2021 年のドル円相場は、誰もが円高方向へと進むという見通しを出していました。しかし、年初に 102 円をさまよっていたドル円は、2 月から円安方向へ一気に進む大相場を呈しています。 もはや死語かと思った「円キャリートレード」が復活 要因のひとつは、長期金利の上昇。 ...
2021 年のドル円相場は、誰もが円高方向へと進むという見通しを出していました。しかし、年初に 102 円をさまよっていたドル円は、2 月から円安方向へ一気に進む大相場を呈しています。
もはや死語かと思った「円キャリートレード」が復活
要因のひとつは、長期金利の上昇。
いま、米国をはじめ、世界各国で長期金利が上昇しています。
背景にあるのは、各国中央銀行が打ち出している大規模な金融緩和と、コロナワクチンの接種による経済活動の正常化、景気回復によるインフレ期待です。
日本だけ長期金利をロック
世界中の国で長期金利が上昇する中、唯一これが当てはまらない国があります。
——日本です。
日本は、日銀が導入しているイールドカーブコントロール(YCC)により、10 年債利回りを概ねゼロに近い水準でロックしているため、相対的に見た時、長期金利が上昇している他国と日本の間には、金利差が出ている状況です。
金利差の利ざや
せどり(転売)というビジネスがあります。
仕入れた商品の買値よりも高く買いたい、という人がいれば、右から左へ商品を流すだけで儲けが出ます。
通過の間で金利差が出たとき、通貨にも同じ事が起こります。
長期金利がゼロ近辺にロックされている「円」を借り入れて、他の通貨を調達するのです(円を外貨に換える = 円安 = クロス円に上昇圧力)。調達した外貨を、株をはじめ、ほかに投資することで、金利差以上の利益を出すことができます。
これは、円キャリートレードといい、2000 年代に FX が個人投資家にも解禁された頃に非常に流行ったことがあります。当時は「ドル円を買ってるだけで爆益になる」という状況でした(その後、リーマンショックを経て、多くの個人投資家が得た利益をふき飛ばし、退場しました)。
投機筋主導の円キャリートレード
投機筋のポジション動向を測るうえで参考になるのが、シカゴ・マーカンダイル取引所(CME)の「IMM 通貨先物」ポジション動向です。
グラフを見ると、2021 年の年初からじりじりと円ショート(円売り)ポジションが積み上がってきています。3 月には今まであった円ロング(円買い)ポジションも減少してきており、このままいくと 4 月には円ロングが完全に円ショートに変わりそうな勢いです。
日本のクジラも追従するか?
4 月——日本の新年度が始まると、日本の機関投資家は新たな運用方針にそってポジションメイクをはじめます。外債投資が活発になるようだと、さらなる円売りが進行する可能性があります。
ただ、ドル円に関しては目先 110 円の節目が非常に固いことが予想できます。
それ以降の 110 円〜115 円に関しても、何度も押し返された価格帯であるため、それほど上昇のスピードは早くないと思われます。
ただ、今年は、数年ぶりにドル円が面白いかもしれませんね。