「強い米経済」は終わったのか? 雇用統計で見えたドル円相場の転機
2025年7月最終週のドル円相場は、FOMCや日銀会合といった重要イベントにより政策の方向感を探る展開となった。両中央銀行とも政策を据え置いたが、そのスタンスには違いが見られた。
ドル円は一時150円台に乗せる場面もあったが、8/1に発表された雇用統計の結果および過去分の結果の修正は労働市場の減速を印象づけ、マーケットは下落した。米金利の低下によりドル円も3円と大きく下落。147.358で越週した。
今週(7月28日〜8月1日)の振り返り
FOMC:年末までの利下げ観測にブレーキ
米連邦公開市場委員会(FOMC)は、7月30日の会合で政策金利を据え置いた(4.25%〜4.5%)。声明文では、景気認識を「堅調(solid)」から「緩やか(moderate)」へ下方修正した一方、雇用と物価に対する評価は据え置かれた。
注目すべきは、FRB理事のボウマン氏とウォーラー氏の2名が0.25%の利下げを主張し、反対票を投じた点である。これは1993年以来の出来事であり、FRB内部でも利下げを巡る意見の相違が顕在化している。
しかしながら、パウエル議長は記者会見で「インフレは依然として高止まりしており雇用も堅調」とし、9月会合での利下げに関しては明言を避け、「今後2カ月分の雇用・インフレ指標を見て判断する」と述べた。
この発言を受けて、FOMC後のドル円は149円台前半まで上昇し、ドル買いが優勢となった。
日銀会合:政策据え置きもタカ派的な印象
日銀は7月31日の金融政策決定会合で政策金利を据え置いたものの、2025年度の物価見通しは引き上げた。また、国債買い入れ減額の方針を維持しつつ、「物価安定の目標に対する確度が高まれば、利上げも選択肢に」との文言を繰り返した。
内田副総裁や高田審議委員のタカ派的な姿勢もあり、年内の利上げは引き続き視野に入っているものの、市場ではハト派的と受け止められドル円は会見後150円台へと乗せた。
米雇用統計と利下げタイミング
8月1日に発表された7月の米雇用統計では、前月比7万3000人増と市場予想(10万人増)を下回った。過去分についても5月が14万4000人から1万9000人、6月は14万7000人から1万4000人に大幅に下方修正されたことで労働市場の減速が鮮明となった。
これにより、FRBが早期利下げに動くとの観測が急速に強まり、米2年債利回りは0.27%低下して3.67%台に急落。ドル円は雇用統計発表前の150円50銭台から3円超円高が進み、一時147.30台まで急落した。
来週(8月4日〜8日)の注目ポイント
ドル円相場は、150円の大台を試す動きも視野に入りつつあるが、インフレ再加速などのリスクも警戒される。
② トランプ政権の発言と関税問題
トランプ大統領は7月31日、「日米通商合意は進展している」としながらも「年内に関税再発動も辞さない」とも発言している。関税問題が再び円買いの材料となる可能性がある。関税問題への対応は円のボラティリティを高めるだろう。
③ 日本の政局と日銀幹部発言
8月5日には日銀の高田委員、8日には植田総裁の記者会見が予定されている。市場は追加利上げに関する示唆があるか注視しており、円相場にとっての材料となる可能性が高い。
テクニカル見通しと予想レンジ
ドル円は週の半ばまでは堅調な動きを見せ、150円からさらなる上昇が期待できたが、8/1の雇用統計発表後に大陰線が現れたことで週足で大きな上ヒゲ陰線となり、チャート形状としては悪くなった。現状では50日移動平均線を上回っているものの、いったんの調整が入るだろう。
その場合のメドは145円あたりにみえるが、ここで素早く切り返さないとオシレーターの動きも悪くなり、再び140円を割る動きとなる可能性がある。
週前半は自律反発を取りつつ、150円に接近する場面では戻り売りに転換するなど、柔軟な相場展開が求められるだろう。
結論:米景気と政治リスクが交錯する週に
市場は、利下げ時期の見通しを巡って再び不透明感を増した。米景気については今後の経済指標のデータ次第となろうが、雇用統計の弱さを織り込む週となるだろう。
ドル円については米金利を注視しながら右往左往するだろう。ポジション管理にはとくに注意が必要だ。

