2025年6月第1週のドル円相場は、米経済指標の軟調さと通商政策への不透明感を背景に、142円台〜144円台での不安定な動きが続いた。週末にかけては米中首脳の電話会談や米雇用統計の発表を受けて、相場はさらに神経質な展開となった。 来週(6月9日〜13日)は、再来週に控えるF...
2025年6月第1週のドル円相場は、米経済指標の軟調さと通商政策への不透明感を背景に、142円台〜144円台での不安定な動きが続いた。週末にかけては米中首脳の電話会談や米雇用統計の発表を受けて、相場はさらに神経質な展開となった。
来週(6月9日〜13日)は、再来週に控えるFOMC(6月18日〜19日開催)を前に、米CPIや日銀関連発言、通商協議の進展などが相場に影響を及ぼす可能性がある。
今週の振り返り:米経済減速と雇用統計の弱さがドルの重しに
ドル円は週初144.09で取引を開始。2日にはトランプ大統領の鉄鋼・アルミ関税率50%への引き上げ報道や、米ISM製造業景況指数の下振れがドル売り材料となり、142円台前半まで下落した。
その後、4月JOLTS求人件数が強く144円台を回復する場面もあったが、ADP雇用統計やISM非製造業指数が市場予想を下回ると再び売られ、週中は142円台半ば〜後半で推移。5日には米中首脳会談の報道もあり、143〜144円台を回復したが、方向感の乏しい展開であった。
そして6月7日未明(米国時間)に発表された5月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比13万9000人となり、市場予想(13万人)を上回った。平均時給は前月比0.4%上昇とこちらも市場予想(同0.3%上昇)を上回った。失業率は市場予想どおり横ばいの4.2%だった。
このところ、米関税政策の影響で労働市場が減速しているとの懸念が強まっていたが、おおむね市場予想を上回る内容だったことから、米経済が底堅さを保っているとの楽観的な見方が広がった。
来週の注目イベント:物価指標と日銀関連発言に要注意
米国:5月CPIとPPIの発表
6月11日に米CPI、13日にPPIが発表される。CPIは前年比+2.5%と予想されており、前月の+2.3%から加速が見込まれている。関税引き上げがインフレにどう影響したかが注目される。
ただし、市場では「インフレ加速は一時的」との見方が強く、数値が想定内であれば、FOMCに向けて大きな影響は限定的とされる可能性もある。
日銀:3トップ発言の予定
来週は日銀の植田総裁を含む複数幹部が発言する予定となっており、QT(量的引き締め)や国債買入減額の方針がどう語られるかが焦点である。
また、米財務省が公表した『為替報告書』において、「円安は日本の金利差によるもの」「日銀の引き締めが円の正常化を促す」と明記されており、米側からの政策的圧力が円高方向に働くリスクも残る。
通商交渉:G7サミット前の外交が鍵
G7サミット(6月15日〜17日)を控え、日米や米中間の通商協議が佳境を迎える。6月5日には米中首脳電話会談も行われ、関係改善への期待が高まった一方、中国側は「米の譲歩がなければ進展は難しい」とのスタンスを崩しておらず、不透明感は拭えない。
報道によれば、日本の赤澤経済再生相も訪米中で、協議進展によって石破首相の訪米が実現する可能性がある。これが円高要因として意識される局面も想定される。
テクニカル見通しと予想レンジ
方向感がない展開が続いていたが、5月の雇用統計を契機に2連続陽線が出ており、オシレーターもやや上向きを示唆している。来週にかけてやや円安に触れているようにみえる。
短期的には、ドル円は4/22につけた139.88を安値として、5/12の戻り高値148.64のレンジ内で推移している。5月下旬からはさらに小さなレンジで方向感がない点界が続いていたが、来週このレンジの高値である5/29高値146.28が強く意識される展開となるだろう。
下落リスクが完全に払拭されたわけではないが、下がったところは買われやすいのではないか。ここのところドルの弱さが目立っていたが、ドル買いが進むことで上昇してきたドルストレートについても一服感が出ることが予想される。
結論:FOMCと通商交渉を見据えた様子見の週
来週のドル円相場は、FOMCを再来週に控える中で明確な方向感が出にくい一方、米物価指標や日銀のスタンス、通商交渉の進展によって上下どちらにもブレる可能性がある。
市場は「膠着感の強いレンジ相場」を維持しつつ、材料次第で一段の円高もしくは円安に動く準備が進む週となろう。