FOMC議事要旨とジャクソンホールが焦点となるドル円相場
今週(8/11〜8/15)の振り返り:CPI→下落、PPI→持ち直しも上値は重い
今週のドル円は、指標と当局者発言に翻弄される展開であった。
週前半にかけては148円台半ばまで上昇したが、米7月CPI公表後に146.21円まで急反落した。インフレが減速したことで、労働市場の弱さが続くのではないかという観測があり、これが利下げの思惑となり米短期金利低下、ドル売り・円買いが優位となった。ただし、翌日の米PPIが上振れたことで金利が持ち直すと、それに伴いドル円はも若干買い戻された。
週を通しては高値148.51から安値146.21まで往来し、147.11で越週している。上値の重さと下値の固さが同居した相場展開となった。
政策面では、ベッセント米財務長官が「政策金利は少なくとも今より1.5ポイント低くあるべきだ」と発言し米金融政策当局に利下げサイクルに踏み切るよう訴えかけた。また、日銀に対しても「インフレ抑制に取り組む必要がある」との認識を示した。米国の財務長官が他国の中央銀行の金融政策に言及するのは異例であるが、これにより米国の利下げ、日本の利上げ観測が市場に醸成された。
国内では7月CPIやGDPなどの材料が続き、複数の邦銀ストラテジストは「円の戻り余地」に言及している。オプション市場でも1週間物リスクリバーサルが円コール優位を示し、短期的な円買い需要の強さが見ßて取れる。
来週(8/18〜8/22)の注目イベント:要は“金利差”—JHと日銀CPIが鍵
1. FOMC議事要旨(7/29–30開催分・20日公表)
雇用の弱さを意識した一部メンバーの0.25%利下げ主張や、インフレ鈍化に対する意見がどのようなものであったか。それにより9月利下げの可否についてを占う材料として市場は注目している。
2. ジャクソンホール会合(21〜23日)/パウエル講演(22日)
今年のテーマは「雇用市場」である。7月雇用統計の下方修正とCPIの軟化を踏まえ、パウエル議長が利下げ時期や回数にどこまで踏み込んだ発言をするのかが最大の焦点である。金利先物は9月もしくは年末の利下げ開始を見込んでいるが、タカ・ハトいずれのサプライズでも米金利の低下、ドル円の円高方向への動きは大きくなりやすい。次期FRB議長人事の思惑もくすぶる中、市場は“政策の地ならし”を探る講演として読み解くべき局面と言えるだろう。
3. 日本:7月全国CPI(22日)
コアCPIの伸び鈍化見通しがある一方、上振れなら日銀の年内利上げ観測の前倒しが意識される。最近の円相場は「米利下げ観測(ドル安)」×「日銀利上げ観測(円高)」の金利差縮小シナリオに敏感であり、CPIの数値次第でリスクセンチメントが円買いへ一斉に傾く可能性がある。
4. 日本の政治ヘッドライン
国内政治は不確実性が残る。首相動向報道が再燃すれば、政策の連続性に対する疑義から円売り(日本売り)、または金融引き締め期待の延長→円買いと、方向はヘッドライン次第で振れやすい。薄商いの季節要因(いわゆる夏枯れ)も相場の振幅を増幅しうる点に留意したい。
テクニカル見通し
ドル円は先週からややレンジを下方向(円高方向)にずらしつつも依然トレンドがない状況が続いている。日足のオシレーターはやや円高方向への圧力が強い状況で、動き出すきっかけを待っている段階であると言えるだろう。
テクニカル的にはやや下方向、ファンダメンタルズとしても下方向を意識していることからも目先は8/14安値である146.21が意識される展開となろう。下方向はその次に145.75あたりが意識され、ここを割り込むと次は145円割れまで見る必要があるが、145円近辺は節目として意識されやすく、売買が交錯する展開が予想される。
週足としては前々週の上値も安値も更新しており、どちらか抜けた方向に大きく動くことが予想され、その場合は動いた方向についていく柔軟さが求められる展開となるだろう。
まとめ
来週のドル円は、FOMC議事要旨、ジャクソンホール、日本のCPIとイベントをこなしながら金利差縮小シナリオが前進するかが最大の焦点である。米国は利下げ開始のタイミング、日本は利上げ再開の時期という相反する政策の市場への織り込みが交錯しており、ヘッドラインでレンジを飛び出すリスクもある。