ドル円相場は4/22に140円を割り込む展開も見られたが、その後は143円台まで回復しており、25日のNY市場では一時144円を付けた。 短期的な底入れの兆しが見られる。これまで相場を揺るがせていた米政権によるFRB議長解任論や日米財務相会談への警戒感は和らぎつつあると言えよう...
ドル円相場は4/22に140円を割り込む展開も見られたが、その後は143円台まで回復しており、25日のNY市場では一時144円を付けた。
短期的な底入れの兆しが見られる。これまで相場を揺るがせていた米政権によるFRB議長解任論や日米財務相会談への警戒感は和らぎつつあると言えよう。
パウエルFRB議長解任発言とドル安圧力の緩和
今週、米政権高官の発言によりパウエルFRB議長の解任が検討されているとの報道が市場に波紋を呼び、ドル円は一時139.88円まで下落した。しかし、その後大統領自身が解任を否定したことで市場は安心感を取り戻し、ドルは22日から23日にかけて143円台前半まで急回復した。
この反発を支えたのは、米中通商交渉に対する楽観的な見方や、ベッセント米財務長官による「為替相場の水準目標はない」との発言である。24日の加藤財務相による会見でも、米国から円安是正の具体的な要求はなく、円高警戒が後退。結果としてドル円は円安方向へと進んでいる。
日米通商交渉は継続
米国による関税政策は継続しており、来週には赤澤経済再生担当相が再び訪米し、2回目の交渉が予定されている。日米間で何らかの合意が形成されるには時期尚早との見方もあり、交渉の本格化は5月中旬以降にずれ込む可能性が高い。
こうした中、為替相場への直接的な圧力は当面後退したといえるが、米国側が円安に対する問題意識を完全に捨て去ったわけではない。加藤財務相は「為替レートは市場で決定されるもの」との原則を再確認しつつも、「建設的な協議継続」を明言しており、引き続き米国の動向には警戒が必要である。
今週は米経済指標とFRBの金融政策に注目
本邦はGW期間となるが、この間に米国では重要な経済指標の発表が相次ぐ。
29日(火)のJOLTS、30日(水)の第1四半期GDP速報とPCE価格指数、さらに5月1日(木)のISM製造業景況指数、2日(金)の雇用統計などが控えており、市場の注目はこれらの結果に集中している。
この中でもとくにGDP成長率については、アトランタ連銀のGDPNow予測がマイナス成長を示唆しており、景気後退が懸念されている。ウォラーFRB理事も「労働市場が顕著に悪化すれば、利下げを支持する」との発言をしており、6月FOMCでの利下げ再開の可能性が市場に意識され始めている。
日銀金融政策決定会合
日本では、4月30日から5月1日にかけて日銀金融政策決定会合が予定されている。
現時点で追加利上げの可能性は低いと見られており、市場では政策の据え置きがコンセンサスである。焦点は「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の内容に移っており、成長率や物価見通しの下方・上方修正の方向性が注目される。
都区部の消費者物価指数が市場予想を上回るなど、物価上昇圧力は依然として根強いものの、関税の影響を見極める姿勢が示される可能性が高い。
また、日銀は今後国債買入の減額に関する「中間評価」を実施する予定であり、金融政策の正常化が段階的に進む見通しである。
140円台を下値として意識
現時点でドル円は、140円割れ目前での反発を経て143円台後半で推移している。短期的には底打ちした可能性が高く、予想レンジは「142.00~145.54」あたりか。
3月下旬から3週連続で陰線が出ており、やや下げすぎたところでの反発ということもあり、140円台前半は強い支持帯として意識されるだろう。今後の展開次第では節目となる145円へのトライも視野に入る。
ただし、今週発表される米国の経済指標が軒並み弱含みとなった場合には、再びドル安圧力が強まる可能性もあり、140円割れを試す展開も排除できない。引き続きボラティリティの大きい事態となろう。