2025年5月第4週のドル円相場は、米国の金利上昇と「円安是正」観測が交錯する中、週初は145円台に乗せる場面があったものの弱い展開が続き、142円半ばで越週した。 来週は、米国のPCEコアデフレーター(FRBが重視するインフレ指標)や、日銀幹部の発言ラッシュが予定されており...
2025年5月第4週のドル円相場は、米国の金利上昇と「円安是正」観測が交錯する中、週初は145円台に乗せる場面があったものの弱い展開が続き、142円半ばで越週した。
来週は、米国のPCEコアデフレーター(FRBが重視するインフレ指標)や、日銀幹部の発言ラッシュが予定されており、為替相場が大きく動意づく可能性がある。ここでは、主要な展開材料を整理しながら、2025年5月最終週のドル円見通しを解説する。
日米財務相会談で「円安是正」明言なしも、警戒継続
週明けは、米中関税引き下げの好感を背景にドル買い優勢で始まり、ドル円は一時145円台半ばまで上昇した。しかし、20年物日本国債入札の不調を受けて長期金利が急騰すると、リスクオフの円買いが進行。さらに米国でも国債入札が不調に終わり、米株・米債・ドルの「トリプル安」となり、ドル円は143円台へ下落した。
日米財務相会談では、「為替水準については議論せず」と明言されたものの、米国側が「ドル円はファンダメンタルズに沿った水準」と評価したことを取り上げており、これは暗に「円安は過度ではない」との含みとも解釈できる。
ただ、一部報道では米韓通商交渉で「為替の方向性」への言及があったことに触れ、日米間でも実質的な為替協議が行われた可能性を指摘している。市場では「円安是正」の観測が根強く残っており、ドル円の上値は引き続き重い。
来週のポイント①:日銀関係者の発言ラッシュ
来週は、27日から28日にかけて日銀が主催する国際会議が開催され、植田総裁、副総裁2名が発言する予定である。また、会合にはFRB幹部も出席し、日米金融政策の方向性が注目される。
前週発表された日本の全国消費者物価指数(CPI)は、エネルギー・生鮮食品を除く「コアコアCPI」が+3.0%と1年ぶりの高水準となった。これは日銀の「物価安定の目標」超えであり、金融政策の正常化を後押しする材料である。
仮に日銀幹部から「さらなる利上げ」「国債買入減額加速」などの前向きなコメントが出れば円買いが進み、ドル円は一段安となる可能性もある。
来週のポイント②:米PCEコアデフレーターと個人消費の行方
5月31日(金)に発表される米4月PCEコアデフレーターは、FRBが最重視するインフレ指標である。予想中央値は+2.5%(前年比)で、前月の2.6%からやや低下する見込みとなっている。
仮にこの指標が予想を下回る結果となれば、米国の利下げ観測が再燃し、ドル売りにつながる可能性がある。一方、個人支出や所得が底堅く推移すれば、「景気は悪くない」という見方が広がり、ドル高方向への反応も想定される。
なお、週初(27日)は米英市場が祝日で休場となるため、相場は閑散の中で材料難の値動きとなるが、週後半にかけてはイベントが目白押しで、再びボラティリティが高まる可能性がある。
テクニカル分析と予想レンジ
ドル円は5/6安値である142.35をぎりぎり割らない142.55で越週しており、来週の5月最終週を前に5月の上昇分をすべて吐き出した形となっている。
やや長い目で見ると4/22安値139.88〜5/12高値148.64のレンジ内で推移しているものの、オシレーターはMACDがデッドクロス、RSIも50を割り込み再び下落基調に移行しつつあり、かなり弱さが目立つ。
ドルインデックスも100を割り込んでおり、ドル自体も弱いことを考えると週後半の日銀の動向によっては再び140円を試す展開にも注意が必要だ。
基本的には戻り売りとなるだろうが、上値は5/12高値の148.64まであることには注意が必要。
まとめ:イベント警戒のもと様子見ムードも、週後半に再び波乱の展開か
2025年5月最終週のドル円相場は、前半は材料難から様子見ムードが広がる一方、後半には日銀幹部発言や米PCEデフレーターを受けて、相場が大きく振れる可能性がある。月末ということもあり、とくに週後半のロンドンフィックスの時間帯は価格が大きく変動することもあるので注意が必要だ。
「円安是正」観測が引き続きドル円の重石となる一方で、日本の物価上昇や日銀の政策スタンスが円高をサポートする可能性もあり、方向感は出にくい状況が続くだろう。
きっかけをもとにレンジが突破された場合、そちらの方向に大きく動く可能性もある。節目を意識し、リスク管理をしながらチャートを注視する必要がある。