2026年9月14日~18日のドル円見通しを解説。FOMCと日銀金融政策決定会合、日米同時利上げの可能性、153円・155円の注目水準を分析する。
2026年9月7日~11日のドル円は、156円台から一時152.89円まで下落し、円高の流れがさらに進んだ。日銀の9月利上げ観測と円キャリートレードの巻き戻しが円を押し上げる一方、週後半は米PPI・CPIと原油高を受けてFRBの利上げ観測も急上昇した。来週は16日にFOMC、18日に日銀金融政策決定会合を迎える。 日米双方が利上げする可能性が高まるなか、政策金利そのものより「その次」をどう示すかがドル円の方向を左右する一週間となりそうである。
1.今週のドル円相場を振り返る
2026年9月7日~11日のドル円は、週初156円近辺から急落し、8日には152.89円まで円高が進んだ。その後は153~154円台で下げ渋り、米PPIやCPIを受けた米金利上昇によって154円台へ戻して週を終えた。
同一系列の日足データでは、週初値155.98円、週間高値156.28円、週間安値152.89円、週終値154.36円であった。前週4日の終値156.26円と比べると約1.90円のドル安・円高である。
| 項目 | USD/JPY |
|---|---|
| 週初値 | 155.98円 |
| 週間高値 | 156.28円 |
| 週間安値 | 152.89円 |
| 週終値 | 154.36円 |
| 週間値幅 | 3.39円 |
| 前週末比 | -1.90円(約-1.2%) |
週初:円買いが加速、152円台へ
7日のドル円は155.98円で始まり、一時156.28円まで上昇したものの、その後154.06円まで急落した。
翌8日にはさらに152.89円まで下落し、円は対ドルで約7カ月ぶりの高値を付けた。
Reuters
によれば、円は前週から約5%上昇しており、背景には日銀の利上げ観測、海外資産から国内への資金還流、円キャリートレードの巻き戻し、米国側からの円安是正圧力があった。
円キャリートレードとは、低金利の円で資金を調達し、高金利通貨や海外資産へ投資する取引である。日銀の利上げによって円の調達コストが上がると、この取引を解消するための円買いが起こりやすい。
事実として、8日のドル円は152.89円まで下落した。
市場の解釈として重要なのは、単なるドル売りではなく、円そのものへの評価が変わり始めたことである。
Reuters は、日銀の25bp利上げがほぼ織り込まれるなか、投資家が円ショートを巻き戻していると報じている。
なお、円キャリートレードについては、関連記事「円キャリートレードとは? ドル円への影響と巻き戻しの仕組みを解説」でも詳しく解説している。
週央:米金利が上がってもドル円の戻りは限定的
9日のドル円は153.99円で始まり、一時152.95円まで下落した。
東京市場では米10年債利回りが4.78%台まで上昇幅を縮小するとドル円も153.24円まで軟化した。
一方、中東情勢の緊迫化によって原油価格は上昇を続け、Brent原油は100ドルを突破した。Reutersは9日時点で、円高の背景に日銀利上げ期待がある一方、原油高が世界的なインフレ懸念を強めていると報じている。
ここで相場には2つの力が同時に働き始めた。
日銀利上げ観測 → 日本金利上昇 → 円買い
その一方で、
原油高 → 米インフレ懸念 → FRB利上げ観測 → 米金利上昇 → ドル買い
である。
今週後半のドル円が153~154円台で下げ渋ったのは、この2つの力が拮抗し始めたためと考えられる。
週後半:PPIで米金利上昇、154円台へ反発
10日は流れが変わった。
8月米PPIが前年比で市場予想を上回ると米長期金利が上昇し、ドル円は154.67円まで反発した。原油価格も上昇を続け、米10年債利回りは一時4.95%まで上昇した。
同日、ECBは政策金利を25bp引き上げた。
ECB は中東情勢によるエネルギー価格上昇を理由に、インフレが長期間2%目標を上回るとの見通しを示した。2027年と2028年のインフレ見通しも6月時点から上方修正している。
つまり世界の債券市場では、
原油高
→ インフレ再加速懸念
→ 中央銀行の利上げ
→ 長期金利上昇
という流れが強まった。
これはドル円にとって単純なドル高材料ではない。日本でも金利が上昇しているため、米金利だけでなく日米どちらの金利がより速く上昇するかを見る必要がある。
週末:米CPIでFOMC利上げ観測が急上昇
11日の最大材料は8月米CPIであった。
CPIは前月比+0.4%、前年比+3.4%。コアCPIは前年比+2.4%となった。とくにガソリン価格は前月比3.9%上昇しており、原油高の影響が物価へ波及し始めている。
これを受けて市場の9月FOMC利上げ予想は大きく変化した。
Reutersによれば、25bp利上げ確率はCPI前の72%から86%へ上昇した。米2年債利回りも4.63%まで上昇した。
前週には50~60%台を行き来していたことを考えると、金融政策の織り込みはかなりタカ派方向へ動いたことになる。
FedWatchを参照した報道では、年内に少なくとも1回利上げされる確率も97%まで上昇している。
それでもドル円は週初の156円台には戻らなかった。
これは重要である。
米CPI上振れ → FRB利上げ観測上昇 → 米2年債利回り上昇
という明確なドル高材料が出ても、同時に
日銀利上げ観測 → 日本金利上昇 → 円買い
が存在している。
したがって今週は、「ドル高なのにドル円がそれほど上がらない」相場へ移行した可能性を示した一週間だったと考える。
なお、FedWatchについては、関連記事「CME FedWatch Toolの見方と使い方」でも詳しく解説している。
2.来週の重要イベント
対象期間は2026年9月14日(月)~18日(金)である。
この週には日本・米国とも祝日はなく、通常通り取引が行われる。
最大の特徴は、16日のFOMCと18日の日銀金融政策決定会合が同じ週に行われることである。FRB公式日程ではFOMCは15~16日、日銀公式日程では金融政策決定会合は17~18日となっている。
| 日付・日本時間 | 国・地域 | イベント | 市場予想・前回値 | ドル円への注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 9月15日(火)21:30頃 | 米国 | 8月小売売上高 | 市場予想:未確認 | FOMC直前の米景気確認 |
| 9月17日(木)3:00 | 米国 | FOMC政策金利発表・経済見通し | 25bp利上げ確率:約86%/現行3.50~3.75% | 利上げ後の政策金利見通し・ドットチャート |
| 9月17日(木)3:30 | 米国 | ウォーシュFRB議長記者会見 | ― | 追加利上げへの姿勢 |
| 9月18日(金)8:30 | 日本 | 8月全国CPI | コア前年比予想+1.8%/前回+1.8% | 日銀会合直前の物価確認 |
| 9月18日(金)昼頃 | 日本 | 日銀金融政策決定会合 | 1.00%→1.25%利上げ予想 | 利上げ後も追加利上げを示唆するか |
| 9月18日(金)22:15 | 米国 | 8月鉱工業生産 | 市場予想:未確認/前回+0.2% | FOMC後の米景気確認 |
米鉱工業生産の9月18日公表はFRB公式スケジュールで確認できる。
注目① 9月17日 FOMC
来週最大の米国イベントである。
FRBは9月15~16日にFOMCを開催し、日本時間17日午前3時に政策判断を発表する。30分後にはウォーシュFRB議長の記者会見が予定されている。
11日のCPIを受け、25bp利上げ確率は約86%まで上昇した。
したがって焦点は、
「利上げするか」
から、
「利上げした後もさらに上げるのか」
へ移りつつある。
今回のFOMCでは経済見通し(SEP)とドットチャートも公表される。
ドットチャートとは、FOMC参加者が将来の政策金利をどの水準と予想しているかを点で示したものである。
市場では年内追加利上げへの期待も強まっているため、
- 2026年末の政策金利中央値
- 2027年の政策金利見通し
- PCEインフレ見通し
- 成長率・失業率
- ウォーシュ議長が原油高を一時的と見るか持続的と見るか
が重要となる。
25bp利上げそのものは相当程度織り込まれているため、利上げだけではドル高にならない可能性がある。
むしろドットチャートが市場予想よりタカ派ならドル高、追加利上げに慎重なら「材料出尽くし」のドル売りが起こり得る。
FOMCについては、関連記事「2026年9月FOMCとは? 利上げの可能性とドットチャート、ドル円への影響を解説」でも解説している。
注目② 9月18日 日銀金融政策決定会合
FOMCの翌日には日銀会合がある。
日銀公式日程では9月17~18日に金融政策決定会合を開催する。
Reuters調査では、日銀が政策金利を1.00%から1.25%へ25bp引き上げるとの予想が中心である。さらに市場では2027年第2四半期までに1.75%へ引き上げるとの見方も強まっている。
10日には増一行審議委員が、基調的インフレ率は2%目標に「非常に近い」と述べ、必要であれば利上げを速める可能性にも言及した。
したがって日銀もFOMCと同じである。
1.25%への利上げだけでは、すでに相当程度織り込まれている。
市場が見るのは、
1.25%でいったん止まるのか それとも1.50%、1.75%へ進むのか
である。
植田総裁が物価上振れリスクや実質金利の低さを強調すれば円高要因となる。
逆に、今回の利上げ後は時間をかけて経済への影響を確認するとの姿勢なら、これまで積み上がった円買いポジションの利益確定によって利上げしたのに円安という反応も十分考えられる。
注目③ 9月18日 日本CPI
日銀会合当日の朝8時30分には8月全国CPIが発表される。
Reuters調査では、生鮮食品を除くコアCPIは前年比+1.8%と、7月から横ばいが予想されている。
一見すると日銀の2%目標を下回る。
しかし現在の日銀が警戒しているのは、単月のCPIだけではない。
8月の企業物価指数は前年比+7.6%と高止まりしており、原油高と円安によって輸入価格も上昇している。
したがって、
輸入価格上昇
→ 企業コスト上昇
→ 販売価格への転嫁
→ 消費者物価
という経路が続くかが焦点となる。
3.来週のドル円見通し
メインシナリオ
筆者のメインシナリオは、FOMCまでは153~155円台を中心に方向感を探り、FOMCと日銀会合を通過してから新しいレンジを形成する展開である。
最大のポイントは、
FRBも利上げ
日銀も利上げ
という極めて珍しい組み合わせになり得ることである。
この場合、単純な「利上げ=その通貨高」という見方では判断できない。
重要なのは、
FOMC後の米金利見通し vs 日銀会合後の日本金利見通し
である。
現在は米国でも日本でも利上げがかなり織り込まれているため、政策発表後は次回以降の利上げペースがドル円を決めると考える。
メインシナリオを修正する条件: 156円台を明確に回復する、または152.89円を下抜いて152円台前半へ下落する場合。どちらかに抜ければ、中央銀行イベントを前にポジション調整以上の動きが始まった可能性を考える。
ドル高・円安シナリオ
ドル高・円安の組み合わせとしてもっとも分かりやすいのは、
FOMCがタカ派 & 日銀が慎重
である。
たとえば、FOMCで25bp利上げに加え、ドットチャートが年内追加利上げを示し、ウォーシュ議長もインフレ警戒を強調する。
その一方、日銀が1.25%へ利上げしても植田総裁が次回以降の追加利上げに慎重なら、
米金利上昇 + 日本金利上昇期待の後退
→ 日米金利差再拡大
→ ドル高・円安
となりやすい。
この場合、まず155円、次に156円台が焦点となる。
シナリオ修正条件: 米2年債利回りが上昇してもドル円が155円を回復できない場合。これは円キャリー巻き戻しや日本への資金還流が金利差以上に強い可能性を示す。
ドル安・円高シナリオ
反対は、
FOMCが慎重 & 日銀がタカ派
である。
FOMCが25bp利上げしても、その後の追加利上げを急がない姿勢を示す一方、日銀が1.25%へ利上げし、さらに追加利上げを示唆すれば、
米利上げ期待後退 + 日本利上げ期待継続
→ 日米金利差縮小
→ 円買い
となる。
この場合、今週安値152.89円が最初の重要水準となる。
ここを明確に下抜けると、円キャリー取引の巻き戻しが再加速する可能性がある。
シナリオ修正条件: 152円台へ下落してもすぐ154円台へ戻る場合。日銀利上げがすでに十分織り込まれ、「事実で売る」円売りが出ている可能性を考える必要がある。
4.ドル円のテクニカル見通し
今週のドル円は、前週の160.39円からの下落を引き継ぎ、152.89円まで下値を広げた。
したがって日足の大きな構造では、高値・安値の切り下げが続いている。
一方、152.89円を付けた後は153~154円台へ戻しており、短期的には下げ止まりを探る段階に入っている。
9月11日に取得できたテクニカルデータでは、10期間単純移動平均線154.38円、20期間線154.28円、50期間線153.80円、200期間線156.01円付近であった。ただし取得画面の時間軸表示が一定ではなく、これらを週末確定の日足移動平均線として扱うことはできないため、参考値にとどめる。
USD JPY Technical Analysis & Forecast - Investing.com UK
同じ理由から、週末確定の日足RSI・MACDについて信頼できる同一時点データを確認できなかったため、数値は記載しない。
上値の注目水準
154.60~154.70円
10日の高値154.67円であり、今週後半の最初の抵抗帯である。
155.00円
心理的節目である。
今週は155円を割り込んだ後に円買いが加速したため、再び155円を回復できるかは短期トレンドを見るうえで重要となる。
156.00~156.30円
週初の高値156.28円が位置する。
ここを回復すれば、152.89円までの下落がいったん調整局面に入ったと判断しやすくなる。
さらに200日移動平均線の参考値も156円近辺にあり、中期的にも重要なゾーンである。
下値の注目水準
153.00円
今週8~9日に繰り返し下値を支えた心理的節目である。
152.89円
今週安値であり、重要な短期サポートである。
ここを明確に割り込めば、
160.39円 →155円台 →152円台
と高値・安値の切り下げがさらに明確になる。
その場合は152.00円、さらに150円という心理的節目が意識されやすくなる。ただし、150円までの間に明確な支持線を今回の取得データから特定できないため、途中の水準は推測しない。
テクニカル上の分岐点
来週の最初のレンジは、
上:154.70~155.00円
下:152.89~153.00円
と考える。
155円を回復すれば156円台への戻りを試しやすくなる。
152.89円を割れば、円高トレンド継続を意識する必要がある。
ただし来週はFOMCと日銀会合があるため、通常のテクニカル水準よりも金融政策による価格ギャップや急変動が優先される週である。
5.まとめ
2026年9月7日~11日のドル円は155.98円で始まり、一時152.89円まで下落した。日銀利上げ観測、円キャリートレードの巻き戻し、海外資産からの資金還流によって円買いが続いた一方、週後半は米PPI・CPIと原油高を受けてFRB利上げ観測が急上昇し、ドル円は154円台へ戻した。
来週9月14~18日は、17日未明のFOMCと18日の日銀金融政策決定会合が最大の焦点となる。市場ではFRBの25bp利上げ確率が約86%まで上昇し、日銀についても1.00%から1.25%への利上げが中心予想となっている。
したがって来週は「利上げするか」よりも、利上げ後にどこまで金利を上げるのかが重要になる。FOMCがタカ派で日銀が慎重ならドル高・円安、FOMCが慎重で日銀が追加利上げを示唆すればドル安・円高という構図である。
そして現在のドル円でとくに注目したいのは、米金利が上昇してもドル円が以前ほど上がらなくなっていることである。日米双方の金融政策が動き始めたことで、米国材料だけを見る相場から、日米の政策金利見通しを比較する相場へ移行している可能性がある。
本記事は市場動向の解説を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨する投資助言ではない。
