2025年に入り、中東地域での地政学リスクが再び世界の金融市場を揺さぶっています。とくに イスラエルとイランをめぐる緊張の高まり は、投資家心理を大きく左右しており、為替市場でも安全資産への資金シフトが見られる状況です。 しかし、ここで注目すべきなのは、「逃避先」としての通貨...
2025年に入り、中東地域での地政学リスクが再び世界の金融市場を揺さぶっています。とくにイスラエルとイランをめぐる緊張の高まりは、投資家心理を大きく左右しており、為替市場でも安全資産への資金シフトが見られる状況です。
しかし、ここで注目すべきなのは、「逃避先」としての通貨の選ばれ方が、これまでと少し変わってきている点です。
中東リスクと市場の反応
2025年4月以降、イスラエルとイランの間で武力衝突の可能性が高まったことを受けて、株式市場では一時的な調整が進み、リスク回避モード=リスクオフの動きが強まりました。
本来であればこうした局面では、「ドル買い」が進むのが通例ですが、今回は異なる様相を呈しています。
安全通貨として再評価される「円」や「ユーロ」
実際に今回のリスクオフ局面で買われたのは、**日本円やユーロ、そして金(ゴールド)**でした。とくに円は、長年「世界最強の安全通貨」とされてきた実績もあり、米ドルよりも優先的に買われる場面が目立ちました。
ユーロについても、欧州圏内に地政学的リスクが直接波及しにくいと見られていることから、リスク回避先として一定の需要が戻りつつあります。
ドルが「逃避先」から外れ始めた理由
① 米国の財政不安
米国では財政赤字の拡大が続き、2025年にはGDP比赤字が再び6%を超える水準と予測されています。巨額の国債発行が続き、ドルの長期的な信認に疑問符がついています。
② 政治リスクの高まり
大統領選を控える中で、米国の政治的な不確実性も高まっており、「政治の安定性」=「通貨の信頼性」という構図が揺らいでいます。
③ リスク回避で金利差が逆効果に
リスクオフ時に米国の長期金利が低下する一方で、ドルは高金利通貨であるがゆえに、リスク資産的に見られる場面もあります。ドル=安全資産ではなく、ドル=高金利リスク資産という見方が広がっているのです。
投資家が注目すべき通貨とは?
以下の通貨・資産が、今後のリスク局面における有力な逃避先として注目されています。
資産・通貨 | 特徴 |
---|---|
日本円(JPY) | 政治・経済の安定、対外債権国 |
ユーロ(EUR) | ECBの安定的金融政策、相対的な地政学的距離 |
金(Gold) | 非通貨型資産としての逃避需要 |
スイスフラン(CHF) | 伝統的なセーフヘブン通貨 |
おわりに:新しい「安全資産時代」へ
2025年の為替市場は、単純な「ドル一強」の構図では語れない複雑さが出てきています。中東リスクのような突発的な地政学リスクが生じたとき、どこに資金が流れるかは、過去とは異なる動きを示すかもしれません。
「ドルは本当に安全資産なのか?」という問いを改めて見直すことが、今後の相場における重要な視点となりそうです。