2026年11月2日~6日のドル円見通し。米中間選挙と雇用統計、ISM、FRBの12月利上げ観測、日米金利差から来週の相場を分析する。
1.今週のドル円相場を振り返る
2026年10月26日(月)~30日(金)のドル円は、前週の円高から反発して158円台を回復したものの、週後半には再び157円台へ押し戻された。
今週のドル円相場
| 項目 | ドル円 |
|---|---|
| 週初値 | 156.83円 |
| 週間高値 | 158.36円 |
| 週間安値 | 156.64円 |
| 週終値 | 157.58円 |
| 週間値幅 | 1.72円 |
| 前週末比 | +0.71円 |
| 前週末終値 | 156.87円 |
週初:円買い一服、157円台へ戻す
週初の26日は、前週末に進んだリスク回避の円買いが一服し、ドル円は156円台後半から157円台へ持ち直した。
前週は米国のAI関連株への警戒から米国債が買われ、米長期金利が低下していた。しかし、週が替わると市場の関心はFOMCと日銀会合へ移った。
米国の政策金利は日本を大きく上回っており、日米金利差によるドル買い需要は依然として残っている。米国債利回りの低下が一服すれば、ドル円には買い戻しが入りやすい。
27日には片山財務相が円相場について強い警戒姿勢を示した。Reutersによれば、為替市場の動向を緊張感を持って監視し、必要な対応を取る姿勢を改めて表明した。これは急速な円安に対する警戒材料となったが、ドル円の反発を完全に止めるには至らなかった。
週央:FOMCは据え置き、158円台半ばで上値を抑えられる
28日のニューヨーク市場では、米長期金利の上昇を背景にドル買いが優勢となった。
中東情勢への警戒から原油価格が上昇し、米10年債利回りも5%台へ上昇した。原油高が長引けばインフレ圧力が強まり、FRBが高金利を維持する期間が延びる可能性があるためである。
ドル円はFOMCを前に158円台へ上昇し、ウォーシュFRB議長の記者会見中には158.35円まで上値を伸ばした。
しかし、FOMCは政策金利を3.75~4.00%に据え置き、12月の利上げについて明確な時期を示さなかった。
据え置きは市場予想通りだったが、記者会見では追加利上げを強く約束するような説明がなかったため、米長期金利は上昇幅を縮小した。ドル円も157円台後半へ押し戻された。
ここで重要なのは、政策金利を変更しなくても、市場が将来の金利見通しを修正すればドル円は動くという点である。
週後半:米GDPは強いが、株安と米金利低下が重し
29日に発表された米第3四半期GDP速報値は前期比年率3.4%増となり、前期の2.2%増から成長が加速した。
同時に発表された9月PCE価格指数は前年比3.6%上昇、食品とエネルギーを除くコアPCEは3.1%上昇した。
これらは米景気の底堅さとインフレ圧力の持続を示す材料であり、FRBの12月追加利上げ観測を支える内容であった。
しかし、強い経済指標がそのままドル円の上昇につながったわけではない。
市場ではAI関連企業の巨額投資に対する収益性への懸念が再び強まり、株式市場が下落した。30日には米国の半導体関連株が大きく売られ、安全資産とされる米国債への資金流入が進んだ。
Reutersによれば、30日の米10年債利回りは4.93%前後まで低下し、S&P500も下落した。
つまり、週後半には、
強い米GDP・根強いインフレ → 追加利上げ観測を支える
という力と、
AI関連株安 → リスク回避 → 米国債買い → 米金利低下
という力が同時に働いた。
このため、ドル円は米経済指標の強さだけでは上昇しきれない展開となった。
日銀は据え置き、物価見通しを上方修正
30日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を1.25%に据え置いた。採決は8対1で、高田委員は1.50%への引き上げを主張した。
同時に日銀は、保有ETFの年間売却ペースを簿価ベースで約3,300億円から約8,600億円へ引き上げる方針を決定した。新たな売却ペースは2027年1月から適用される。
また、10月の「経済・物価情勢の展望」では、2027年度の生鮮食品を除く消費者物価指数の見通し中央値を、7月時点の2.4%から2.6%へ上方修正した。
基調的な物価上昇率についても、2%の物価安定目標とおおむね整合的な水準にあるとの判断が示された。
これは、日銀が追加利上げを検討するための条件が徐々に整いつつあることを示す。
一方、植田総裁は今後の利上げの時期やペースについて、経済・物価見通しとリスクを確認しながら判断する姿勢を維持した。
市場では12月の追加利上げを視野に入れる見方が強まったものの、利上げの時期が確約されたわけではない。
今週のドル円は、FRBと日銀の双方が政策金利を据え置いた一方、今後の追加利上げ観測と米国債市場の変化に振り回される展開となった。
2.来週の重要イベント
2026年11月2日(月)~6日(金)は、米中間選挙と米雇用統計が中心となる。
米国は11月1日(日)に夏時間が終了するため、米経済指標の日本時間は従来より1時間遅くなる。また、11月3日(火)は日本の文化の日で東京市場が休場となる。
来週の主要イベント
| 日付・日本時間 | 国・地域 | イベント | 市場予想・前回値 | ドル円への注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 11/3(火)0:00 | 米国 | 10月ISM製造業景気指数 | 予想54.7/前回54.5 | 製造業景況感、米金利 |
| 11/3(火)米国現地日中~11/4(水) | 米国 | 中間選挙・開票 | 数値予想なし | 財政政策、議会構成、市場のリスク選好 |
| 11/4(水)0:00 | 米国 | 9月JOLTS求人件数 | 予想710.0万人/前回707.9万人 | 労働需要とFRBの利上げ観測 |
| 11/4(水)22:15 | 米国 | 10月ADP雇用者数 | 予想+7.0万人/前回+9.0万人 | 民間雇用の変化 |
| 11/5(木)0:00 | 米国 | 10月ISM非製造業景気指数 | 予想54.7/前回54.9 | サービス業の景気・物価圧力 |
| 11/6(金)22:30 | 米国 | 10月雇用統計 | 非農業部門雇用者数予想+5.5万人/前回+2.9万人、失業率予想4.2%/前回4.2% | 12月FOMCの金利織り込み |
このほか、11月2日14時には日銀の10月展望レポート全文が公表予定である。日銀の公式日程によれば、10月会合の「主な意見」は11月10日、議事要旨は12月23日の公表予定であり、来週中には公表されない。
① 11月3日:米中間選挙と財政政策の行方
11月3日に米中間選挙が実施される。下院の全435議席と上院の約3分の1が改選対象となり、今後2年間の米議会構成が決まる。
為替市場が注目するのは、単純にどの政党が勝利するかだけではない。
選挙結果によって、今後の財政政策、税制、通商政策、エネルギー政策がどの程度実行可能になるかが変わるためである。
たとえば、財政拡張策が実現しやすくなるとの見方が広がれば、国債発行増加やインフレ圧力が意識され、米長期金利が上昇する可能性がある。
ただし、財政赤字への懸念から米国資産への信認が揺らぐ場合には、金利上昇が必ずしもドル高につながるとは限らない。
逆に、政策の実行が難しくなる議会構成となれば、財政支出の伸びが抑えられるとの見方から米長期金利が低下する可能性もある。
選挙結果そのものよりも、米国債利回りと株式市場が結果をどう評価するかが重要となる。
なお、日本時間4日には開票結果が順次伝わるが、接戦となった場合には議会の勢力図が確定するまで時間がかかる可能性がある。
② 11月4~5日:ADPとISMで米景気の強さを確認
週央にはADP雇用者数とISM非製造業景気指数が発表される。
ADP雇用者数は民間企業の雇用動向を示す指標であり、6日の米雇用統計に先立って労働市場の状態を判断する材料となる。
今回の市場予想は前月比7.0万人増で、前回の9.0万人増から鈍化する見通しである。
ただし、ADPと政府の非農業部門雇用者数は調査方法が異なるため、必ずしも同じ方向へ動くわけではない。
ISM非製造業景気指数は、米経済の大きな部分を占めるサービス業の景況感を示す。
とくに確認したいのは、総合指数だけでなく雇用指数と価格指数である。
サービス業の雇用が底堅く、価格上昇圧力も強ければ、FRBが12月に追加利上げを実施する根拠となり得る。
一方、雇用と新規受注がともに弱まれば、米景気減速への警戒から米2年債利回りが低下する可能性がある。
③ 11月6日:米雇用統計が最大の焦点
来週最大の経済指標は、11月6日22時30分に発表される10月米雇用統計である。米労働統計局の公式日程でも確認できる。
今回の市場予想は、非農業部門雇用者数が前月比5.5万人増、失業率は4.2%である。平均時給は前月比0.3%上昇が予想されている。
注目したいのは、雇用者数だけでなく、失業率と賃金上昇率の組み合わせである。
雇用者数が予想を上回り、賃金上昇も強ければ、FRBがインフレ抑制のために追加利上げを続けるとの見方が強まる可能性がある。
その場合、
雇用統計上振れ → 12月利上げ確率上昇 → 米2年債利回り上昇 → ドル買い
という反応が考えられる。
反対に、雇用者数が予想を大きく下回り、失業率が上昇すれば、景気減速への警戒から利上げ観測が後退する可能性がある。
ただし、雇用の弱さが株式市場の急落につながった場合には、リスク回避の円買いも重なるため、ドル円の下落が大きくなる可能性がある。
CME FedWatch:12月利上げ観測はなお優勢
10月FOMCでは政策金利が3.75~4.00%に据え置かれた。次回会合は12月8~9日である。
CME FedWatchはFF金利先物から市場の政策金利予想を確率として算出するツールである。
今回、CME公式ツールの最新確率表を直接取得することはできなかったため、FF金利先物に基づく二次集計を参考にする。
| 確認時点 | 12月の25bp利上げ確率 |
|---|---|
| 10月23日 | 約78% |
| 10月30日 | 約76% |
| 変化 | 約-2ポイント |
10月23日はFedWatch方式の国内集計、30日はFisclearの先物ベースの推計であり、算出条件が完全に同一ではない。したがって厳密な前週比ではなく参考比較である。
市場では12月の0.25%利上げが中心的な見方となっており、年末の政策金利は4.00~4.25%がもっとも意識されている。
FRBが9月に公表した経済見通しでも、2026年末の政策金利中央値は4.1%とされ、6月時点の3.8%から上方修正されている。
もっとも、今週のFOMCで追加利上げの時期が明確に示されなかったため、12月の利上げは確定事項ではない。
来週の雇用統計によって、この織り込みが大きく変化する可能性がある。
3.来週のドル円見通し
メインシナリオ:157円台を中心に方向感を探る展開
筆者のメインシナリオは、157円台を中心に上下へ振れながら、米中間選挙と雇用統計の結果を待つ展開である。
今週はFOMCと日銀会合を通過したものの、日米の政策金利差がすぐに大きく縮小する状況には至っていない。
一方、日銀は物価見通しを上方修正しており、追加利上げの可能性が残る。また、米国ではAI関連株安による米国債買いが続いている。
そのため、ドル円には金利差によるドル買いと、リスク回避による円買いの双方が働きやすい。
当面は156.60~158.40円付近を意識しつつ、イベント後の米国債利回りの反応を確認したい。
ただし、これは固定的な予想レンジではない。中間選挙や雇用統計の結果によっては、短時間で突破する可能性がある。
メインシナリオを修正する条件は、158.40~158.55円を明確に上抜ける場合、または156.60円を下抜けて円高が加速する場合である。
ドル高・円安シナリオ
ドル高・円安シナリオは、米中間選挙後に金融市場が安定し、米雇用統計が市場予想を上回るケースである。
雇用が底堅く賃金上昇も強ければ、FRBの12月追加利上げ観測が再び高まる可能性がある。
米2年債利回りが上昇し、株式市場も安定していれば、ドル円は158円台を回復する展開が考えられる。
158.35円を突破し、200日移動平均線が位置する158.55円付近を上抜ければ、159円台への上昇が視野に入る。
ただし、米長期金利の急上昇が株式市場の下落を招く場合には、円買いが強まる可能性もある。
このシナリオを修正する条件は、強い雇用統計にもかかわらず米2年債利回りが上昇しない場合、または株安による円買いが優勢となる場合である。
ドル安・円高シナリオ
ドル安・円高シナリオは、米雇用統計が予想を下回り、FRBの追加利上げ観測が後退するケースである。
とくに、雇用者数の伸びが弱く失業率も上昇する場合、米2年債利回りの低下を通じてドル売りが進む可能性がある。
さらにAI関連株安が継続し、米国債買いと円キャリートレードの巻き戻しが重なれば、円高が加速する可能性がある。
ドル円が156.65円を下抜ければ、前週安値156.08円が次の下値目標として意識される。
156円を明確に割り込めば、155円台への下落も警戒したい。
このシナリオを修正する条件は、弱い米経済指標でも米国債利回りが反発する場合、または156円台で買い戻しが強まり、157.50円を回復する場合である。
4.ドル円のテクニカル見通し
日足:158円台半ばが上値抵抗帯
今週のドル円は、28日に158.35円付近まで上昇したものの、200日移動平均線付近で上値を抑えられた。
2026年10月30日13:41|為替ニュース|
| 指標 | 確認水準 |
|---|---|
| 10日移動平均線 | 157.68円 |
| 20日移動平均線 | 157.95円(30日早朝時点) |
| 21日移動平均線 | 157.92円 |
| 50日移動平均線 | 未確認 |
| 100日移動平均線 | 159.22円 |
| 200日移動平均線 | 158.55円 |
| 一目均衡表・雲上限 | 158.44円 |
| 一目均衡表・雲下限 | 156.63円 |
20日線は外為どっとコムの30日早朝時点、その他はみんかぶFXの30日午後時点。すべて同一時刻の終値確定データではないため、参考水準である。
今週は28日の158.35円を高値として、その後は上値を切り下げる展開となった。
一方、26日の156.65円付近では買い戻しが入り、下値も一定程度支えられた。
したがって日足では、短期的な上値の重さが意識されるものの、明確な下落トレンドへ転換したと判断するには早い。
4時間足:157円台の攻防に注目
4時間足では、158円台半ばから157円台への下落によって、短期的な戻り売りが入りやすい形となっている。
ただし、156円台後半では買い戻しも見られており、下値を一方的に試す展開とはなっていない。
4時間足の10・20・50期間移動平均線、RSI、MACDについては、週末時点の同一データ系列による正確な数値を確認できなかったため記載しない。
RSIは相場の買われすぎ・売られすぎを測る指標、MACDは移動平均線の関係からトレンドの勢いを判断する指標である。
来週は、157.50円付近を回復して高値を切り上げるか、それとも157円を割り込んで156円台後半を再び試すかに注目したい。
上値の注目水準
| 水準 | 注目点 |
|---|---|
| 157.50円 | 短期的な戻りの目安 |
| 157.68~157.95円 | 10日・20日・21日移動平均線付近 |
| 158.00円 | 心理的節目 |
| 158.35~158.55円 | 週間高値、雲上限、200日移動平均線 |
| 159.00~159.04円 | 心理的節目、9月24日高値 |
下値の注目水準
| 水準 | 注目点 |
|---|---|
| 157.00円 | 心理的節目 |
| 156.63~156.65円 | 一目均衡表・雲下限、今週安値付近 |
| 156.08円 | 10月23日安値 |
| 156.00円 | 心理的節目 |
| 155.00円 | 156円割れ後の次の心理的節目 |
テクニカル上の分岐点
来週の上方向の分岐点は158.35~158.55円、下方向の分岐点は156.63~156.65円と考える。
上値抵抗帯を突破して定着すれば、159円台への上昇が意識されやすくなる。
一方、156.65円を明確に下抜ければ、156.08円や156円の節目を試す可能性がある。
米中間選挙や雇用統計の発表前後は、一時的な上抜け・下抜けが発生する可能性もあるため、日足・4時間足の終値と米国債利回りの方向を組み合わせて判断したい。
5.まとめ
2026年10月26日~30日のドル円は、156.83円で始まり、週間高値158.36円、週間安値156.64円を記録した後、157.58円で週を終えた。週前半は前週の円高から反発したものの、週央のFOMCでは12月の追加利上げについて明確な手掛かりが示されず、158円台半ばで上値を抑えられた。
日銀は政策金利を1.25%に据え置いたが、物価見通しを上方修正し、追加利上げへの警戒を残した。一方、米国ではGDPの強さとインフレ圧力が確認されたものの、AI関連株安による米国債買いがドル円の上値を抑えている。
来週11月2日~6日は、米中間選挙と米雇用統計が最大の焦点となる。選挙結果による財政政策見通しの変化と、雇用統計を受けたFRBの12月利上げ観測の修正が、米国債利回りとドル円を左右する可能性がある。
来週は、米金利の上昇がドル買いにつながるのか、それとも株式市場の下落によるリスク回避が円買いを強めるのかを確認したい。
<p>なお、2026年10月のドル円相場全体の流れは、「2026年10月のドル円相場まとめ」で整理している。米長期金利、FOMC、米CPI、FRBの追加利上げ観測など、10月相場の主な材料を週ごとに振り返っている。</p>
本記事は為替市場の分析を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨する投資助言ではない。
