ドル円は160円目前で推移。来週はISM景況感指数、JOLTS求人件数、ADP雇用統計、米雇用統計が集中し相場の方向性を左右する。6月FOMC・日銀会合を前に注目ポイントを解説。
5月最終週のドル円相場は、160円台目前まで上昇した後、やや上値を抑えられる展開となった。市場の中心テーマは引き続き「インフレ」と「金融政策」である。
米国ではインフレ再燃への警戒が続いており、FRBによる利下げ期待は大きく後退している。一方、日本では6月の日銀利上げ観測が高まっているものの、高市政権による財政拡張政策への思惑が円売り要因として依然として意識されている。
来週は5月雇用統計を筆頭にISM景況感指数、JOLTS求人件数、ADP雇用統計など重要指標が集中する。6月FOMCや日銀会合を控え、市場は「米景気は本当に減速しているのか」「FRBは利下げできるのか」を見極める週となりそうだ。
今週(5月25日~5月29日)の振り返り
今週のドル円は159円台を中心とした推移となった。
5月上旬にあった7営業日連続陽線の勢いは一服したものの、大きな円高方向への調整も見られなかった。
背景として市場が注目したのは以下の3点が考えられる。
① 米インフレ懸念の継続
市場では原油価格高騰の影響が今後の物価へ波及するとの警戒が続いている。
とくにFRBが重視するPCEコアデフレーターについては、インフレ高止まりが意識されており、年内の利下げ期待はさらに後退した。
米長期金利は高止まりしており、ドル買いを支える構図は維持されている。
② 日銀6月利上げ観測
市場では6月の日銀金融政策決定会合での利上げ予測が高まっている。
植田総裁をはじめ日銀関係者からは、物価上昇圧力の持続、価格転嫁の加速、エネルギー価格上昇の波及などを意識した発言が目立つ。
しかし、単に利上げを行うというだけでは円高方向へ動かなくなってきている。ドル円はなかなか下がりづらいのが現状だ。
③ 高市政権の財政政策
補正予算編成への思惑が引き続き相場材料となった。市場は財政拡張による国債増発リスクを意識しており、日本の超長期金利は高止まりしている。
本来であれば金利上昇は円買い要因だが、問題なのはこの金利上昇は「財政悪化懸念」であることだ。
超長期国債のメインの買い手である生保も積極的に超長期国債を買う姿勢を見せておらず、買い手不在のまま金利が上がり続けるという悪い環境にある。
来週(6月1日~6月5日)の注目イベント
来週は月初恒例の重要指標ラッシュとなる。
6月1日(月)
- ISM製造業景況指数
製造業の景況感を測る代表的指標である。市場予想を下回れば景気減速懸念からドル売り要因となる。逆に強い結果となればドル買いが優勢になりやすい。
6月2日(火)
- JOLTS求人件数
FRBが重視する雇用関連指標。労働市場の逼迫状況を確認するための材料となる。 求人件数が高水準なら賃金上昇圧力が続き、インフレ懸念を強める可能性がある。
6月3日(水)
- ADP雇用統計
週末の雇用統計の前哨戦として注目度の高い経済指標だ。市場予想との乖離が大きい場合はドル円も大きく動く可能性がある。
また同日には植田日銀総裁の講演も予定されている。6月会合直前ということもあり、利上げに関するヒントが出るか注目したい。
6月5日(金)
- 米雇用統計(最重要)
来週最大のイベントである。市場予想は、・非農業部門雇用者数が11万人台、失業率が4.3%となっている。
今の地合いであれば、結果によりFRBの利下げに対するスタンスがダイレクトに出やすいだろう。
つまり、雇用者数が予想を大きく上回れば、FRBの利下げがさらに後退すると判断されドル買いが出やすい。逆に弱い数字となれば、FRBは年内利下げも検討すると判断されドル売りが強まる可能性がある。
来週のドル円見通し
現在のドル円は、相反する材料が交錯している。
- 米インフレ懸念
- FRB利下げ後退
- 日銀利上げ観測
- 財政拡張への警戒
これによりポジションを傾けづらく、レンジ内の取引に終始しやすい。
テクニカル見通し
5月は、本邦が4月末に実施した為替介入によりチャートが壊れた影響が続いた。大きな値動きはその後も動きを抑制し、トレンドが出ない状況が続いている。
現在のドル円は、為替介入の高値から78.6%まで上昇したものの、やや失速している状況だ。5月上旬から続いた自律反発の動きも、オシレーターを見るとやや衰えが見られる(デッドクロスが近い)。
5月が終わったので、月足も見てみよう。 ドル円は月足でも依然として上昇圧力が強い状態であるが、値動きとしては4月の安値を割っている。これは為替介入によるものだが、無理やりでも下値を付けたことにより高値更新のハードルは高まったといえる。
6月第一週の重要指標でこの高値を超えなければ、夏にかけてはやや下方向の動きになるだろう。
為替は政局も左右する
本邦が前回為替介入の高値を許容するかはわからないが、もし許容するようだとテクニカル的には180円までの上昇をみることになり、その場合は日経平均だけが上がり続け、日本経済は輸入を中心に大きな打撃を受けるだろう。
その時は相次ぐ値上げにより国民生活も逼迫し、そこから政治不信へとつながるのがセオリーだ。高市政権は実態経済を分かっているブレーンが誰もいないように見える。日経平均が崩れなければ安泰という安易な考えでは、やがて足下をすくわれるだろう。
まとめ
ドル円は160円目前まで上昇したものの、日銀利上げ観測や為替当局のけん制もあり上値追いには慎重な展開となった。
来週は雇用統計週であり、5月の膠着した相場の転換になるかを計る重要な1週間となるだろう。現時点ではドル高優勢の流れに大きな変化は見られないが、雇用統計次第では6月の相場観そのものが変わる可能性もある。
短期的には160円突破の可能性を残しつつも、週後半に向けてはボラティリティの拡大に注意したい。


