ドル円は停戦期待で下落後、トランプ発言と原油高で159円台後半へ反発。来週は米CPI、FOMC議事要旨、日銀利上げ観測、為替介入警戒が焦点。
2026年4月第1週のドル円相場は、停戦期待によるドル売りと、その後の巻き戻しによるドル買いが交錯し、160円を挟んで往来相場となった。
来週(2026/4/6〜2026/4/10)も、テーマの中心は変わらない。すなわち、
- 中東情勢(とくにイラン・ホルムズ海峡関連)
- 原油価格
- 日本当局の介入警戒
- 米CPIを中心とした米インフレ指標
- 日銀の4月利上げ観測
である。
結論から言えば、来週のドル円は「上は160円台で介入警戒、下は157円台で押し目買い」という構図になりやすく、値幅の大きいレンジ相場が続く可能性が高いだろう。
今週(2026/3/30〜2026/4/3)の振り返り
停戦期待で下げ、演説で戻す「往って来い」の1週間
今週のドル円は、160.14円で寄りついたものの、日銀3月会合「主な意見」や三村財務官の円安けん制発言などを受けて160円を割り込んだ。31日(火)には、トランプ大統領が停戦に前向きとの報道と、それに対するイラン側の反応をきっかけにドル円は下落。1日(水)に一時158.27円まで下落した。
ところが、この流れは長続きしなかった。
2日のトランプ大統領演説では、表向きは「勝利宣言」をしつつも、実際には今後2〜3週間はイランに激しい攻撃を加えるとの姿勢が示され、市場は「停戦が近い」という見方を後退させた。これにより、
- ホルムズ海峡封鎖長期化への懸念
- 原油価格の再上昇
- 安全資産・ドルへの資金回帰
が進み、ドルが買われることでドル円は再び上昇した。
地政学リスクに対する市場の期待と失望の往復という一週間であった。
今のドル円を動かしている本質は「金利差」だけではない
通常、ドル円は「日米金利差」で語られやすい。ニュースなどでエコノミストがこのキーワードで円安を解説している姿もよく見る。
しかし、足元ではそれだけでは説明しきれない。 今のドル円を押し上げているのは、主に次の3つである。
① 原油高=日本にとっての円安要因
中東情勢の悪化は、まず原油価格を押し上げる。 日本はエネルギー輸入国であるため、原油高は
- 輸入コスト上昇
- 貿易収支悪化
- 企業収益の圧迫
- 家計負担増
につながりやすく、構造的に円安圧力を生みやすい。
為替の長期のファンダメンタルズとしては経常赤字は通貨安を引き起こす。日本は目先経常黒字となっているが、これが再び経常赤字に転落するのではないかという先読みからドル円がなかなか下がらない状況になっていると考えられる。
② ドルは「安全資産」として買われやすい
戦争・地政学リスクが強まると、本来なら「円買い」も起こりうるが、今回は
- 中東発のエネルギーショック
- 原油高による日本経済への打撃
- 米国が軍事・外交の中心にいること
から、ドルがより強く買われやすい地合いになっている。以前は円売りを主体としたドル円の上昇だったが、現在はドルを主体としたドル円の上昇とみられる。
片山財務大臣は口々に「投機筋」という言葉を出すが、現在の動きはファンダメンタルズに沿った動きと言える。私は投機筋主体の相場とは思えない。
③ 日本当局が円安を止めきれていない
160円台に入ったことで、日本当局の警戒感はかなり強い。 実際、今週は三村財務官に加え、片山財務相も「必要なら措置を取れる」と発言しており、けん制は明確に強まっている。
ただし、現時点では口先介入だけで流れを変える力は弱くなっているのも事実である。この理由は先ほど述べたとおり、ドルが主体となったドル円上昇だからだ。
来週(2026/4/6〜2026/4/10)の注目イベント
来週のドル円は、ニュースヘッドライン相場であることに加え、週後半に向けて米インフレ指標が主役となる。来週は、ISM非製造業、FOMC議事要旨、米CPIが重要材料として注目されるだろう。
1. 4/6(月) 米ISM非製造業景気指数
市場予想は54.9。 前回の56.1から鈍化予想であり、ここが弱いと「米景気減速」への警戒が強まり、ドル円の上値を抑える可能性がある。
ただし、今の市場では「景気が少し弱い」だけではドルが大きく売られにくい。 なぜなら、景気減速よりもまず地政学リスクとインフレ再燃が意識されているからである。
2. 4/8(水) FOMC議事要旨
3月会合時点でFRBがどの程度、今回の中東リスクによるインフレリスクを意識していたかが焦点といえる。
もし議事要旨で
- 「原油高を一時的とは見ていない」
- 「利下げ再開を急ぐ必要はない」
というニュアンスが強ければ、ドル円は再び上を試しやすい。
逆に、雇用減速や金融システム不安への懸念が強く示されれば、ドルの勢いはやや削がれやすい。米雇用の減退と金融システムへのストレスが顕在化した場合は、ドル相場の重要な下押し要因となり、その場合はドル円の下押し圧力となろう。
3. 4/10(金) 米CPI
来週最大のイベントは、間違いなく米3月CPIである。
予想は前年比3.4%と、前回の2.4%から大きく上振れる見通しになっている。これは、中東情勢を受けたエネルギー価格上昇の影響を反映した数字と考えられる。
この数字が市場予想を上回れば、
- FRBの利下げ期待がさらに後退
- 米金利上昇
- ドル買い加速
- ドル円160円再突破
という流れになりやすい。
一方で、CPIが予想ほど強くなければ、市場は
「原油高インフレは一過性で、結局は景気減速が勝つのではないか」
という見方に傾きやすく、その場合はドル円が円高方向へ反落する可能性もある。
日銀の4月利上げ観測は、来週さらに高まるか
来週は日本側でも見逃せない材料がある。
それが、日銀支店長会議と地域経済ヒアリングである。
3月会合の日銀の「主な意見」からは、
- 基調的な物価上昇率が2%超で推移するリスク
- 中小企業の賃上げ姿勢の持続
- 利上げを躊躇すべきではないとの見方
が散見されている。
さらに、短観でも
- 人手不足による賃金上昇圧力
- これまでの利上げでも金融環境に大きな悪化なし
が確認されている。このことから、4月末の日銀会合に向けて、追加利上げ観測が再び高まりやすい地合いにあると言える。
ドル円にとっては短期的には円買い材料と言えるが、現状では日銀が利上げしても、それ以上に原油高・ドル高圧力が強いという構図になっており、円高が持続トレンドになるにはまだ材料不足である。
テクニカル見通し
ドル円は週足でも僅かに上値更新をしたことから、今週もう一度上方向を試す可能性が高いだろう。
オシレーターはすでに上昇モメンタムを失っているものの、移動平均線の傾きを見る限り参加者のポジションはまだまだロングに傾いているように見える。下がれば常に買われるという地合だが、日柄調整をしながら20日移動平均線の傾きが落ち着いてくればそれに伴って円高方向へと落ちていくだろう。
レンジ相場を意識し、引きつけて買う、引きつけて売る、やがてレンジの範囲が狭まっていくことを確認しながらこまめな回転を行う週となろう。
まとめ:来週のドル円は「160円攻防」が再び主戦場
今週のドル円は、停戦期待で売られ、戦闘長期化懸念で買い戻されるという往来相場だった。来週もその延長線上にあるものの、米国のインフレ指標と日銀の4月利上げ観測がこれに加わることで難しい動きとなるだろう。
目先はドル買いによる上方向への圧力が強いが、160円を超えていく場面では本邦の警戒感も非常に強いだろう。
大きくポジションを傾けづらい展開が予想される。

