2026年7月6日~7月10日のドル円見通しを解説。米雇用統計後の急落を振り返り、FOMC議事録、米ISM、日本の賃金・企業物価をもとにファンダメンタルズとテクニカルを分析する。
2026年6月29日~7月3日のドル円は、週前半に162.85円まで上昇し、円は対ドルで約40年ぶりの安値圏に沈んだ。しかし、7月2日の米雇用統計が市場予想を大きく下回ると、FRBの追加利上げ観測が後退し、一時160.49円まで急落した。
来週は7月9日未明のFOMC議事録と米ISMサービス業景気指数が焦点である。基本的には日米金利差が下値を支える一方、162円台では介入警戒が上値を抑える展開を想定する。
1.今週のドル円相場を振り返る
今週のドル円の値動き
| 項目 | 価格・変化 |
|---|---|
| 週初値 | 161.76円 |
| 週間高値 | 162.85円 |
| 週間安値 | 160.49円 |
| 週終値 | 161.37円 |
| 週間の値幅 | 2.36円 |
| 前週末終値 | 161.76円 |
| 前週末との比較 | 0.39円のドル安・円高 |
参考:Investing.com, WSJ USD/JPYヒストリカルデータ
週初:162円台へ上昇、円は約40年ぶり安値圏
6月29日(月)のドル円は161円台後半で始まり、週初から底堅い展開となった。背景にあったのは、6月FOMC後に強まっていたFRBの追加利上げ観測である。米経済の底堅さ、AI関連株を中心とする米株高、米国への資金流入がドルを支え、円は対ドルで1986年以来の安値圏まで下落した。
6月30日(火)にはドル円が162円台に乗せた。日銀は6月に利上げを実施していたものの、米国の政策金利との差はなお大きく、低金利通貨である円を売って高金利通貨のドルを買う「キャリートレード」が続きやすい環境だった。
同日発表された5月JOLTS求人件数は759.4万件と2年ぶり高水準となり、米労働需要の底堅さを示した。ただし、採用件数は減少しており、雇用市場が一方向に強いというより、「求人は多いが採用は鈍い」というやや複雑な内容であった。
米財務省データでは、米2年債利回りは6月29日の4.10%から6月30日に4.14%へ、米10年債利回りは4.38%から4.44%へ上昇した。米国金利の上昇がドル買いを支え、ドル円は162円台へ上値を伸ばしたと整理できる。
市場の解釈
週前半のドル円上昇は、単純な円売りというより、「FRBの追加利上げ観測」「米国金利の上昇」「日米金利差」「株高によるリスク選好」が重なった結果である。一方で、162円台では政府・日銀による為替介入への警戒も強まり、上値追いには慎重さが求められる局面だった。
週央:日銀短観は円買い材料、ただしドル優位は続く
7月1日(水)には、日銀短観が発表された。大企業製造業の業況判断DIは+22と、前回の+17から改善し、2018年3月以来の高水準となった。大企業非製造業の景況感も1991年以来の高水準となり、企業の3~5年後の物価見通しは平均2.6%と過去最高に達した。設備投資計画も2026年度に11.5%増が見込まれた。
これは本来、日銀の追加利上げを支える内容であり、円買い材料である。しかし、同日のドル円は162.85円まで上昇した。その理由は、日銀の追加利上げ期待よりも、米国金利とドルの強さが優勢だったためである。
同日には6月ADP雇用統計が発表され、民間雇用者数は9.8万人増と、前月の12.2万人増から鈍化した。さらに、米ISM製造業景気指数は53.3と前月の54.0から低下したが、景気拡大・縮小の分岐点である50は上回った。仕入れ価格指数は73.0と前月の82.1から低下したものの、なお高水準であり、インフレ圧力が完全に沈静化したとはいえない内容だった。
また、ECBフォーラムではウォーシュFRB議長が、インフレ期待やインフレリスクがここ数週間で和らいだと述べた一方、2%の物価目標への姿勢は維持した。市場は一時的にドル買いを弱めたが、米雇用統計を前に方向感は限定的であった。
週後半:米雇用統計ショックで162円台から160円台へ急落
今週最大の相場材料は、7月2日(木)21時30分に発表された6月米雇用統計である。
非農業部門雇用者数は前月比5.7万人増にとどまり、市場予想の11.0万人増を大きく下回った。さらに、5月分は17.2万人増から12.9万人増へ下方修正され、4月分と合わせた過去2カ月分の雇用者数は合計7.4万人下方修正された。失業率は4.2%へ低下したが、労働参加率が61.5%へ低下したため、内容は見た目ほど強くなかった。平均時給は前月比0.3%、前年比3.5%の上昇であった。
この結果を受けて、市場では以下の流れが発生した。
弱い米雇用統計 → FRBの追加利上げ観測が後退 → 米国債利回りが低下 → ドル売り → ドル円急落
Reutersによれば、雇用統計後に9月FOMCでの利上げ確率は67%から54%へ低下し、ドル指数は100.83まで下落した。ドル円は162円台半ばから一時161.04円付近まで円高方向へ動き、円は約2週間ぶりの高値を付けた。
週末:介入警戒は残るが、前日の急落は介入ではないとの見方
7月3日(金)は米国が独立記念日の振替休日で、米債券・株式市場が休場となった。流動性が低下するなか、政府・日銀による為替介入への警戒は続いた。
ただし、日銀が公表した7月6日の日銀当座預金残高見通しを受け、市場では前日の急落が円買い介入によるものではなかったとの見方が広がった。その結果、過度な介入警戒がやや後退し、ドル円は161.34円で越週した。
つまり、今週のドル円は「162円台への上昇」よりも、「弱い米雇用統計でFRB利上げ観測が後退し、162円台から160円台へ急落したこと」が本質的な材料である。
FRBと日銀の金融政策
FRBは6月17日のFOMCで、政策金利を3.50~3.75%に据え置いた。ただし、声明文では米経済が堅調に拡大していること、インフレが2%目標に対して高止まりしていることを示し、物価安定を実現する姿勢を強調した。
一方、日銀は6月16日に金融市場調節方針を変更し、政策金利を1.00%へ引き上げた。公表文では、政策金利変更後も金融環境は緩和的であり、経済・物価・金融情勢に応じて政策運営を行う姿勢が示された。
6月24日に公表された日銀金融政策決定会合の主な意見では、日本経済が中東情勢の影響を受けつつも緩やかに回復していること、賃金上昇や企業収益の強さを背景に前向きな循環が続いていることが確認された。
FedWatchにみる金融政策の織り込み
Investing.comのFed Rate Monitorによれば、7月3日時点で7月FOMCの据え置き確率は75.6%、利上げ確率は24.4%であった。前週は据え置き69.0%、利上げ31.0%だったため、週を通じて7月利上げの織り込みは低下した。
9月FOMCについては、現状維持が42.9%、少なくとも1回の利上げが57.1%であった。前週の「少なくとも1回利上げ」確率は59.5%であり、こちらもやや低下した。12月FOMCでは、少なくとも1回の利上げ確率が78.3%と、年内利上げ観測はなお残っている。
整理すると、今週の市場は「6月FOMCのタカ派的な印象で利上げ観測が強まっていたが、米雇用統計の下振れで7月・9月の利上げ確率が低下した」といえる。ただし、インフレ率が依然として高いことから、年内利上げ観測そのものは消えていない。
2.来週の重要イベント
来週は米CPIや米雇用統計のような最重要指標は予定されていないが、FOMC議事録、米ISMサービス業景気指数、米新規失業保険申請件数、日本の賃金・企業物価がドル円の方向感に影響しやすい。
| 日付・日本時間 | 国・地域 | イベント | 市場予想・前回値 | ドル円への注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 7月6日(月)22:45 | 米国 | 6月S&P Globalサービス業PMI確報値 | 予想51.3/前回51.3 | サービス業の景況感とインフレ圧力 |
| 7月6日(月)23:00 | 米国 | 6月ISM非製造業景気指数 | 予想54.1/前回54.5 | 米景気の底堅さ、価格指数、雇用指数 |
| 7月7日(火)8:30 | 日本 | 5月毎月勤労統計・家計調査 | 現金給与総額:予想3.4%/前回3.6%、家計支出:予想-2.6%/前回-0.5% | 日銀の追加利上げ観測に影響 |
| 7月9日(木)3:00 | 米国 | FOMC議事録 | 6月16~17日会合分 | 利上げ支持の強さ、インフレ・雇用判断 |
| 7月9日(木)21:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数 | 予想21.8万件/前回21.5万件 | 雇用統計後の労働市場確認 |
| 7月10日(金)8:50 | 日本 | 6月企業物価指数 | 前年比予想6.8%/前回6.3% | 輸入物価・企業物価を通じた日銀利上げ観測 |
参考: みんかぶFX経済指標カレンダー
FOMC議事録:来週最大の注目イベント
7月9日(木)3時に、6月FOMC議事録が公表される予定である。FRB公式カレンダーでは、6月16~17日にFOMCが開催され、次回会合は7月28~29日とされている。
6月FOMCでは、政策金利は据え置かれたものの、経済見通しとドットチャートがタカ派的に受け止められた。来週公表される議事録では、次の点が重要である。
- 利上げを支持する参加者がどの程度いたか
- エネルギー価格や供給ショックを一時的とみているか
- 雇用市場の減速をどの程度懸念していたか
- 7月利上げの可能性が議論されていたか
- インフレ上振れリスクと景気減速リスクのどちらを重視していたか
強いタカ派内容だった場合
議事録で利上げ支持が広く確認されれば、7月または9月FOMCでの利上げ観測が再び高まりやすい。米2年債利回りが上昇すれば、ドル円は162円台回復を試す可能性がある。
ハト派的な内容だった場合
雇用減速や景気下振れリスクへの警戒が強調されていれば、米雇用統計後に後退した利上げ観測がさらに低下する可能性がある。この場合、ドル円は160円台前半を試しやすくなる。
市場予想どおりだった場合
議事録が大きな新材料にならない場合は、米ISMサービス業景気指数や新規失業保険申請件数といった経済指標に関心が移る。市場は「FOMCの議論」よりも「雇用統計後の実体経済データ」を重視する展開となりやすい。
米ISM非製造業景気指数:サービス業の強さと価格指数が焦点
7月6日(月)23時に、6月ISM非製造業景気指数が発表される。市場予想は54.1、前回は54.5である。50を上回れば景気拡大、50を下回れば景気縮小を示す。
米国経済は製造業よりもサービス業の比重が大きい。そのため、ISM非製造業景気指数は、米景気の基調を判断するうえで重要である。
注目点は総合指数だけではない。雇用指数、価格指数、新規受注指数が重要である。雇用指数が弱ければ、7月2日の雇用統計が示した労働市場減速を補強する。反対に、価格指数が高止まりすれば、FRBの利上げ観測を再び支える可能性がある。
強い結果だった場合
総合指数が市場予想を上回り、雇用指数と価格指数も強ければ、「景気は底堅く、インフレ圧力も残る」と解釈されやすい。米国金利上昇、ドル買い、ドル円上昇につながりやすい。
弱い結果だった場合
総合指数が大きく低下し、雇用指数も悪化すれば、米雇用統計後のドル売りが再燃しやすい。米2年債利回りが4.00%へ接近すれば、ドル円は160円台前半を試す展開が考えられる。
日本の賃金・企業物価:日銀追加利上げの材料
7月7日(火)には日本の毎月勤労統計と家計調査、7月10日(金)には企業物価指数が発表される。
日銀が追加利上げに踏み切るには、賃金上昇、物価上昇、個人消費の底堅さが重要となる。日銀短観では企業の景況感と物価見通しが強かったため、今後は賃金と消費がそれに続くかが焦点である。
賃金と企業物価が強ければ、日銀の追加利上げ観測が高まり、円買い材料となる。反対に、賃金が市場予想を下回り、家計支出も弱ければ、日銀が急いで追加利上げするとの見方は後退しやすい。
ただし、ドル円への影響は米国金利との比較で決まる。日本の指標が強くても、同時に米国金利が上昇していれば、円買いは限定的になりやすい。
3.来週のドル円見通し
来週のドル円は、160円台半ばから162円台前半を中心に、方向感を探る展開を想定する。
米雇用統計の下振れによって7月利上げ観測は後退したが、年内利上げ観測はなお残っている。FRBの政策金利は3.50~3.75%、日銀の政策金利は1.00%であり、日米金利差は依然としてドル円の下値を支える材料である。
一方で、162円台では為替介入への警戒が強く、積極的な上値追いは難しい。7月2日の急落が実弾介入ではなかったとの見方が広がったとはいえ、政府・日銀が円安を強く警戒していることに変わりはない。
基本シナリオは、FOMC議事録と米ISMサービス業景気指数を確認しながら、米国金利の方向に沿って上下する展開である。161円台を中心とした持ち合いをメインに置き、162.85円を上抜けるか、160.49円を下抜けるかを次の分岐点として見たい。
4.ドル円のテクニカル見通し
日足のトレンド
日足では、6月下旬から7月1日にかけて高値を切り上げたものの、7月2日の米雇用統計後に大きく反落した。
指数平滑移動平均線(EMA)で見ると、10日線は161.59、20日線が161.16となっており、現在値は10日線を下回ったが、20日線は上回っている状態。これは、短期の上昇モメンタムは鈍化したものの、日足全体の上昇基調が完全に崩れたとはいえない形と言えるだろう。
RSIは概算で57台まで低下した。今週前半は過熱感があったが、雇用統計後の下落で過熱感はかなり冷えた。
MACDはプラス圏を維持しているものの、MACD線がシグナル線を下回り、短期的には上昇の勢いが鈍化している。MACDはトレンドの勢いをみる指標であり、プラス圏でもシグナルを下回る場合は、上昇トレンドの減速に注意が必要である。
なお、EMAの50日線は160.12であり、次に下落した場合はこの辺りが目処として意識される可能性が高いだろう。
4時間足のトレンド
4時間足では、7月1日の162.83円をピークに、7月2日~3日にかけて160.49円まで急落した。短期的には高値を切り下げ、安値も切り下げており、上昇一辺倒の形ではなくなっている。
EMAは、10日線が161.36、20日線が161.59、50日線が161.65であり、パーフェクトオーダーの形にはなっている。
とはいえ、160.49円で下げ止まった後、161円台前半へ戻して週を終えていることから、急落後の戻りを試す局面とも言えるだろう。
現時点では、4時間足は「162円台からの調整局面」とみるのが妥当であり、161.50円を上回って定着できるか、それとも160.50円を再び試すかが短期的な焦点となる。
テクニカル上の分岐点
上方向では、4時間足で見てまず161.50を抜けられるかが分岐点である。そのうえで162.00円を上回り、前回高値162.83円を明確に突破すると、ドル高・円安トレンド再開の可能性が高まる。
下方向では、160.48円を明確に下回るかが重要である。ここを日足終値で割り込むと、20日移動平均線近辺を維持していた上昇基調が崩れ、160円割れを試すシナリオを意識する必要がある。
5.まとめ
2026年6月29日~7月3日のドル円は、週前半に162.85円まで上昇し、円は約40年ぶりの安値圏へ下落した。背景には、6月FOMC後のFRB利上げ観測、米国金利の上昇、日米金利差、株高によるリスク選好があった。
しかし、7月2日の米雇用統計が市場予想を大きく下回り、過去分も下方修正されると、米利上げ観測が後退。ドル円は急落した。
来週は7月9日3時のFOMC議事録が最大の注目材料である。議事録がタカ派的なら162円台回復、ハト派的なら160円台前半を試す可能性がある。あわせて、7月6日の米ISM非製造業景気指数、7月9日の米新規失業保険申請件数、日本の賃金・企業物価も確認したい。
米雇用統計後で市場の金融政策織り込みが揺れやすく、さらに円安水準では為替介入への警戒も残る。イベント前後は値動きが急変しやすいため、ポジション管理には十分注意したい。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


