来週のドル円相場は、米国のCPIを中心とした経済指標の結果と、日本の春闘の結果に大きく左右される展開となる。 現時点では、トランプ政権の関税政策や米国の経済減速懸念を背景に「ドル安基調」が継続する可能性が高い。ただし、CPIが市場予想を上回る場合や、米国の株価が持ち直す場合に...
来週のドル円相場は、米国のCPIを中心とした経済指標の結果と、日本の春闘の結果に大きく左右される展開となる。
現時点では、トランプ政権の関税政策や米国の経済減速懸念を背景に「ドル安基調」が継続する可能性が高い。ただし、CPIが市場予想を上回る場合や、米国の株価が持ち直す場合には、ドルの買い戻しが進み150円台を試す展開も想定される。
現状の市場動向
今週のドル円は150円72銭からスタートし、月曜日には151円を超える場面もあったものの上値は重く大きく下落。金曜日の雇用統計後には昨年10月以来の一時146円を付けた。その後やや買い戻され148円で越週した。 米国の経済指標が市場予想を下回る結果となったことや、トランプ大統領の関税政策、円高要因となる日本国内の春闘による賃上げ圧力が影響したためである。加えて、欧州通貨の堅調な動きもドル安を助長した。
米国の経済指標と FRB の金融政策
米国では以下の経済指標が発表される予定だ。
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3月11日(月)23:00:1月の労働異動調査(JOLTs)求人数
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3月12日(火)21:30:2月の消費者物価指数(CPI)
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3月13日(水)21:30:2月の生産者物価指数(PPI)
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3月14日(木)21:30:新規失業保険申請件数
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3月15日(金)23:00:ミシガン大学消費者信頼感指数
これらの指標は、FRBの今後の金融政策の方向性を左右する重要なデータとなるだろう。とくに重要なのは2月のCPIと思われる。市場予想を上回る場合、FRBの利下げ期待が後退し、ドルの買い戻しが進む可能性がある。一方、CPIが市場予想を下回る場合、FRBが年内2~3回の利下げを示唆するシナリオが強まり、ドル安要因となる可能性が高い。
FRB理事のウォラー氏は、「年内2回か3回の利下げ」を示唆しており、市場では早ければ6月にも利下げが開始される可能性が取り沙汰されている。市場の利下げ期待が強まれば、ドル安基調が継続する可能性がある。
日本国内の要因
日本国内では、14日に発表される春闘の一次回答が注目される。連合がすでに6%以上の賃上げ要求を発表しており、実際の結果がこれに近ければ、日銀の追加利上げ期待が高まり、円高要因となる可能性がある。
日銀の内田副総裁が3月5日に行った講演では追加利上げの早期化を示唆する発言はなかったものの、「一番重要なのは賃金」と述べており、春闘の結果次第では市場の反応が大きくなる可能性がある。
地政学リスク
米国のトランプ政権による対カナダ・メキシコ関税の強化、中国への関税措置などが、世界経済に与える影響が懸念される。とくに、中国は人民元の基準値を7.17台に設定し、為替の安定を図る姿勢を示しているものの、米国が中国の金融政策を「通貨安誘導」とみなす可能性がある。仮に追加の関税措置が取られた場合、市場のリスク回避姿勢が強まり、円買いが進む可能性がある。
予想レンジ
来週のドル円の予想レンジは145.00 ~ 150.00円と見込まれる。
上値の目安(150円):CPIが市場予想を上回り、FRBの利下げ期待が後退した場合、ドルが買い戻される可能性がある。
下値の目安(145円):春闘の結果が賃上げ6%以上となり、日銀の追加利上げ期待が高まる場合、円高が進む可能性がある。