IMMポジションとは何かを初心者向けに解説。CFTCのCOTレポートで円先物を確認する方法、Non-CommercialとLeveraged Funds、Asset Managerの違い、ドル円や円キャリートレードへの活用法を紹介します。
IMMとは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のInternational Monetary Marketに由来する呼び方です。
ドル円相場を調べていると、「IMMの円売りポジションが増加した」「投機筋が円ショートを解消した」といった表現を見かけることがあります。
IMMポジションは、ヘッジファンドなど市場参加者が円をどの程度買っているのか、あるいは売っているのかを把握するための代表的なデータです。
ドル円が大きく動いたときには、単に金利差だけを見るのではなく、
「投機筋が円売りを積み上げているのか」
「円ショートの買い戻しが始まっているのか」
を確認することで、相場の背景が見えやすくなります。
この記事では、IMMポジションの基本的な見方から、CFTC(米商品先物取引委員会)のデータを実際に確認する方法、さらにLeveraged FundsやAsset Managerとの違いまで解説します。
1.IMMポジションとは?
一般に「IMMポジション」と呼ばれているものは、CFTCが毎週公表しているCommitments of Traders(COT)レポートに掲載される通貨先物の建玉データを指します。
COTレポートには、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)などで取引されている日本円、ユーロ、英ポンドなどの先物について、市場参加者がどの程度ロング・ショートを保有しているかが掲載されています。
CFTCによると、COTレポートは原則として毎週火曜日時点の建玉を集計し、金曜日午後に公表されます。そのため、日本時間では通常、土曜日の早朝に最新データを確認することになります。
ドル円を見る場合は、「JAPANESE YEN」のポジションを確認します。
2.円のロング・ショートはドル円と逆になる
IMMポジションを見るときに、初心者が間違えやすいのがこの部分です。
日本円先物では、
円ロング=円買い
円ショート=円売り
を意味します。
したがって、ドル円との関係は次のようになります。
| 円先物のポジション | 意味 | ドル円では |
|---|---|---|
| 円ロング増加 | 円買いが増える | ドル円下落要因 |
| 円ショート増加 | 円売りが増える | ドル円上昇要因 |
| 円ショート減少 | 円売りの買い戻し | ドル円下落要因 |
| 円ロング減少 | 円買いを解消 | ドル円上昇要因 |
たとえば円ロングが10万枚、円ショートが15万枚であれば、
10万枚-15万枚=▲5万枚
となり、ネットでは5万枚の円売り越しです。
ニュースなどで「IMMの円売り越しが5万枚」と報じられる場合、このネットポジションを指していることが多くあります。
3.ネットポジションだけを見ると見落とすことがある
IMMを見るときには、ネットポジションだけではなく、ロングとショートを別々に確認することも重要です。
たとえば、
前週:円ロング10万枚、円ショート17万枚
今週:円ロング10万枚、円ショート13万枚
となった場合、
ネット円売りは▲7万枚から▲3万枚へ縮小します。
この場合は、新たな円買いが増えたわけではありません。
円ショートを4万枚買い戻した
ことが主な原因です。
これはドル円が急落している局面であれば、投機筋が円売りポジションを閉じる「ショートカバー」が起きている可能性を示します。
一方、
前週:円ロング10万枚、円ショート17万枚 今週:円ロング14万枚、円ショート17万枚
でも、ネットポジションは同じ▲3万枚になります。
こちらはショートカバーではなく、新しい円買いポジションが増えた状態です。
同じ「ネット円売り縮小」でも意味が違うため、Long・Short・Netをセットで見ることが大切です。
4.よく見る「Non-Commercial」とは?
以前から使われているCOTレポートは、一般に「Legacy COT」と呼ばれます。
Legacy COTでは、大口市場参加者を大きく、
- Commercial
- Non-Commercial
に分類しています。
このうち、為替市場で「IMM投機筋」としてよく取り上げられるのがNon-Commercialです。
ただし、「Non-Commercial=すべてヘッジファンド」と考えるのは正確ではありません。
CFTCはトレーダーを、その市場参加者の主な事業活動などを基に分類しており、必ずしも個々のポジションを「投機目的」「ヘッジ目的」と完全に分けているわけではありません。
そのため、相場をもう少し詳しく分析したい場合には、次に紹介するTFF(Traders in Financial Futures)が役立ちます。
5.Leveraged FundsとAsset Managerとは?
CFTCは金融先物について、Legacy COTとは別にTFF(Traders in Financial Futures)という分類も公表しています。
TFFでは市場参加者を、
- Dealer / Intermediary
- Asset Manager / Institutional
- Leveraged Funds
- Other Reportables
の4つに分類しています。([CFTC][3])
ドル円を見る場合、とくに注目したいのがLeveraged FundsとAsset Manager / Institutionalです。
Leveraged Funds
Leveraged Fundsには、主にヘッジファンド、CTA(商品投資顧問)、CPOなどが含まれます。
CFTCの説明(PDFファイル)でも、Leveraged Fundsは典型的にはヘッジファンドや各種マネーマネージャーで、投機的な顧客のための取引や裁定取引などを行う市場参加者とされています。
そのため、為替市場では、
「投機筋が円をどちらに傾けているか」
を見る指標として利用しやすいカテゴリーです。
たとえばLeveraged Fundsの円ショートが急速に増えていれば、ヘッジファンドなどが円安方向へのポジションを積み増している可能性があります。
逆に円ショートが急減していれば、投機的な円売りポジションの巻き戻しが進んでいる可能性があります。
Asset Manager / Institutional
Asset Manager / Institutionalには、年金基金、保険会社、投資信託、機関投資家向けの資産運用会社などが含まれます。
Leveraged Fundsと比べると、短期的な値動きそのものを狙うというより、
- 海外資産の運用
- 為替ヘッジ
- ポートフォリオ調整
- リスク管理
などの影響を受けやすいと考えられます。
そのためAsset Managerのポジション変化を見ると、中長期の機関投資家が為替リスクをどのように調整しているのかを考える手がかりになります。
6.TFFはNon-Commercialを細分化したものではない
ここは少し専門的ですが、重要なポイントです。
一見すると、
「Non-Commercialを、Leveraged FundsやAsset Managerに細かく分けたもの」
のように見えます。
しかし、厳密には違います。
CFTCは、TFFはLegacy COTを単純に細分化したデータではないと説明しています。
TFFに分類されている市場参加者は、Legacy COTではCommercialに分類されている場合もあれば、Non-Commercialに分類されている場合もあります。
したがって、
Non-Commercial ≠ Leveraged Funds
です。
実際の分析では、
Legacy COTのNon-Commercial + TFFのLeveraged Funds
を別々の角度から見るのが分かりやすいでしょう。
初心者のうちはNon-Commercialだけでも十分ですが、ドル円の動きを詳しく調べるようになったらLeveraged Fundsまで確認すると、市場の解像度が一段上がります。
7.CFTCでIMMポジションを確認する方法
IMMポジションはCFTCの公式サイトで無料で確認できます。
CFTCの「Commitments of Traders」ページを開くと、Legacy COTやTFFなど複数のレポートが掲載されています。
円を見る場合は、まずLegacy COTの「Chicago Mercantile Exchange(CME)」にある「Futures Only」のShort Formatを開きます。IMMの円ポジションを確認するだけであれば、Short Formatで必要な情報を確認できます。
ページ内で、
JAPANESE YEN
を検索すると、日本円先物の欄を見つけられます。
そこに、
- Open Interest
- Non-Commercial Long
- Non-Commercial Short
- Spreading
- Commercial Long
- Commercial Short
などが掲載されています。
通常のIMMポジションを確認したい場合は、まず、
Non-Commercial Long Non-Commercial Short
を確認すればよいでしょう。
ネットポジションは、
Long-Short
で計算できます。
8.Leveraged Fundsを確認するには?
より詳しく調べたい場合は、CFTCのTraders in Financial Futures(TFF)を確認します。
TFFには、
- Dealer / Intermediary
- Asset Manager / Institutional
- Leveraged Funds
- Other Reportables
それぞれのLong・Short・Spreadingが掲載されています。CFTCはTFFを通貨、米国債、株価指数など金融先物を対象としたレポートとして公表しています。([CFTC][3])
ここでも「JAPANESE YEN」を探し、
Leveraged Funds Long Leveraged Funds Short
を確認します。
たとえば、
Leveraged Funds Long:7万枚 Leveraged Funds Short:14万枚
なら、
7万-14万=▲7万枚
となり、Leveraged Fundsは7万枚の円売り越しです。
さらに前週と比較して円ショートが増えているのであれば、
ヘッジファンドなどが円売りを積み増している
と読むことができます。
9.円キャリートレードの巻き戻しを見るには?
IMMポジションは、円キャリートレードの動きを考える際にも役立ちます。
円キャリートレードとは、低金利の円を調達し、より高い利回りが期待できる海外資産などへ投資する取引です。
円安が続いている間は、
円売り → ドルなどを買う → 海外資産へ投資
という取引が続きやすくなります。
ところが急激な円高が起きると、
海外資産を縮小する → 円を買い戻す → 円高がさらに進む
という巻き戻しが起きることがあります。
このとき、
ドル円が急落 + Leveraged Fundsの円ショートが急減
していれば、投機筋の円キャリーポジションが巻き戻されている可能性を考えることができます。
10.ただしIMMだけで円キャリー全体は分からない
注意したいのは、IMMが円キャリートレード全体を示しているわけではないことです。
実際の金融市場では、
- 為替フォワード
- FXスワップ
- 現物為替
- 米国債
- 株式
- 社債
- 新興国資産
など、さまざまな商品を利用した円キャリー取引があります。
IMMで確認できるのは、そのうち先物市場に現れているポジションの一部分です。
したがって、
「IMMの円ショートが10万枚だから、円キャリーが10万枚存在する」
という読み方はできません。
IMMはあくまで、
市場参加者のポジションの傾きを観測する温度計
として利用するのがよいでしょう。
11.Asset Managerが動いたら米国債も見る
TFFのAsset Managerが大きく動いた場合には、米国債市場も一緒に確認すると相場の背景が見えやすくなります。
たとえば円高が急速に進み、海外資産を保有する機関投資家が為替リスクを抑えようとすれば、
為替ヘッジを増やす 海外資産を縮小する 資金を国内へ戻す
といった動きが出る可能性があります。
その過程で米国債など海外資産が売却されれば、米長期金利の上昇要因となることも考えられます。
ただし、
Asset Managerの円ポジションが変化した=米国債を売買した
とは判断できません。
TFFで分かるのはあくまで先物ポジションです。
そのため、
円ポジション +ドル円 +米2年債・10年債・30年債利回り
などを組み合わせて見ることが重要です。
12.IMMポジションを見るときの注意点
IMMにはいくつか注意点があります。
まず、データには時間差があります。
火曜日時点のポジションが金曜日に公表されるため、金曜日に大きな為替変動が起きても、その動きは翌週のCOTまで反映されません。
また、CFTCは市場参加者をその主体の主な活動によって分類しているため、
Leveraged Fundsの取引がすべて投機 Asset Managerの取引がすべて長期投資
というわけではありません。
CFTC自身も、たとえばヘッジファンドが為替先物を保有していても、それが別のポジションの為替リスクをヘッジする目的である可能性があり、個々の取引目的までは判断できないと説明しています。
したがってIMMは、単独で売買判断をする指標ではなく、為替・金利・株式などと組み合わせて利用するのが基本です。
13.最初はこの4点だけ確認すればよい
IMMをはじめて見る場合、すべての数字を追う必要はありません。
まずは、
① Non-Commercialのネットポジション
② Leveraged Fundsのネットポジション
③ 前週からLongとShortがどう変化したか
④ その間にドル円がどう動いたか
の4点だけでも十分です。
円キャリートレードの巻き戻しを調べたい場合には、さらに米国30年債など長期金利の動きを加えます。
たとえば、
ドル円下落 +Leveraged Fundsの円ショート急減 +米30年債利回り上昇
となれば、単なる円高ではなく、円キャリーの巻き戻しが海外資産市場へ波及している可能性も考えられます。
逆に、
ドル円下落
+円ショート急減
+米国債利回り低下
なら、リスク回避による円買いと米国債買いが同時に起きている可能性があります。
このようにIMMポジションは、数字そのものよりも、「誰がポジションを変え、そのとき他の市場がどう動いたのか」を見ることで役立つ指標です。
まとめ
IMMポジションは、ドル円市場で投機筋が円を買っているのか、売っているのかを把握するための代表的なデータです。
一般的にはLegacy COTのNon-Commercialがよく利用されますが、より詳しく分析する場合にはTFFのLeveraged FundsやAsset Managerも役立ちます。
とくに、
Leveraged Funds=ヘッジファンドなど投機色の強い市場参加者
Asset Manager=年金・保険・投資信託など機関投資家
という違いを理解すると、単純な「円買い・円売り」だけでは見えなかった市場参加者の動きが見えてきます。
ただしIMMは為替市場全体でも、円キャリートレード全体でもありません。
ドル円、米国債利回り、株式市場などと組み合わせて観察することで、相場で何が起きているのかを考える材料として活用するとよいでしょう。

