2024年から2025年にかけて、日本の 超長期国債(金利40年物など) の利回りがじわじわと上昇しています。これにより、一見すると「買い時」と思われがちですが、意外にも 国内の生命保険会社(生保)など長期投資家は、国債の購入に慎重な姿勢を崩していません 。本記事では、その背...
2024年から2025年にかけて、日本の超長期国債(金利40年物など)の利回りがじわじわと上昇しています。これにより、一見すると「買い時」と思われがちですが、意外にも国内の生命保険会社(生保)など長期投資家は、国債の購入に慎重な姿勢を崩していません。本記事では、その背景を整理しつつ、なぜ生保が国債購入を控えているのかを解説いたします。
■ 超長期国債の金利が上昇している背景
1. 日本銀行の金融政策転換
日銀は長年続けてきた「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の運用を柔軟化しつつあります。10年国債の利回り上限を事実上撤廃したことで、金利の自然な市場形成が進み、超長期ゾーンの利回りにも波及しています。
2. インフレ期待の高まり
日本国内でも物価上昇が定着しつつあり、企業による賃上げも進行しています。市場では、「日銀が将来的に利上げに動くのではないか」という見方が強まり、金利が上昇しやすくなっています。
3. 米国金利の影響
米国の長期金利が高止まりしており、相対的に日本の国債も売られやすくなっています。とくに海外投資家が日本国債を売り、より高利回りの米国債に資金を移す動きが影響しています。
4. 財政赤字と国債増発懸念
日本政府は防衛費や社会保障費の増加に対応するため、今後も国債発行を増やす可能性があります。需給の悪化が見込まれる中、国債価格が下がり、金利は上昇しやすい状況です。
■ 金利が上がっているのに、生保が国債を買わない理由
1. さらなる金利上昇を警戒
生保は超長期で保有する債券運用を基本としているため、いまの水準で国債を買っても、将来的にもっと高利回りで買える可能性があると考えて様子見しているケースがあります。
2. 保有債券の含み損の影響
過去の低金利期に購入した債券が評価損を抱えており、これ以上の金利リスクを取りにくい状況にあります。とくに時価評価される資産では慎重な運用が求められます。
3. 他資産との比較による見送り
為替ヘッジをかけた米国債の利回りが日本国債を上回る場合には、そちらを選好することもあります。また、国内外の社債やローン資産など、より高い利回りが期待できる運用対象も視野に入っています。
4. 内部のリスク管理体制
2025年以降に予定される経済価値ベースのソルベンシー規制などに備え、生保は金利リスク管理を一段と厳格化しています。このため、安易に債券を積み増すことが難しくなっているのです。
■ まとめ:超長期金利の上昇は「買い時」とは限らない
金利上昇は一見すると国債の魅力が高まっているように思えますが、プロの投資家である生保にとっては、将来の金利動向や内部リスク、他資産との比較など、総合的な判断が必要です。 したがって、現在のように「金利は上がっているが、まだ買えない」という慎重なスタンスが続いているのです。