2025年5月第3週のドル円相場は、米中通商交渉の進展により148円台に乗せた場面もあったが、米韓の為替協議を発端とした「円安是正」への警戒感や弱めの米経済指標を受けて145円台まで押し戻されている。 来週はG7財務相会合を控え、日米協議での為替言及リスクに市場の注目が集ま...
2025年5月第3週のドル円相場は、米中通商交渉の進展により148円台に乗せた場面もあったが、米韓の為替協議を発端とした「円安是正」への警戒感や弱めの米経済指標を受けて145円台まで押し戻されている。
来週はG7財務相会合を控え、日米協議での為替言及リスクに市場の注目が集まる。
一時148円台も、ドル高続かず
ドル円は週初こそドル買いが強まり一時148円台を回復したものの、14日に米韓が為替協議を行ったとの報道が伝わると、日米財務相会談に向けた「円安是正」圧力への警戒感が再燃。ドル円は急落した。
さらに米4月CPI・PPI・小売売上高といった経済指標がいずれも弱めの結果となったこともあり、ドルは売られ145円台前半まで調整された。
FRB高官らは「利下げは時期尚早」との見解を維持しているものの、市場ではスタグフレーション懸念が後退し、利下げの可能性が後ろ倒しされるとの見方が広がっている。
G7財務相会合での「為替発言」リスク
来週最大のイベントは、5月20〜22日に開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議である。加藤財務相は会見で「ベッセント米財務長官との個別会談を調整中」と明言しており、ここで為替問題が取り上げられる可能性が市場の警戒材料となっている。
米国側は韓国との間ですでに「為替介入」や通貨安誘導への懸念を表明しており、日本に対しても同様の立場を示す可能性があるという。
ただし、明確な数値目標や是正要請が提示される可能性は低く、内容が限定的であれば、会合後は「材料出尽くし」となり円売り・ドル買いに転じる展開もあり得る。
日銀の債券市場ヒアリングとCPI発表
日銀は20日・21日に債券市場参加者との会合を予定しており、これは6月会合での国債買入減額に向けた中間評価の一環と位置付けられる。ここで市場参加者から「減額加速」の声が強まれば、日本の長期金利が上昇し、円買い圧力につながる可能性もある。
また、23日には4月の全国消費者物価指数(CPI)が発表される。コアCPI(除く生鮮食料)やコアコアCPI(除く生鮮・エネルギー)が前年同月比で3%を超える水準にとどまる場合、日銀の追加利上げへの思惑が再浮上し、円高要因となり得る。
米国の景気減速懸念とドルの方向性
米国では主要な経済指標は少ないものの、23日に発表される中古・新築住宅販売件数や週次失業保険申請件数に注目が集まる。住宅指標の弱さが際立てば、足元の景気減速懸念が再燃する可能性がある。
さらに、週末には複数のFRB高官による講演が予定されており、政策スタンスが市場予想と乖離した場合にはドルの上下に影響を与える可能性がある。
一時的な調整も反発の可能性
ドル円は16日に一時145円を割り込む場面があったものの反発し、NY時間に146円まで付ける場面があったものの145円台で越週した。
テクニカル的には5/6安値(142.35)から5/12高値(148.64)の61.8%戻しとなっており、142円が依然サポートラインとして意識されている。 先週付けた上値の148.64台は週足の20日移動平均線であり、ちょうどここで売られた形だ。いったん上ヒゲ陰線となっており、下で買われて上昇してもこの戻り高値を超えていくのは並大抵のことではない。
ポジションを傾けにくい状況ではあるが、週初めは押し目買いで入り、こまめに利食いするのもいいかもしれない。ただし、長期トレンドはドル売り、円買いに変わりつつあることには留意したい。
円安是正観測が上値を抑えるも、材料出尽くしで反発の余地も
日米財務相会談における「円安是正」発言への警戒感が高まりやすい週となる。ただし、内容が限定的にとどまれば、市場は「円高バイアスの解消」を見越して再びドル買いに動く可能性もある。
一方、日銀イベントやCPI、米住宅指標の内容によっては、円高圧力が強まるリスクも内包しており、全体としては「下値は限定的だが上値も重い」展開が想定される。
リスク管理をしつつ、こまめな利食いが求められるだろう。