AT&T(T)とVerizon(VZ)を2026年の最新業績で比較。配当利回り、増配実績、光ファイバーなどの成長性、キャッシュフロー、財務、リスクから高配当米国株としてどちらが向いているか解説します。
米国株の中でも、高配当銘柄として長く人気を集めているのがAT&T(T)とVerizon Communications(VZ)です。
どちらも米国を代表する通信大手で、携帯電話やブロードバンドなど生活に欠かせない通信インフラを提供しています。
一見すると似た企業ですが、2026年現在では投資対象としての性格に違いが出てきています。
Verizonは約6%の配当利回りと20年連続増配という実績を持つ一方、AT&Tは2022年の減配以降、配当を据え置きながら、光ファイバーなどへの投資と自社株買いを強化しています。
この記事では、2026年第2四半期までの最新決算をもとに、配当、成長性、キャッシュフロー、財務、株主還元の5つの視点からAT&TとVerizonを比較します。
AT&TとVerizonの基本情報を比較
2026年8月10日時点の株価は、AT&Tが24.05ドル、Verizonが47.03ドルです。
現在の四半期配当から計算すると、AT&Tの年間配当は1.11ドル、Verizonは2.83ドルとなります。これを現在の株価で単純計算すると、配当利回りはAT&Tが約4.6%、Verizonが約6.0%です。
| 項目 | AT&T(T) | Verizon(VZ) |
|---|---|---|
| 株価※ | 約24.05ドル | 約47.03ドル |
| 年換算配当 | 1.11ドル | 2.83ドル |
| 配当利回りの目安 | 約4.6% | 約6.0% |
| 連続増配 | 2022年の減配後は据え置き | 20年連続 |
| 2026年調整後EPS見通し | 2.25~2.35ドル | 4.99~5.04ドル |
| 主な成長分野 | 光ファイバー・固定無線・モバイル | モバイル・光回線・固定無線 |
| 2026年自社株買い計画 | 約100億ドル | 最大45億ドル |
※株価は2026年8月10日時点。
AT&Tの2026年調整後EPS見通しは2.25~2.35ドルで、Verizonは4.99~5.04ドルです。
ここからわかるのは、現在の両社は「高配当通信株」という同じカテゴリーにありながら、株主還元の方法がかなり違っていることです。
配当利回りではVerizonが優位
現在の配当収入を重視するなら、Verizonの方が魅力があります。
Verizonは2026年現在、四半期0.7075ドルの配当を支払っており、年換算では2.83ドルです。現在の株価を基準にすると配当利回りは約6%になります。
さらにVerizonは20年連続で増配しています。
増配幅そのものは大きくありませんが、「毎年少しずつでも配当を増やしてきた」という実績は、長期のインカム投資では重要です。
一方、AT&Tは2022年のWarnerMedia分離に伴って四半期配当を0.52ドルから0.2775ドルへ減額しました。それ以降、配当は0.2775ドルで据え置かれています。
現在のAT&Tは配当を増やすより、ネットワーク投資、負債管理、自社株買いへ資金を配分する方針です。
現在の配当利回りと増配実績を重視するなら、Verizonが明確に優位です。
配当の「余力」はAT&Tにも魅力
ただし、配当利回りだけを見るとAT&Tの魅力を見落とします。
AT&Tは2026年の調整後EPSを2.25~2.35ドルと予想しており、年間配当1.11ドルは予想EPSの約半分に相当します。会社は2028年まで年間1.11ドルの配当を維持する計画を示しています。
一方、Verizonの現在の年換算配当2.83ドルを2026年調整後EPS予想4.99~5.04ドルと比較すると、配当性向の目安は5割台半ばになります。
どちらも現時点の利益水準から見ると、配当が極端に無理な水準には見えません。
ただし、AT&Tの場合は2022年に実際に減配した歴史があります。
そのため「長期間安心して増配を受け取りたい」という投資家にとっては、やはりVerizonの実績の方が評価しやすいでしょう。
2026年はAT&Tの成長が目立つ
2026年第2四半期のAT&Tは、売上高316億ドルで前年同期比2.3%増、調整後EPSは0.65ドルで前年同期の0.54ドルから20.4%増加しました。
フリーキャッシュフローも47億ドルと、前年同期の44億ドルから増えています。
好調なのが、光ファイバーと固定無線です。
第2四半期には光ファイバーで36.7万件、固定無線で27.9万件の純増となり、ポストペイド携帯電話も43.2万件増加しました。光ファイバーが利用可能な拠点は3860万か所まで拡大しています。
AT&Tは2026年末までに光ファイバー到達拠点を4000万か所超、2030年末までには6000万か所超へ拡大する計画です。
これは2025年版の記事から大きく変わったポイントです。
現在のAT&Tは「メディア事業も抱える通信会社」ではなく、モバイルと高速インターネットを中心とする通信インフラ企業として見る方が実態に合っています。
AT&Tの強みは「通信をまとめて契約する顧客」
AT&Tが力を入れているのが、スマートフォンと自宅インターネットの両方をAT&Tで契約する顧客です。
2026年第2四半期では、AT&Tの高速ホームインターネットを利用する世帯の42.5%がAT&Tのワイヤレスサービスも契約していました。
これは通信会社にとって重要です。
携帯電話だけを契約している顧客より、
スマートフォン+自宅インターネット
をまとめて利用している顧客の方が、他社へ乗り換えにくくなるからです。
光ファイバー投資は単にインターネット事業を伸ばすだけではなく、携帯電話事業の顧客維持にもつながります。
現在のAT&Tの成長戦略を理解するうえで、この「モバイルと光回線の融合」は重要なポイントです。
Verizonも2026年に業績が改善
一方、Verizonも2026年にかなり強い業績を見せています。
第2四半期のモバイル・ブロードバンドサービス収入は約234億ドルで前年同期比2.8%増加しました。
携帯電話のポストペイド契約は18.4万件増加し、ブロードバンドは34.8万件の純増となっています。
ブロードバンド純増の内訳は、
- 固定無線:19.3万件
- 光ファイバー:15.5万件
です。
総売上高は343億ドルと前年同期比0.7%減少しましたが、これは端末販売収入が約20%減少した影響が大きく、サービス収入そのものは成長しています。
調整後EBITDAは前年同期比7.2%増の137億ドルとなり、会社として過去最高を記録しました。調整後EPSも1.30ドルと前年同期比6.6%増加しています。
つまり2026年のVerizonは、「成長しない高配当株」という状態から少し変わり始めています。
キャッシュフローではVerizonも強い
Verizonの2026年上期フリーキャッシュフローは102億ドルで、前年同期比16%増加しました。
第2四半期だけでも64億ドルとなり、前年同期比24.4%増加しています。
この結果を受け、Verizonは2026年のフリーキャッシュフロー成長率見通しを前年比9~10%増へ引き上げました。
高配当株では、EPS以上にフリーキャッシュフローが重要になる場合があります。
配当金は最終的には現金で支払うためです。
その点、2026年のVerizonは配当を支えるキャッシュ創出力も改善しています。
株主還元ではAT&Tが自社株買いを積極化
2026年のもう1つの大きな変化が、AT&Tの自社株買いです。
AT&Tは2026年の自社株買いを約100億ドルへ加速させる計画で、2026~2028年には配当と自社株買いを合わせて450億ドル以上を株主へ還元する方針です。
一方、Verizonも2026年に自社株買いを再び進めており、上期までに35億ドルを実施しました。通年目標は最大45億ドルへ引き上げられています。
ここには両社の違いがよく表れています。
Verizon → 高い配当+緩やかな増配+自社株買い
AT&T → 中程度の高配当+配当据え置き+大規模な自社株買い
という構図です。
インカムゲインを重視するならVerizonですが、EPS成長や自社株買いまで含めたトータルリターンを考えるなら、AT&Tも非常に興味深くなっています。
財務ではどちらが優れている?
通信会社は大規模な基地局や光ファイバー設備を必要とするため、両社とも多額の負債を抱えています。
2026年第2四半期末のAT&Tの純有利子負債は1264億ドルで、純有利子負債/調整後EBITDA倍率は約2.68倍でした。
Verizonの第2四半期末の純無担保債務は1287億ドルで、調整後EBITDAに対する倍率は2.5倍でした。
両社で債務の定義が完全に同じではないため単純比較はできませんが、2025年版の記事にあった「Verizonは財務が安定、AT&Tは財務改善中」というほど大きな差ではなくなっています。
現在は、どちらも巨額の負債を抱えながら、強いキャッシュフローを使って管理している通信大手と考える方が実態に近いでしょう。
AT&TとVerizonに共通するリスク
両社には共通したリスクもあります。
まず、通信市場は成熟しており、顧客数が無限に増える市場ではありません。
そのため、新規契約を奪い合うだけでなく、既存顧客をどれだけ維持できるかが重要になります。Verizon自身も、価格、販促、ネットワーク品質、消費者の嗜好変化などを競争上のリスクとして挙げています。
また、5G、光ファイバー、固定無線などへの設備投資を続ける必要があるため、両社とも資本集約的な企業です。
金利上昇によって借入コストが増えれば、キャッシュフローや株主還元に影響する可能性があります。
さらに、T-Mobileなどとの価格競争が激しくなれば、顧客獲得のための販促費が増え、利益率が低下する可能性があります。
2026年時点ではどちらを選ぶ?
それまでは、安定配当ならVerizon、成長回復ならAT&Tという印象でした。
2026年になって、この構図はさらに明確になっています。
配当を最優先するならVerizon
Verizonは現在約6%の配当利回りがあり、20年連続増配という実績もあります。
さらに2026年はフリーキャッシュフローや調整後EPSも改善しており、配当を支える本業も強くなっています。
そのため、「できるだけ高い配当を受け取りながら長期保有したい」という投資家にはVerizonの方が分かりやすい選択肢です。
成長と株主還元の両方を見るならAT&T
一方、AT&Tは現在の配当利回りではVerizonにおよびません。
しかし、光ファイバー、固定無線、携帯電話を組み合わせた成長戦略が成果を出し始めています。
2026年は調整後EPS2.25~2.35ドルを見込み、その後2028年までの3年間では調整後EPSを年平均2桁成長させる計画です。フリーキャッシュフローも2026年180億ドル以上、2027年190億ドル以上、2028年210億ドル以上を見込んでいます。
さらに大規模な自社株買いも計画されています。
そのため、
「配当も欲しいが、EPS成長や株価上昇も狙いたい」
という投資家にはAT&Tが面白い銘柄です。
AT&TとVerizonの比較まとめ
| 比較項目 | 優位な銘柄 | 理由 |
|---|---|---|
| 現在の配当利回り | Verizon | 約6%とAT&Tを上回る |
| 増配実績 | Verizon | 20年連続増配 |
| 配当の予測しやすさ | Verizon | 長期間の増配実績 |
| 業績成長 | AT&T | 光ファイバーを中心に成長 |
| 自社株買い | AT&T | 2026年約100億ドルを計画 |
| フリーCF | 互角 | 両社とも改善傾向 |
| 財務 | ほぼ互角 | レバレッジはともに2倍台 |
| 株価上昇余地を狙う | AT&T | EPS成長と買い戻しがポイント |
| インカム重視 | Verizon | 高い利回りと増配実績 |
まとめ|2026年は「配当のVZ、成長+還元のT」
AT&TとVerizonはどちらも米国を代表する通信企業ですが、2026年時点では投資対象としての性格がかなり明確になっています。
Verizonは、高い配当利回りと20年連続増配が最大の魅力です。
2026年には業績とフリーキャッシュフローも改善しており、長期の配当収入を重視する投資家にとって引き続き有力な選択肢です。
一方のAT&Tは、2022年の減配後に事業構造を大きく変え、現在は光ファイバーとモバイルを中心とする通信企業へと変化しています。
配当は据え置きですが、EPS・フリーキャッシュフローの成長と、大規模な自社株買いを計画しています。
したがって2026年現在は、
配当収入を最優先するならVerizon(VZ)
配当を受け取りながら利益成長と株価上昇も期待するならAT&T(T)
という選び方が分かりやすいでしょう。
どちらが絶対的に優れているというより、「何を目的として保有するか」によって選ぶべき銘柄が変わるというのが、現在のAT&TとVerizonの比較から見えてきます。
