為替マーケットには、毎年のように繰り返される「季節的な傾向」が存在します。これは アノマリー と呼ばれるもので、明確なファンダメンタルズでは説明しきれない動きが、過去のデータに一定の法則として表れてくる現象です。 今回は、そんなアノマリーの中でも「6月の為替市場」に注目し、...
為替マーケットには、毎年のように繰り返される「季節的な傾向」が存在します。これはアノマリーと呼ばれるもので、明確なファンダメンタルズでは説明しきれない動きが、過去のデータに一定の法則として表れてくる現象です。
今回は、そんなアノマリーの中でも「6月の為替市場」に注目し、過去10年分のデータや傾向、実際にどうトレードに活かせるかについて解説します。
アノマリーってなに?
アノマリーとは、経済学的に正当な理由が説明しきれなくても、繰り返し発生するマーケットのパターンのことを指します。株式市場での「セル・イン・メイ」や年末ラリーが有名ですが、為替市場にも月単位で現れる傾向が存在します。
6月もその例外ではありません。
6月の為替市場に見られる主なアノマリー
▷ ドル円は調整局面になりやすい?
6月のドル円相場は、過去の傾向としてやや円高に振れやすいとされています。これは、5月に見られる米企業の四半期末に向けたドル需要が一巡するため、ドル買いの勢いが弱まることが一因です。
また、米国では6月中旬以降、夏のバカンスシーズン前に機関投資家のポジション整理が進みやすいため、需給の変化が相場に現れやすい時期でもあります。
▷ ユーロドルは方向感に欠けやすい
ユーロドルは、ECB理事会や欧州の夏期休暇入り前の実需取引などの影響から、方向感が出づらくなりやすいと言われています。短期的な思惑と実需が交錯し、乱高下しやすい月でもあるのが6月の特徴です。
▷ 豪ドル・NZドルなどの資源国通貨は下落傾向
過去10年のデータを見てみると、豪ドルやNZドルは6月に陰線となることが多く、調整局面を迎えやすいことがわかります。資源価格の調整や、中国経済の影響を受けやすい点が背景にあると考えられます。
▷ ボーナス期に個人投資家が動く日本
日本では6月に夏のボーナス支給が始まります。この資金を元に、高金利通貨(メキシコペソ、南アランドなど)に投資する個人投資家が増えることも一因となり、一部の通貨で底堅い動きが見られることもあります。
過去10年の月足データから見る6月の傾向
実際に、主要通貨ペアにおける過去10年(2015年~2024年)の6月の月足チャートをもとに、陽線(上昇)か陰線(下落)かの回数をまとめた表がこちらです。
📊 過去10年の6月における月足の陽線・陰線回数
通貨ペア | 陽線回数 | 陰線回数 |
---|---|---|
ドル/円 (USD/JPY) | 6回 | 4回 |
ユーロ/ドル (EUR/USD) | 5回 | 5回 |
ポンド/ドル (GBP/USD) | 4回 | 6回 |
ポンド/円 (GBP/JPY) | 5回 | 5回 |
豪ドル/ドル (AUD/USD) | 3回 | 7回 |
豪ドル/円 (AUD/JPY) | 4回 | 6回 |
NZドル/米ドル (NZD/USD) | 3回 | 7回 |
NZドル/円 (NZD/JPY) | 4回 | 6回 |
ドル/カナダドル (USD/CAD) | 6回 | 4回 |
カナダドル/円 (CAD/JPY) | 5回 | 5回 |
ドル/スイスフラン (USD/CHF) | 5回 | 5回 |
スイスフラン/円 (CHF/JPY) | 6回 | 4回 |
✅ 豪ドル・NZドルは下落傾向が目立つ一方で、ドル円・カナダドル・スイスフラン円はやや強めに推移していることが確認できます。
トレード戦略にどう活かす?
6月のアノマリーは、「そのまま売買の根拠にする」にはやや弱いものの、ポジション管理やエントリー時期のヒントとしては十分に活用できます。
たとえば:
- ドル円のロングを持つなら、6月は利確タイミングを早めに
- 豪ドル・NZドルの戻り売りを狙う
- 政策イベント(FOMC・ECB)前後は様子見を意識する
など、統計的傾向を戦略に組み込むことでリスクをコントロールしやすくなります。
まとめ:6月相場は「変化の月」
6月は、「上昇」「下落」といった明確な一方向というより、変化や調整が入りやすい“転換点”の月といえます。ファンダメンタルズと合わせて、こうしたアノマリー的な視点を持つことで、より精度の高い相場判断ができるようになります。
データに基づいた視点を持ちつつ、臨機応変なトレード判断を心がけていきましょう。