2025年5月第2週のドル円相場は、米中通商協議の進展期待やFOMC後のドル買いによってドル高円安が進行した。週後半には一時146円台を突破し、約1か月ぶりの高値水準を回復した。 ただし、米金利の見通しや米中・米英通商動向に対する市場の期待が先行した面もあり、来週はイベントリ...
2025年5月第2週のドル円相場は、米中通商協議の進展期待やFOMC後のドル買いによってドル高円安が進行した。週後半には一時146円台を突破し、約1か月ぶりの高値水準を回復した。
ただし、米金利の見通しや米中・米英通商動向に対する市場の期待が先行した面もあり、来週はイベントリスクに注意すべき局面といえるだろう。
ドル円は一時146円まで回復
本邦がゴールデンウィーク中で市場参加者が少ないなか、5日にベッセント米財務長官らが米中通商交渉に言及したことから交渉進展への期待が広がった。しかし、ドル円は一時142円台半ばまで下落し、ドル安地合いが続いた。
その後、7日に米中閣僚級会談の開催が報じられるとドル円は反発。続くFOMCでは利下げが見送られ、パウエル議長が「当面の利下げは想定していない」と発言したことで、ドルは堅調に推移し144円台を回復した。
8日には米英が通商協定で合意との報道が好感されドル買いが加速。ドル円は急騰し、9日には一時146円台前半まで上昇した。
146円台では上値の重さも意識され、週末には145円台半ばまでやや押し戻されている。
米中通商交渉の行方
週末にかけて開催された米中閣僚級協議は合意には至らなかったものの、交渉継続の意思が確認された。市場では交渉進展への期待が引き続き根強いが、トランプ政権の対中強硬姿勢や関税政策が再燃する可能性もあり、内容次第では失望売りに転じるリスクもある。
中国側は人民元安を抑制しながらも、輸出振興策として利下げや金融緩和姿勢を強めており、人民元相場とドルの動向も間接的にドル円に影響を及ぼす点には注意したい。
米国のインフレ指標とFRB高官の発言
13日(月)には米4月のCPI(消費者物価指数)、15日(水)には小売売上高やパウエルFRB議長の講演が控えている。ここ数か月、米経済指標は景気減速の兆しを見せる一方で、インフレは落ち着きつつある。
米政権の関税引き上げが供給制約を招き、一時的なインフレ再加速を引き起こす可能性もあるが、FRBはあくまで「利下げは時期尚早」とのスタンスを維持している。
仮にCPIや小売指標が市場予想を下回れば、7月FOMCでの利下げ観測が再燃し、ドル円の上値を抑える材料となりうる。
日銀からの新たな材料は限定的か
日銀は13日(月)に5月1日に行われた金融政策決定会合の「主な意見」を公表する。会見後の市場評価は「ハト派的」とされており、特段のサプライズがない限り、円買い材料にはなりにくいと見られている。
中村審議委員による16日(木)の講演も予定されているが、同氏はハト派の立場として知られており、市場への影響は限定的とみられる。
テクニカル分析と予想レンジ
ドル円はいったん上昇の一服感が出ているが、引き続き堅調な値動きが予想される。8日の上昇起点となる144円あたりが下値として意識されやすいだろう。上値は4月高値の148.28円が意識されやすい。
来週は米CPI・小売売上高などの重要指標が控えており、相場の転換点となるリスクも孕んでいる。引き続きボラティリティの高い相場となりそうだ。