円相場を振り返る
| 項目 | ドル円 |
|---|---|
| 週初値 | 約157.43円 |
| 週間高値 | 158.57円 |
| 週間安値 | 155.20円 |
| 週終値 | 157.76円 |
| 週間値幅 | 約3.37円 |
| 前週末比 | 約+0.1% |
※週初値は取得できた8月3日のレート、週間高安値・終値はReuters、トレーダーズ・ウェブ系配信データを照合している。
週初:協調介入への警戒から155円台まで円高
8月3日のドル円は、前週に実施された日米協調の円買い介入への警戒が続き、一時155.20円まで下落した。
事実として、日本と米国は前週、円安を抑制するため異例の日米協調介入を実施した。Reutersによれば、日本側の円買い規模は最大365.8億ドル程度と推計され、今年の介入総額は1000億ドルを超えた可能性がある。8月3日時点でドル円は157円前後まで戻したものの、追加介入への警戒から円売りポジションを積み上げにくい状態となった。
市場の解釈として、今回の介入は単に一時的にドル円を押し下げただけではなく、「円を積極的に売り続けることのリスク」を市場参加者に意識させた点が重要である。協調介入には円売りをけん制するシグナルとしての意味があると受け取られた。
一方、155円台ではドルの買い戻しも入り、ドル円は157円台へ反発した。
週央:日米金利差を背景に158円台へ反発
8月4日以降は介入による円高が一服した。
8月4日のドル円は157円台後半まで戻り、8月5日のNY市場では157円台後半で推移。8月6日には158円台を回復した。
テクニカル的に重要だったのが、158.00円と200日移動平均線付近の158.06円突破である。
8月6日のNY市場では、158円と200日線を上抜けたことでストップロスを巻き込み、一時158.55円まで上昇した。さらにホルムズ海峡を巡る不透明感から原油価格が上昇し、米長期金利も上昇したことがドル買いにつながった。終値は158.43円となった。
つまり、 原油高 → インフレ懸念 → 米金利上昇 → ドル買い → ドル円上昇という流れである。
介入が円安のスピードを抑えた一方、日米金利差そのものが消えたわけではないため、ドル円には押し目買いも入りやすかった。
週末:米雇用統計ショックで156円台へ急落
流れを変えたのが8月7日の米雇用統計である。
7月非農業部門雇用者数は2.3万人減となり、市場予想である8.0万人増を大幅に下回った。失業率は4.1%へ低下したものの、労働参加率も61.4%まで低下しており、雇用市場の弱さが意識された。
さらに過去2カ月の雇用者数も下方修正された。
この結果、雇用悪化 → FRB利上げ期待後退 → 米2年債利回り低下 → ドル売りという反応となった。
米2年債利回りは4.245%、10年債利回りは4.649%へ低下し、ドル指数も99.50まで下落した。9月FOMCで政策金利を据え置く確率は前日の45%から56%へ上昇した。
ドル円は158円台半ばから一時156.68円まで急落。その後157.99円付近まで戻したものの158円台を回復できず、157.76円で越週した。
今週を整理すると、
協調介入による円買い → 日米金利差を背景としたドル買い戻し → 米雇用統計悪化によるドル売り
という三段階の相場であった。
2.来週の重要イベント
8月10日(月)は日本が「山の日」の祝日となるため東京市場は休場である。したがって週初は通常より流動性が低くなる可能性がある。
| 日付・日本時間 | 国・地域 | イベント | 市場予想・前回値 | ドル円への注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 8月10日(月) | 日本 | 山の日・東京市場休場 | ― | 薄商いによる値幅拡大に注意 |
| 8月12日(水)21:30 | 米国 | 7月CPI | 予想未確認/前回:前年比3.5%、コア2.6% | 9月FOMCの利上げ観測を左右 |
| 8月13日(木)21:30 | 米国 | 7月PPI | 予想未確認/前回:前年比5.5%、コア4.7% | 企業段階のインフレ圧力を確認 |
| 8月13日(木)21:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数 | 予想未確認 | 雇用統計悪化が一時的か確認 |
| 8月14日(金)21:30 | 米国 | 7月小売売上高 | 予想未確認 | 米個人消費と景気の強さを確認 |
みんかぶFXでは8月12日のCPIについて、前回値を総合前年比3.5%、コア前年比2.6%としている。
最大の注目材料は8月12日の米CPI
来週最大のイベントは7月米CPIである。
7月FOMCでは、Federal Reserveは政策金利を3.50~3.75%で据え置いた。ただし投票は9対3で、反対した3人は0.25%の利上げを主張している。FRBは声明で「インフレは2%目標に対して依然高い」としており、インフレ警戒を維持している。
ただ、8月7日の雇用統計が大幅に下振れしたことで、状況が変わった。
現在の市場は、
インフレは高いが雇用は弱い
という難しい状態を織り込み始めている。
そのためCPIが強ければ、再び「FRBは9月に利上げできる」との見方が強まりやすい。逆にCPIが弱ければ、雇用悪化とインフレ鈍化が同時に確認され、利上げ期待がさらに後退する可能性がある。
CPIについては、関連記事「米CPIの見方」でも解説しているので参考まで。
PPIもインフレ確認材料
翌8月13日にはPPI(生産者物価指数)が発表される。
PPIは企業が受け取る商品の販売価格を示す指標であり、将来の消費者物価への波及を考えるうえで参考になる。
CPIとPPIがともに強ければインフレ警戒が再燃しやすい。一方、両方が弱ければFRBの利上げ観測は大きく後退する可能性がある。
週末は米小売売上高
8月14日には米小売売上高が発表予定である。
雇用統計が弱かっただけに、米国の個人消費まで減速しているのかが重要となる。
雇用と消費がともに弱ければ米景気減速への警戒が強まり、米国債利回り低下を通じてドル円の下押し材料となり得る。
3.来週のドル円見通し
メインシナリオ
筆者の見通しとしては、156円台後半~158円台を中心とした神経質な値動きを想定したい。
今週の協調介入によって160円方向への一方的な円売りには政治的リスクが生じた。一方、介入後に155円台から158円台まで戻したことからもわかるように、日米金利差を背景とする円売り圧力そのものは残っている。
したがって来週は方向を決め打ちするより、
米CPI → 米金利 → ドル円
という順序で確認することが重要である。
メインシナリオを修正する条件は、156円台を明確に割り込む、あるいは158.50~159円を明確に回復する場合である。
ドル高・円安シナリオ
CPIやPPIが市場予想を上回った場合は、7日の雇用統計で後退したFRB利上げ期待が再び強まる可能性がある。
米2年債利回りが再び上昇すればドル円は158円台を回復し、158.55~158.60円付近を試す展開が考えられる。
ここを明確に突破すると159円、さらに160円が視野に入る。
ただし160円方向では日米通貨当局による追加介入リスクが再び急速に高まるため、通常のドル高局面とは異なる点に注意したい。
このシナリオを修正する条件は、強いCPIにもかかわらず米2年債利回りが上昇せず、ドル円も158円台を維持できない場合である。
ドル安・円高シナリオ
CPIが弱かった場合は、雇用統計の悪化と合わせてFRBの利上げ観測がさらに後退する可能性がある。
とくに、米2年債利回りが低下すればドル売りが強まりやすい。
なお、米2年債については、関連記事「米2年債利回りとドル円の関係」でも解説している。
テクニカル的に、まず注目したいのは7日の安値156.68円である。
ここを割り込むと156円、さらに協調介入後の安値155.20円が重要な支持線となる。
155円台も維持できなければ、協調介入後の戻り局面そのものが終了した可能性を考える必要がある。
このシナリオを修正する条件は、弱い米指標にもかかわらずドル円が156円台後半で下げ止まり、米金利も反発する場合である。
4.ドル円のテクニカル見通し
今週のテクニカルでもっとも重要だったのは200日移動平均線である。
8月6日時点の200日線は158.06円付近に位置しており、ドル円はこれを上抜けたことでストップロスを巻き込み158.55円まで上昇した。
しかし翌日の米雇用統計後には再び200日線を下回っている。
したがって来週は、
158円台を回復できるか
が最初の分岐点となる。
上値の注目水準
158.00~158.10円
200日線が位置していた水準であり、心理的節目でもある。まずここを回復できるか確認したい。
158.55~158.60円
8月6~7日の高値圏であり、短期的な抵抗線となる。
159.00円
心理的節目。ここを明確に突破すると160円方向が意識されやすくなる。
160.00円
大きな心理的節目であり、同時に追加介入への警戒が急速に高まりやすい水準である。
下値の注目水準
157.00円
短期的な攻防ライン。
156.68円
8月7日の米雇用統計後につけた安値である。
156.00円
心理的節目。
155.20円
8月3日の週間安値であり、協調介入後の重要な支持線である。
ここを割り込めば、短期的には円高方向への値幅が拡大する可能性がある。
テクニカル上の分岐点
来週は、
上:158.55~158.60円
下:156.68円
のどちらを先に明確に抜けるかを確認したい。
なお、10日・20日・50日移動平均線、RSI、MACDについては今回の調査で信頼できる最新値を確認できなかったため、数値を掲載しない。
5.まとめ
2026年8月3日~7日のドル円は、日米協調による円買い介入後の値動きを消化する一週間となった。週初には追加介入への警戒から155.20円まで円高が進んだものの、日米金利差を背景としたドル買いが戻り、8月6日には158.55円まで反発した。しかし7日の米雇用統計で非農業部門雇用者数が2.3万人減と予想外のマイナスとなったことで、FRBの9月利上げ期待が後退。米2年債利回りの低下とともにドル円も一時156.68円まで急落した。
来週8月10日~14日は、12日の米CPIが最大の焦点である。強いCPIなら利上げ観測の再燃から158円台回復、弱いCPIなら156.68円や155.20円を試す展開が考えられる。ただしドル高方向では日米通貨当局による追加介入という特殊なリスクが存在する。
したがって来週はドル円だけを見るのではなく、CPI・PPI → Fedの政策織り込み → 米2年債利回り → ドル円という因果関係を追うことが重要となる。
2026年8月のドル円相場全体の流れは、「2026年8月のドル円相場まとめ」で整理している。各週の見通しや重要イベントをあわせて確認すると、月を通した相場展開を把握しやすい。
本記事は市場動向の整理を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨する投資助言ではない。
