2018年8月第5週(8月27日~8月31日)の、ドル円相場の予想と主要な経済指標のまとめから、マーケットの見通しを考察します。
2018年8月第5週(8月27日~8月31日)の、ドル円相場の予想と主要な経済指標のまとめから、マーケットの見通しを考察します。
もっとも、こうした対外投資は世界最大の対外純資産をもたらし、円高圧力となって跳ね返る。例えば、第一次所得収支の内、直接投資収益の多くが円転されるほか、証券投資収益も半分程度が円転されると推測される。
来週のドル円は、上下とも決定打を欠くか、または上下の材料が拮抗する結果、引き続き方向感は出にくいと考えられる。但し、休場明けのトルコリラが続落する場合、市場のリスク回避姿勢が再び強まり、円高圧力が高まるおそれがある。
特に、今週はブラジルレアルも大幅に下落し、対ドルでの最安値に接近、対円では最安値を更新するなど、新興国通貨は総じて軟調に推移するものが目立つ。こうした場面では、ドル買いも強まると考えられ、ドル円は動きにくいだろう。ただ、そのしわ寄せがクロス円の大幅安へと波及する点に要注意だ。
11 月まで次の関税合戦が持ち越されるとすると、9 月、10 月は通商摩擦は比較的静かになる。しかし、トランプ大統領は「中国が知的財産権に関する慣行、企業への補助金制度、および関税構造の抜本的な見直し、に合意しない限り、中国から米国への全輸出品(5000 億ドル超相当)へ関税を発動する」としており、中国に対する要求が簡単に合意されるとは考え難い。中間選挙が終われば通商摩擦が再燃することになろう。
もう一つ注意が必要なのは、トランプ大統領が交渉に際して関税や為替などを手段・武器として使う傾向があることだ。トルコに拘留されている米国人牧師の解放要求に関税引き上げや(結果ではあるが)トルコ・リラ安といった攻め方をした後、23 日には南アの土地改革に関連して、その実態調査をポンペオ国務長官に指示した、とツィート。これを受けて中国人民元やトルコ・リラの下落に似た状況を想定した南ア・ランド売りとなり、南ア・ランドは下落した。
こうしたトランプ大統領の強硬スタンスは一部の米国有権者からは圧倒的な支持を得るだろうが、国際政治経済における暗黙の一線を越えている。今週は 22 日に米 FRB の FOMC 議事録(7/31-8/1 開催分)の公表があったが、議事録では参加者たちが通商政策の成り行きに強い懸念を表明していることが示されていた。
今回のFOMC議事録の中で一つ意外だったのは、ダウンサイドリスクとして、通商摩擦の激化とエマージング市場の混乱に加えて、米国住宅セクターの著しい弱まり、が挙げられていた点である。通商政策の先行き不透明感がFedを一段と慎重にさせているわけだが、それがなくとも、Fed が自動操縦から手動に切り替える時期が近づいていると考えられる。
最近はユーロやポンドの弱さを背景にドルは全般的な強さを維持しているが、ユーロ/円が2日間で2円弱急落するなどクロス円に由来する円高圧力も警戒される。
日米の金利や株価動向も引き続き注目点。
「今のところ日米金利差の変化は為替相場に持続的な影響を及ぼしていないが、米国では年後半も市場予想を上回る規模で国債が増発される予定で、金利への影響を注視していきたい。高値圏で不安定な米国株からも目が離せない」(証券会社)という。
ただし、ドル高であったかと言えばそうではないであろう。ドル自体は調整モードでユーロやポンドはリバウンドの流れを堅持していたようにも思われる。
ユーロ円やポンド円といったクロス円が上昇していたことからも、今週はまさにザ・円相場だったといった印象だ。混乱が見られているトルコも大型連休で休場、株式市場は底堅く推移していたことからリスク選好の雰囲気になっていたのかもしれない。
そんな中でもトランプリスクは相変わらず健在だったようだ。週初のドル円の下げはこれが大きかったであろう。トランプ大統領がパウエルFRB議長を名指しして利上げ姿勢への苦言を呈している。ツイッターでも明確に言及していた。以前にも同様の言及がありサプライズではなかったように思われるが、ドル調整の背中を押したことは間違いない。
今週はもう1つトランプリスクが発生している。大統領の元顧問弁護士のコーエン氏が大統領選中にトランプ大統領と性的関係を持った女性2人に口止め料を支払ったとして選挙法違反の罪に問われている。司法取引があったのであろう、それに対して有罪を認める答弁を裁判所で行っていた。最近の市場はこの手の話に反応が薄かったが、今回は多少反応していたようだ。弾劾というキーワードが再浮上している。11月の米中間選挙で焦点にしようという動きまで出ているようだ。
弾劾については以前から述べているが万一、トランプ大統領が弾劾されたとしても、次の大統領はペンス副大統領だ。米国では再選挙は行われない。経済政策もトランプ大統領と同じ路線でむしろ、対中戦略はもっと強硬になる可能性もありそうだ。
潜在的に下がったらドルを買うような動きもあるのかと思うほど、ドルは底堅い状況が続いています。
ただ、動きは軟調で、積極的にドル円で取引しようという時期ではないのかもしれません。他の通貨でごまかしつつ、8月の終わりを迎えるという展開になるのでしょう。
経済指標一覧(日本時間)
8/27(月)
- ロンドン・休場
- 特に重要な経済指標の発表なし
8/28(火)
- 特に重要な経済指標の発表なし
8/29(水)
- 21:30(米) 4-6月期 四半期実質国内総生産(GDP、改定値)
8/30(木)
- 21:30(加) 4-6月期 四半期実質国内総生産(GDP、改定値)
- 21:30(米) 7月 個人消費支出(PCE)
8/31(金)
- 18:00(欧) 8月 消費者物価指数(HICP)
- 22:45(米) 8月 シカゴ購買部協会景気指数
ドル円予想レンジ
三菱東京UFJ銀行
FX Weekly
予想レンジ:109.50 - 112.50
底堅さ維持も依然高い続伸へのハードル
円相場を取り巻く需給環境をみると、為替ヘッジコストの高騰を受け、中長期債投資こそ大幅に縮小したが、依然として活発な本邦の対外投資が継続しているとみられる。もっとも、こうした対外投資は世界最大の対外純資産をもたらし、円高圧力となって跳ね返る。例えば、第一次所得収支の内、直接投資収益の多くが円転されるほか、証券投資収益も半分程度が円転されると推測される。
来週のドル円は、上下とも決定打を欠くか、または上下の材料が拮抗する結果、引き続き方向感は出にくいと考えられる。但し、休場明けのトルコリラが続落する場合、市場のリスク回避姿勢が再び強まり、円高圧力が高まるおそれがある。
特に、今週はブラジルレアルも大幅に下落し、対ドルでの最安値に接近、対円では最安値を更新するなど、新興国通貨は総じて軟調に推移するものが目立つ。こうした場面では、ドル買いも強まると考えられ、ドル円は動きにくいだろう。ただ、そのしわ寄せがクロス円の大幅安へと波及する点に要注意だ。
三井住友銀行
FOREX WEEKLY
予想レンジ:110.70 - 112.00
米国政治の飛び火
- 米中の通商協議では表面的には目立った好転はなく、23 日には予定通り、関税が発動された。
- 米 FRB は 9 月の利上げ実施を議事録でプレアド。しかし同時に、通商政策への強い懸念も表明。
11 月まで次の関税合戦が持ち越されるとすると、9 月、10 月は通商摩擦は比較的静かになる。しかし、トランプ大統領は「中国が知的財産権に関する慣行、企業への補助金制度、および関税構造の抜本的な見直し、に合意しない限り、中国から米国への全輸出品(5000 億ドル超相当)へ関税を発動する」としており、中国に対する要求が簡単に合意されるとは考え難い。中間選挙が終われば通商摩擦が再燃することになろう。
もう一つ注意が必要なのは、トランプ大統領が交渉に際して関税や為替などを手段・武器として使う傾向があることだ。トルコに拘留されている米国人牧師の解放要求に関税引き上げや(結果ではあるが)トルコ・リラ安といった攻め方をした後、23 日には南アの土地改革に関連して、その実態調査をポンペオ国務長官に指示した、とツィート。これを受けて中国人民元やトルコ・リラの下落に似た状況を想定した南ア・ランド売りとなり、南ア・ランドは下落した。
こうしたトランプ大統領の強硬スタンスは一部の米国有権者からは圧倒的な支持を得るだろうが、国際政治経済における暗黙の一線を越えている。今週は 22 日に米 FRB の FOMC 議事録(7/31-8/1 開催分)の公表があったが、議事録では参加者たちが通商政策の成り行きに強い懸念を表明していることが示されていた。
今回のFOMC議事録の中で一つ意外だったのは、ダウンサイドリスクとして、通商摩擦の激化とエマージング市場の混乱に加えて、米国住宅セクターの著しい弱まり、が挙げられていた点である。通商政策の先行き不透明感がFedを一段と慎重にさせているわけだが、それがなくとも、Fed が自動操縦から手動に切り替える時期が近づいていると考えられる。
ロイター
来週の外為市場
予想レンジ:110.00 - 112.50
来週は円高リスクを警戒、中国株や日米通商協議を注視
来週の外為市場では、米中貿易摩擦の悪化懸念に加え、不安定な中国株や日米通商協議を巡りリスク回避ムードが広がりかねず、円高リスクが警戒されている。最近はユーロやポンドの弱さを背景にドルは全般的な強さを維持しているが、ユーロ/円が2日間で2円弱急落するなどクロス円に由来する円高圧力も警戒される。
日米の金利や株価動向も引き続き注目点。
「今のところ日米金利差の変化は為替相場に持続的な影響を及ぼしていないが、米国では年後半も市場予想を上回る規模で国債が増発される予定で、金利への影響を注視していきたい。高値圏で不安定な米国株からも目が離せない」(証券会社)という。
Klug FX
とれんど捕物帳
予想レンジ:110.00 - 112.00
トランプリスクは相変わらず健在 トルコが戻ってくるが反応があるか注目
今週のドル円は前半は大台の110円を割り込んだものの直ぐに反転した。結局、週足では陽線引けとなっている。21日線の水準も上回っており、チャート的には来週以降の上値期待が高まる値動きではあった。ただし、ドル高であったかと言えばそうではないであろう。ドル自体は調整モードでユーロやポンドはリバウンドの流れを堅持していたようにも思われる。
ユーロ円やポンド円といったクロス円が上昇していたことからも、今週はまさにザ・円相場だったといった印象だ。混乱が見られているトルコも大型連休で休場、株式市場は底堅く推移していたことからリスク選好の雰囲気になっていたのかもしれない。
そんな中でもトランプリスクは相変わらず健在だったようだ。週初のドル円の下げはこれが大きかったであろう。トランプ大統領がパウエルFRB議長を名指しして利上げ姿勢への苦言を呈している。ツイッターでも明確に言及していた。以前にも同様の言及がありサプライズではなかったように思われるが、ドル調整の背中を押したことは間違いない。
今週はもう1つトランプリスクが発生している。大統領の元顧問弁護士のコーエン氏が大統領選中にトランプ大統領と性的関係を持った女性2人に口止め料を支払ったとして選挙法違反の罪に問われている。司法取引があったのであろう、それに対して有罪を認める答弁を裁判所で行っていた。最近の市場はこの手の話に反応が薄かったが、今回は多少反応していたようだ。弾劾というキーワードが再浮上している。11月の米中間選挙で焦点にしようという動きまで出ているようだ。
弾劾については以前から述べているが万一、トランプ大統領が弾劾されたとしても、次の大統領はペンス副大統領だ。米国では再選挙は行われない。経済政策もトランプ大統領と同じ路線でむしろ、対中戦略はもっと強硬になる可能性もありそうだ。
私見
軟調な動き
予想レンジ:110.00 - 112.20ドル円は軟調な動きを見せていますが、200日移動平均線を割ることなく上昇しました。
潜在的に下がったらドルを買うような動きもあるのかと思うほど、ドルは底堅い状況が続いています。
ただ、動きは軟調で、積極的にドル円で取引しようという時期ではないのかもしれません。他の通貨でごまかしつつ、8月の終わりを迎えるという展開になるのでしょう。