為替マーケットには、毎年のように繰り返される「月ごとの特有な傾向」が存在します。それがいわゆる アノマリー(Anomaly) と呼ばれるもので、ファンダメンタルズでは説明しきれない値動きのクセのようなものです。 今回は、 7月の為替相場に見られるアノマリー について、過去の...
為替マーケットには、毎年のように繰り返される「月ごとの特有な傾向」が存在します。それがいわゆるアノマリー(Anomaly)と呼ばれるもので、ファンダメンタルズでは説明しきれない値動きのクセのようなものです。
今回は、7月の為替相場に見られるアノマリーについて、過去のデータや取引傾向を元に詳しく解説します。
アノマリーとは?
アノマリーとは、理論的な根拠には乏しいものの、統計的に一定の傾向として繰り返されている市場現象のことです。株式市場の「夏枯れ相場」や「年末ラリー」などと同様、為替市場にも月ごとの傾向が見られます。
7月の為替市場に見られる主なアノマリー
1. ドル円(USD/JPY)は上昇しやすい傾向
7月はドル円が陽線(上昇)となりやすい月です。米企業の決算発表シーズンを前に、ドル資産への選好が強まりやすいことが背景にあります。また、米国株が堅調に推移すれば、リスク選好による円売りも加わりやすくなります。
2. 豪ドル・NZドルなど資源国通貨も堅調
7月は、豪ドルやNZドルなどの高金利通貨も上昇しやすい傾向があります。豪州では6月が会計年度末にあたるため、7月から新年度の投資資金が動きやすいことが一因です。
3. ポンド・ユーロはまちまち、流動性低下に注意
欧州では夏季休暇が始まる時期でもあり、7月後半は流動性が低下しやすいため、方向感が定まらない展開も増えます。また、突発的なニュースに対して過敏に反応しやすいのも特徴です。
4. 夏枯れ相場でテクニカルの“だまし”に要注意
7月後半からは「夏枯れ相場」に突入するため、出来高が減少しボラティリティが不安定になることがあります。テクニカル上では一見ブレイクに見えても、フェイクアウトに終わるケースも多く、ストップ狩りへの注意が必要です。
過去10年の7月における月足の陽線・陰線傾向一覧
以下は、主要通貨ペアの過去10年間(2014年〜2023年)における7月の月足が陽線・陰線だった回数を一覧にした表です。
通貨ペア | 陽線回数 | 陰線回数 |
---|---|---|
ドル/円 (USD/JPY) | 7回 | 3回 |
ユーロ/ドル (EUR/USD) | 5回 | 5回 |
ポンド/ドル (GBP/USD) | 6回 | 4回 |
ポンド/円 (GBP/JPY) | 6回 | 4回 |
豪ドル/ドル (AUD/USD) | 6回 | 4回 |
豪ドル/円 (AUD/JPY) | 7回 | 3回 |
NZドル/米ドル (NZD/USD) | 5回 | 5回 |
NZドル/円 (NZD/JPY) | 6回 | 4回 |
ドル/カナダドル (USD/CAD) | 4回 | 6回 |
カナダドル/円 (CAD/JPY) | 6回 | 4回 |
ドル/スイスフラン (USD/CHF) | 5回 | 5回 |
スイスフラン/円 (CHF/JPY) | 6回 | 4回 |
✅ ドル円・豪ドル円・カナダドル円などの円絡み通貨で上昇傾向がやや強めに見られる一方、ドルカナダなど一部通貨では下落優位の年も散見されます。
トレード戦略のヒント
アノマリーを参考にすることで、トレード戦略に「統計的な裏付け」を持たせることができます。7月相場においては、以下のような戦略が有効かもしれません。
- ドル円・豪ドル円の押し目買いを検討
- 欧州通貨はボラティリティ急変に備えて軽めのポジション管理
- 夏枯れの“フェイクブレイク”にはストップロス設定を徹底
アノマリーだけに依存するのではなく、ファンダメンタルズやテクニカルとの組み合わせで判断することが大切です。
まとめ:7月は“動き出し”と“静けさ”が交錯する月
7月の為替相場は、月前半は決算や投資資金の動きで勢いが出やすく、後半は流動性低下による難しい展開になりやすい月です。
過去の傾向を知っておくだけでも、不意の変動に冷静に対応するヒントになります。7月相場を乗り切るうえで、アノマリーの視点をひとつの武器として活用してみてはいかがでしょうか?