トランプ大統領による相互関税導入は、米国経済のみならず世界経済に対しても深刻な影響を与えている。インフレ率の上昇、経済成長の減速、金融市場の混乱といった複数のリスクが顕在化している。 米国の相互関税とは何か? 2025年4月2日、トランプ大統領は「相互関税(Reciproc...
トランプ大統領による相互関税導入は、米国経済のみならず世界経済に対しても深刻な影響を与えている。インフレ率の上昇、経済成長の減速、金融市場の混乱といった複数のリスクが顕在化している。
米国の相互関税とは何か?
2025年4月2日、トランプ大統領は「相互関税(Reciprocal Tariffs)」と呼ばれる新たな関税措置の発動を発表した。これにより、米国はすべての輸入品に対して最低10%の関税を課し、特定の国々には追加的な税率を適用する方針を示した。
この動きは、米国経済のみならず、世界経済全体に対しても多大な影響を及ぼしている。
相互関税措置の概要
今回の関税措置では、対米貿易黒字が大きい国々に対して、基本の10%に加えて高率の追加関税が課される。たとえば、中国からの輸入品には34%、日本からの輸入品には24%の関税が課される予定である。
経済への影響
この政策により、輸入品の価格上昇が避けられず、結果としてインフレーションの進行が懸念されている。一部試算によれば、米国のインフレ率は4%を超える可能性があり、生活コストの上昇や企業収益への影響が顕著になると予想されている。
また、関税によるコストの増加は企業活動の縮小を引き起こし、経済成長を抑制する要因となる。これにより、インフレと景気停滞が同時に発生する「スタグフレーション」のリスクが高まっている。
金融市場の反応と住宅ローンへの影響
関税発表後、米国の主要株価指数は大きく下落した。S&P500指数は一時的に弱気相場入りし、投資家心理に大きな影響を与えた。また、米国の長期国債利回りも急上昇し、10年物国債利回りは4.3%に達している。これは、将来的なインフレ期待の高まりと、財政負担の増加への警戒が背景にある。
長期金利の上昇は、住宅ローン金利にも直結する。
とくに米国では30年固定型住宅ローンの金利が長期国債利回りに連動しており、今回の金利急騰により住宅ローン金利が7%台に達する水準にまで上昇している。これは、多くの家庭にとって住宅購入の負担を大きくし、月々の支払い額が数百ドル単位で増加する可能性があることを意味する。
また、借入コストの増加は住宅購入意欲の減退につながり、不動産市場の冷え込みを招く恐れがある。すでに新築および中古住宅の販売件数は減少傾向にあり、高金利の長期化によって住宅市場全体が停滞する懸念が強まっている。
住宅ローン金利の上昇は、家計の可処分所得を圧迫し、消費全体にも波及する可能性があるため、金利上昇の副作用として無視できない問題である。
国際的な波及と各国の対応
米国の関税政策は他国との関係にも大きな波紋を広げている。中国や欧州連合(EU)など主要貿易相手国は報復関税を検討しており、世界的な貿易摩擦の激化が懸念される状況である。
これにより、世界の貿易量の減少や、供給網の混乱が引き起こされ、各国の経済成長にも下押し圧力がかかる可能性が高い。