Fear & Greed IndexのExtreme Fearは本当に買い時なのか。2021~2025年のS&P500の過去データを比較し、1カ月後・3カ月後・6カ月後・12カ月後の騰落率から検証します。
CNNのFear & Greed Index(恐怖と欲望指数)が「Extreme Fear(極端な恐怖)」まで低下すると、こう考える投資家もいるでしょう。
「株価は売られすぎているのではないか?」
「いまが株を買うチャンスなのではないか?」
Fear & Greed Indexでは、0に近いほど市場の恐怖が強く、25未満はExtreme Fearに分類されます。実際、市場が悲観一色になったところが、その後振り返ると長期投資の好機だったケースは少なくありません。
しかし、
「Extreme Fearになったら買えばよい」
と単純に考えることはできるのでしょうか?
この記事では、Fear & Greed Indexの過去データとS&P500を比較し、Extreme Fearまで市場心理が悪化した後、株価がどのように推移したのかを検証します。
Fear & Greed Indexそのものの仕組みについては、関連記事「Fear & Greed Indexとは? CNNの恐怖と欲望指数の見方・使い方を解説」で詳しく紹介しています。
Extreme Fearとは?
Fear & Greed Indexは、株価のモメンタム、VIX指数、オプション市場、債券市場など7つの指標から、米国株式市場の投資家心理を0~100で表した指数です。
数値が低いほどFear、高いほどGreedが強くなります。
過去データの分類では、25未満が「Extreme Fear」です。CNNのデータを保存しているヒストリカルデータでは、2021年2月以降についてCNNのデータを直接取得しており、Extreme Fearは0以上25未満に分類されています。
Extreme Fearになるのは、単に株価が少し下落した程度ではありません。
景気後退への懸念、金融不安、急激な金融引き締め、地政学リスクなどを背景に、市場参加者がリスクを取ることに強い警戒感を持っている場面で現れやすくなります。
つまり、投資家にとってもっとも株を買いにくい状況のひとつであると言えます。
だからこそ、「他の投資家が怖がっているときこそ買い時なのではないか」という考え方が出てきます。
Extreme Fear後のS&P500を検証
今回は、比較可能性を考えて2021~2025年のFear & Greed Indexを使用しました。
各年でFear & Greed Indexが最低値となった日を取り出し、その日から1カ月後、3カ月後、6カ月後、12カ月後のS&P500の騰落率を計算しています。
2021年以降を対象にしたのは、使用したヒストリカルデータでは2021年2月以降がCNNのデータから継続的に取得されている一方、それ以前は複数の過去データを組み合わせており、データの比較可能性に注意が必要だからです。2021~2025年の年間最低値は、それぞれおおむね9、3、20、17、3でした。
S&P500については、S&P Dow Jones Indicesのデータを掲載するFREDの日次終値を使用しました。休日の場合はもっとも近い営業日を使用しています。なお、ここで使用するS&P500は配当を含まない価格指数です。
結果は次のようになりました。
| 年 | Fear & Greed最低値 | 日付 | 1カ月後 | 3カ月後 | 6カ月後 | 12カ月後 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 約9 | 7月19日 | +3.5% | +6.1% | +6.4% | -7.6% |
| 2022年 | 約3 | 5月12日 | -4.6% | +8.9% | +0.7% | +4.9% |
| 2023年 | 約20 | 10月5日 | +2.5% | +10.3% | +22.2% | +35.1% |
| 2024年 | 約17 | 8月7日 | +4.0% | +14.9% | +15.9% | +21.9% |
| 2025年 | 約3 | 4月8日 | +13.7% | +24.9% | +35.5% | +36.1% |
| 平均 | ― | ― | +3.8% | +13.0% | +16.2% | +18.1% |
Fear & Greed Indexの日次データでは、それぞれ2021年7月19日に約9、2022年5月12日に3.2、2023年10月5日に約20、2024年8月7日に約17、2025年4月8日に2.9を記録しています。
S&P500の騰落率はFREDの日次終値をもとに計算しています。たとえば2021年7月19日のS&P500は4258.49、2022年5月12日は3930.08、2023年10月5日は4258.19、2024年8月7日は5199.50、2025年4月8日は4982.77でした。
3カ月後、6カ月後は5回すべて上昇
今回の結果で目を引くのが、中期的なリターンです。
年間でFear & Greed Indexが最低値になった日から見ると、3カ月後と6カ月後は5回すべてでS&P500が上昇していました。
平均騰落率も、
3カ月後が+13.0%、6カ月後が+16.2%、12カ月後が+18.1%
となっています。
少なくとも今回の5年間を見る限り、投資家心理が極端に悲観へ傾いた局面は、その後の中長期的な投資環境として悪くなかったことが分かります。
しかし、この数字だけを見て、
「Extreme Fearになったら買えば勝てる」
と結論づけるのは危険です。
この検証には非常に重要な注意点があります。
「その年の最低値」は後にならなければ分からない
今回の検証では、各年でFear & Greed Indexが最低値になった日を使用しています。
しかし、これは後から振り返ったからわかる数字です。
たとえばFear & Greed Indexが20まで低下した時点では、それが底なのか、翌週には10まで下がるのか分かりません。
リアルタイムの投資では、
「今年のFear & Greed Indexは今日が最低です」
という情報を事前に知ることはできません。
したがって今回の結果は、売買戦略のバックテストというより、
「市場心理が極端な悲観まで達した局面を後から振り返ると、その後の株価はどうなったのか」
を見るための検証です。
ここを区別して考えることが重要です。
2022年はExtreme Fearになってからさらに下落
Extreme Fearが正確な底値を教えてくれるわけではないことがよくわかるのが、2022年です。
2022年5月12日、Fear & Greed Indexはわずか3.2まで低下しました。
これほど低い数字を見ると、投資家心理は十分に悲観へ傾き、株価も底に近いように思えます。
ところがS&P500は、その1カ月後にはさらに約4.6%下落していました。
その後3カ月では+8.9%まで回復したものの、6カ月後でも+0.7%にとどまっています。
2022年はFRBによる急速な金融引き締めとインフレへの警戒が続いており、市場参加者がすでに強い恐怖を感じていても、株価を押し下げていたファンダメンタルズ要因そのものが消えたわけではありませんでした。
「みんなが怖がっている」ことと、「悪材料がすべて出尽くした」ことは同じではないのです。
2021年は12カ月後にマイナス
2021年7月19日にもFear & Greed Indexは約9まで低下しました。
その後S&P500は回復し、1カ月後+3.5%、3カ月後+6.1%、6カ月後+6.4%となりました。
ところが12カ月後になると、騰落率は-7.6%です。
2022年に入ってインフレと金融引き締めが大きなテーマとなり、相場環境そのものが変化したためです。
これもFear & Greed Indexの限界をよく示しています。
Fear & Greed Indexはその時点の市場心理を見る指標であり、半年後や1年後に起こる金融政策や景気の変化まで予測するものではありません。
2023~2025年はその後大きく上昇
一方、2023年以降のExtreme Fear局面は、その後の株価上昇につながりました。
2023年10月5日の約20から12カ月後のS&P500は+35.1%、2024年8月7日の約17から12カ月後は+21.9%でした。
2025年4月にはFear & Greed Indexが2.9まで低下しています。CNNも当時、市場がExtreme Fearにあることを報じており、急激な市場不安が広がっていました。
しかし、その後S&P500は大きく回復し、3カ月後+24.9%、6カ月後+35.5%、12カ月後+36.1%となりました。
市場が極端な悲観に傾いているときには、悪材料が株価にかなり織り込まれている場合があります。
不安の原因が少し和らぐだけでも、売られすぎていた株式に資金が戻り、大きな反発につながることがあります。
Extreme Fearが投資家から注目される理由はここにあります。
Extreme Fearは「底値シグナル」ではない
今回のデータからは、Extreme Fearについて2つの特徴が見えてきます。
1つ目は、極端な悲観局面から数カ月という時間軸で見ると、その後のリターンが良好だったケースが多かったこと。
2つ目は、Extreme Fearになった時点が株価の底だったとは限らないこと。
これは矛盾しているように見えますが、そうではありません。
市場心理が極端な悲観に傾いているときには、すでに多くの投資家が株式を売っているため、中長期的には投資妙味が高まっている可能性があります。
一方、金融危機や景気後退、金融引き締めなどの原因が続いていれば、Extreme Fearになった後も株価はさらに下落します。
つまりExtreme Fearが教えてくれるのは、
「ここが底です」ではなく、「市場参加者の悲観がかなり極端なところまで来ています」
という情報です。
VIX指数と一緒に見る
Extreme Fearになったときには、Fear & Greed IndexだけでなくVIX指数を見ることも有効です。
VIX指数はS&P500オプションから算出される今後30日間の予想ボラティリティで、株式市場への警戒が急速に強まると上昇する傾向があります。
Fear & Greed IndexそのものにもVIXが構成要素として含まれていますが、VIXを個別に見ることで、市場がどの程度大きな値動きを警戒しているのかを確認できます。
とくに、
Fear & Greed IndexがExtreme Fearに低下し、VIXが急上昇した後に低下へ転じる
ような場面では、市場のパニックがピークを越えつつあるかを考える材料になります。
ただしVIXのピークも、株価の底を保証するものではありません。
VIX指数については、関連記事「VIX指数(恐怖指数)とは? 見方・目安とFear & Greed Indexとの違いを解説」で詳しく紹介しています。
Extreme Fearを投資でどう使う?
Fear & Greed Indexを利用するときには、売買を自動的に決めるシグナルではなく、市場をもう一度調べるきっかけとして使うのがよいでしょう。
Extreme Fearまで低下したら、「なぜ市場はここまで悲観しているのか」を確認します。その原因が一時的なパニックなのか、それとも景気後退、企業業績の悪化、金利上昇など長期的に株価へ影響する問題なのかによって意味は変わります。
また、底値を一点で当てようとせず、投資を数回に分けるという考え方もあります。
Extreme Fearになって最初の投資を行い、さらに株価が下落した場合には追加するなど、時間を分散すれば「Extreme Fearになった翌日が底ではなかった」というリスクを抑えられます。
Fear & Greed Indexだけでなく、企業業績、景気、FRBの金融政策、米国債利回り、VIX指数などと組み合わせて市場環境を確認することが重要です。
Extreme Fearは「買い時」ではなく「調べる時」
今回、2021~2025年のFear & Greed IndexとS&P500を比較すると、各年で最高値になった日から3カ月後と6カ月後には、5回すべてでS&P500が上昇していました。
12カ月後の平均騰落率も+18.1%となっています。
極端な悲観局面が、中長期的には投資機会になっていたケースが多かったことは確かです。
しかし、2022年にはExtreme Fearから1カ月後にさらに4.6%下落し、2021年のケースでは12カ月後のリターンがマイナスになりました。
そして何より、今回使用した「その年でもっともFearが強かった日」は、リアルタイムには知ることができません。
したがって、
Extreme Fear=買いシグナル
と考えるのは適切ではありません。
むしろ、
Extreme Fear=市場が悲観へ大きく傾いているため、投資機会が生まれていないか調べ始めるサイン
と考える方が実用的です。
株価が大きく下落しているときほど、投資家心理は「まだ下がるのではないか」という恐怖に支配されます。
Fear & Greed Indexの価値は、その感情を数字にして客観的に見せてくれることにあります。
市場が楽観に傾いているときにはリスクを確認し、市場が悲観に傾いているときには機会がないかを確認する。
Fear & Greed Indexは、そうした視点を持つための指標として使うのがよいでしょう。
