FX(外国為替取引)は、しばしば「ゼロサムゲーム」と表現されます。これは、ある参加者の利益が他の参加者の損失によって成り立つという考え方です。しかし、実際のFX市場はそれほど単純ではありません。実需の存在や市場の多様性が、FXを単なるゼロサムゲーム以上のものにしています。 ...
FX(外国為替取引)は、しばしば「ゼロサムゲーム」と表現されます。これは、ある参加者の利益が他の参加者の損失によって成り立つという考え方です。しかし、実際のFX市場はそれほど単純ではありません。実需の存在や市場の多様性が、FXを単なるゼロサムゲーム以上のものにしています。
ゼロサムゲームとは?
ゼロサムゲームとは、参加者全体の利益と損失の合計がゼロになるゲームのことを指します。つまり、誰かが得をすれば、誰かが同じだけ損をするという関係です。この概念は、ポーカーや株式の短期売買など、特定の市場でよく用いられます。
FX市場の参加者とその目的
FX市場には、以下のような多様な参加者が存在します。それぞれ異なる目的で市場に参加しており、その行動が市場の流動性や価格形成に影響を与えています。
投機家(トレーダー)
為替差益を狙って取引を行います。建てたポジションは必ず決済します。ポジションの保有期間はそれぞれですが、スキャルピングであれば数秒、大口の機関投資家であっても数ヶ月といったところでしょう。短い期間で売買を繰り返しています。
企業(実需筋)
輸出入などの取引に伴う通貨交換を行います。 たとえば、トヨタ自動車は世界中で自動車を販売していますが、顧客が自動車を購入する際に支払うのは現地の通貨です。それがドルであれば日本の従業員に給与を支払う場合にはドルを円に交換する必要があるのでドル円「売り」となります(円転)。 輸入業者が、海外の業者から商品を調達する場合、多くはドルで支払いますが、この場合、円をドルに交換する必要があるのでドル円「買い」となります(ドル転)。
通貨の取引は本来はこれが基本にあり、企業だけではなく国家間でこの動きがあり、それが長期のファンダメンタルズといえるでしょう。
中央銀行
これはあまりないですが、為替レートの安定や経済政策の一環として中央銀行が為替介入を行うケースがあります。最近では2022年に日銀が行った為替介入が大きな話題を呼びました。
ヘッジファンド
大規模な資金を使い企業買収を行う際に為替市場に影響を与える事があります。たいていの場合は買収が完了してから報道が出るため、実際に為替市場に資金を投入している間には参加者には値動きの理由が分かりません。
実需の存在がもたらす市場の非ゼロサム性
上記に挙げた参加者のうち、実はトレーダー以外は利益を追求するためのものではないことに気づいたでしょうか? これらの取引は、市場に流動性を提供し、価格の安定に寄与します。 つまり、為替市場はゼロサムではないのです。
FX市場の特徴とその影響
- 高い流動性:FX市場は世界最大の金融市場であり、1日の取引量は数兆ドルに達します。この高い流動性は、取引の迅速な執行とスプレッドの狭さを可能にします。
- 24時間取引:主要な市場が時差を持って開いているため、平日は24時間取引が可能です。
- 多様な通貨ペア:主要通貨から新興国通貨まで、多様な通貨ペアが取引されています。
これらの特徴により、FX市場は多様な戦略や目的を持つ参加者が共存する場となっています。
まとめ
FX市場は単なるゼロサムゲームではないのですが、多様な参加者と目的が交錯する複雑な市場です。一般投資家には実需の玉の情報はわかりませんし、大口の注文により価格が動く場合はそれを覆すことは不可能です。また、私たちはFX業者に支払う手数料(スプレッド)も意識しなければなりません。
ゼロサムゲームだから難しいのではなく、大口の動向についていくしかないのです。FXを始める際は、これらの要素を踏まえて、市場の動向を分析し、リスク管理を徹底することが重要です。