日銀は25bp利上げで政策金利0.75%へ。だが植田会見で「次の利上げ」が見えにくく円安が継続。来週は来年度予算案と休暇で薄い市場が波乱要因。
今週(12/15〜12/19)の振り返り:日銀利上げより「植田会見」が円売りを誘発
今週のドル円は、米指標の弱さで一時154.39まで下押しした後、米金利上昇局面では155円台を回復し、週後半は日銀会合を睨みつつじり高基調となった。
19日(金)は日銀が25bpの利上げに踏み切ったが、発表後はむしろ円安が進み、ドル円は156円台へ上昇。NYでもそのまま続伸し、157.70で越週している。
ポイントは「利上げした事実」ではなく、利上げ後のガイダンスが市場の想定ほどタカ派ではなかった点である。声明文は、中心的見通しの確度が高まっている、実質金利は大幅なマイナス、改善に応じて引き上げ・緩和度合いを調整、など正常化再開を明確化していたが、植田総裁会見は抑制的で、「次の利上げタイミングやターミナルレートが霧の中に入った」というハト派な印象を与えてしまった。これにより海外勢を中心に円売りが強まり、円が全面安の展開となった。
なぜ「利上げしても円安が止まらない」のか:3つの背景
今回の円安は「利上げ不足」ではなく、(1)織り込み済み、(2)将来パスの不透明化、(3)財政・需給要因が重なった結果といえるだろう。
① 25bp利上げは事前に織り込み済みだった
今回の会合に先立って、報道ではいち早く25bpの利上げを伝えていた。市場はこれを広く織り込んでおり、材料出尽くしになりやすい局面であった。織り込まれているイベントは「結果」より「次の示唆」が重要になる。
植田日銀は、日銀金融政策決定会合での政策を新聞をはじめ事前にリークすることで市場との対話を図っていると思っている節がある。しかし、最近の会合をみるかぎり逆効果となっており、早めのリークはかえって市場の材料出尽くしによる円安を招く結果を招いている。
② 「次の利上げ」が見えにくく、円買いの確信が持てない
声明は継続利上げを示唆するが、会見トーンは「毎回がライブ(データ次第)」と受け取りにくく、次回以降の判断基準も良く分からなくなっている。円買いは「利上げの回数・速度」が見えるほど強くなるが、そこが曖昧だと円を積極的に買い戻しにくい。
加えて、声明でも触れられた通り実質金利は依然として大幅マイナスであり、金利差縮小による円高圧力は発生しているがまだ弱いという構図になりやすい。
③ 財政懸念と薄商いが、円安方向に値幅を出しやすい
日銀会合の余韻が残るなかで財政懸念に伴う根強い円安圧力があるなか、来週は欧米のクリスマス休暇で取引が薄くなるため材料次第では値幅が出やすいことがリスク要因として挙げられる。
来年度予算案(26日公表予定)が最大材料となり、積極財政が数字として意識されると国債売り→円売りにつながり得る。
来週(12/22〜12/26)の注目イベント:材料は「予算」と「植田講演」、米指標は軽め
来週は海外勢が休暇ムードに入りやすく、国内材料主導となろう。
注目イベント
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12/25:植田日銀総裁 講演(経団連)
会合から日が浅いが、足元の円安進行を受けて会見で語ったトーンの修正があるかに注目だ。 -
12/26:来年度予算案の閣議決定・公表(見込み)
歳出規模が大きいほど財政懸念が意識され、円安材料化し得る。 -
米国:7-9月期GDP(確報/速報扱いのリリース)、耐久財、CB消費者信頼感、新規失業保険など
指標自体はあるが、海外勢は休暇に入るためボラティリティの高間隣位は注意が必要だ。
テクニカル見通し
ドル円は11/20高値の157.89手前で越週している。オシレーターはやや弱気に傾いていたが、日銀のイベントで強い陽線が出たことで再び上昇トレンドへと復帰する初動のような形になってしまった。
今年の高値は158.87であるため、158円台は頭が重くなる展開が予想される。ファンダメンタルズとしてはさすがにこの水準は超えてこないとは思うが(思いたい)……
ただ、下がったところは買いたい向きが多いだろう。
週初は日銀のイベントを消化しつつ、押し目があるようなら買いで入ってすぐに利食い、という感じか。
クリスマス休暇を挟み東京時間以外は動かないことも予想される。相場としてはすでに来年と考えた方が良い。無理せずやることが大事だ。
注意点:年末特有の“薄い板”が最大リスク
- 流動性低下によるストップ巻き込み
欧米休暇入りで、普段なら小さな材料でも一方向に走りやすい。 - 予算規模ヘッドラインで長期金利が跳ねるリスク
数字が独り歩きし、国債売り・円売りが連鎖するパターンを警戒すべきである。 - 急速な円安が当局の警戒感を強める
急な円安は介入警戒を高めるとしており、158円台は上ヒゲが出やすい領域になり得る。
まとめ:利上げ後の焦点は「次の一手」ではなく「財政」と「コミュニケーション」
日銀は0.75%へと利上げをし正常化を再開したが、会見がハト派的な印象を与えてしまったため円買いの確信が弱まっている。会見のトーンの修正があるかには注目が集まるが、本邦の来年度予算案(財政懸念)が相場材料として意識されやすいだろう。
基本的には円安圧力がかかり続けるだろうが、158円台は上値が重い展開も予想される。薄商いの中、ボラタイルな相場展開が予想される。

