2017年11月第五週から12月第一週(11月28日~12月1日)の、ドル円相場の予想と主要な経済指標のまとめから、マーケットの見通しを考察します。
2017年11月第五週から12月第一週(11月28日~12月1日)の、ドル円相場の予想と主要な経済指標のまとめから、マーケットの見通しを考察します。
ドル円との相関を強くしているのが、米国の長期金利の動向だ。ここから読み取れるのは、目先の米経済の好調さや利上げは、既にコンセンサスとなっており、一段のドル高材料としては機能していないこと、市場の関心が米経済の持続的な成長や低インフレからの脱却といった長期的なテーマへと移ったことだろう。
クロス円が既に騰勢を失っていることからも明らかな通り、日米、または内外の金融政策格差による円ショート戦略は、しばらくの間、影を潜めよう。もっとも、ドル円が 110 円付近まで下落する場面では、本邦からの対外投資フロー、特に証券投資を背景とする円売り需要に支えられ、ドル円の大幅な値崩れは避けられるのではないか。
このほかの来週の注目材料として、パウエルFRB理事の公聴会がある(28 日)。ハト派とされる同氏だが、足もとの低インフレを明確に一時的なものと断じる場合、市場における来年の利上げ織り込みが多少高まり、ドル円へのサポートとなるだろう。
また、第 3 四半期の実質GDP(改定)やISM製造業景気指数(11 月)などを控えるが、予想から大幅な乖離がなければ既に足もとの米経済を好調とみる市場に大きな影響は与えないだろう。
また、今週急落した中国株を巡り、投資家のリスク回避姿勢が強まる可能性もある。さらに、ロシアゲート問題や北朝鮮リスクが加われば、ドルが110円付近まで下落する余地があるとみられる。
税制改革について「上院の審議のハードルは高そうだ。年内通過のめどが立たない状況で、ロシアゲートや北朝鮮問題、中国株の下落などのリスク要因が表面化すれば、ドルの下方調整が深まりかねない」とトウキョウフォレックス上田ハーローの阪井勇蔵氏は指摘する。
ドルは23日に2カ月ぶり安値となる111.07円まで下落した。111円割れは踏みとどまったが「111円を維持できないようであれば、投機筋によるロングの投げが誘発され、110円ちょうど付近まで調整が入ってもおかしくない」(阪井氏)という。
一方、23日に急落した中国株の動向にも注意が必要だ。「中国発の世界株安リスクが意識されれば、リスク回避で一段の米金利低下と円高につながりかねない」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との声が出ている。
そうしたなかで筆者が円高警戒感を抱いたのは、米感謝祭を控えた11/20の13時半頃だった。1ドル112.00近傍での攻防時、「もはやデフレではない状況を作り出せた」「行き過ぎた円高も是正された」と安倍首相が述べた局面である。
まさに、トランプ政権の米貿易赤字削減姿勢、パウエル次期FRB議長が緩やかな利上げペースを維持するとの見方、加えて米税制改革やロシア疑惑を巡る米政権の先行き不透明感を孕んでいる状況下である。
投機筋にしてみれば、円急騰を正当化し、円の売り持ち高解消を進める格好の発言だったのではないか。安倍首相が「デフレ脱却が見えない」と言えば、野党が国会でアベノミクス批判を強め、対して、「デフレ脱却が見えた」と言えば、投機筋は円買戻しとした“前門の虎、後門の狼”状態が、現在の状況と言えようか。
前号でも指摘したが、シカゴIMM通貨先物での投機筋の円売り(ドル買い)ポジションが、11/14時点では13.5万枚と今年の最高水準まで膨張。これは2013年12月以来の高水準だ。安倍首相の覚悟、発言を恣意的に解釈し、円売り持ち高の縮小・円買い戻しの可能性は、12/9までの特別国会審議終了まで継続、と読んでいる。
■11/27週ドル円
中期トレンドでは20日線が90・200日線に対しデッドクロス形成を推考させるのが気掛かり。上値焦点は200日線111.70圏越え、週足雲上限112.325、11/22高値112.485、11/20-21高値圏112.72-73。日足一目均衡表雲上限(112.715-113.108)が上値抑制か。
下値焦点は111.00節目、9/18安値110.99。緩やかに切り上がる雲下限(110.713-110.89)注視。下抜けた際は9/15安値109.535。これは北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を越えた際の「5分間」動意安値でありオーバーシュート感が強いことから節目の110.00圏が実質の最終橋頭堡か。
ドル円はテクニカル的にはここからの上昇トレンドが期待しづらいチャートとなってしまいました。ただし、なにか大きな事件が起こらない限り、年末にかけて値幅は期待できないので、ジリジリ下げて 110 円程度で今年は終えそうなシナリオがなんとなく見えてきました。
基本的には戻り売りですが、タイミングはよく見て図ったほうがいいですね。
予想 : 110.00 - 112.40
経済指標一覧(日本時間)
11/27(月)
- 24:00(米) 10月 新築住宅販売件数
11/28(火)
- 23:00(米) 9月 ケース・シラー米住宅価格指数
- 24:00(米) 11月 消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)
11/29(水)
- 22:30(米) 7-9月期 四半期実質国内総生産(GDP・改定値) ☆☆
- 28:00(米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
11/30(木)
- 19:00(欧) 11月 消費者物価指数(HICP・速報値) ☆☆
- 22:30(米) 10 月 個人消費支出(PCE コア・デフレーター)
- 23:45(米) 11 月 シカゴ購買部協会景気指数
12/01(金)
- 08:30(日) 10月 全国消費者物価指数(CPI) ☆☆
- 22:30(加) 7-9月期 四半期国内総生産(GDP),11月 新規雇用者数・失業率
- 24:00(米) 11月 ISM 製造業景況指数
ドル円予想レンジ
三菱東京UFJ銀行
FX Weekly
予想レンジ:110.25 - 112.75
試される押し目買い需要
来週は 12 月を迎え、市場のFOMC(12~13 日)への関心も高まっていこう。しかし、12 月の利上げは概ね織り込み済みであり、「12月利上げ」によるドル買いは既に一巡したと考えられる。ドル円との相関を強くしているのが、米国の長期金利の動向だ。ここから読み取れるのは、目先の米経済の好調さや利上げは、既にコンセンサスとなっており、一段のドル高材料としては機能していないこと、市場の関心が米経済の持続的な成長や低インフレからの脱却といった長期的なテーマへと移ったことだろう。
クロス円が既に騰勢を失っていることからも明らかな通り、日米、または内外の金融政策格差による円ショート戦略は、しばらくの間、影を潜めよう。もっとも、ドル円が 110 円付近まで下落する場面では、本邦からの対外投資フロー、特に証券投資を背景とする円売り需要に支えられ、ドル円の大幅な値崩れは避けられるのではないか。
このほかの来週の注目材料として、パウエルFRB理事の公聴会がある(28 日)。ハト派とされる同氏だが、足もとの低インフレを明確に一時的なものと断じる場合、市場における来年の利上げ織り込みが多少高まり、ドル円へのサポートとなるだろう。
また、第 3 四半期の実質GDP(改定)やISM製造業景気指数(11 月)などを控えるが、予想から大幅な乖離がなければ既に足もとの米経済を好調とみる市場に大きな影響は与えないだろう。
ロイター
来週の外為市場
予想レンジ:110.00 - 113.00
来週はドルの下値リスク警戒、米税制改革案審議や中国株を注視
来週の外為市場で、ドル/円は下値リスクが警戒される。米議会上院では税制改革法案審議が始まるが、年内通過の見通しが立たなけば、ドルの上値を抑えそうだ。また、今週急落した中国株を巡り、投資家のリスク回避姿勢が強まる可能性もある。さらに、ロシアゲート問題や北朝鮮リスクが加われば、ドルが110円付近まで下落する余地があるとみられる。
税制改革について「上院の審議のハードルは高そうだ。年内通過のめどが立たない状況で、ロシアゲートや北朝鮮問題、中国株の下落などのリスク要因が表面化すれば、ドルの下方調整が深まりかねない」とトウキョウフォレックス上田ハーローの阪井勇蔵氏は指摘する。
ドルは23日に2カ月ぶり安値となる111.07円まで下落した。111円割れは踏みとどまったが「111円を維持できないようであれば、投機筋によるロングの投げが誘発され、110円ちょうど付近まで調整が入ってもおかしくない」(阪井氏)という。
一方、23日に急落した中国株の動向にも注意が必要だ。「中国発の世界株安リスクが意識されれば、リスク回避で一段の米金利低下と円高につながりかねない」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との声が出ている。
岡三オンライン証券
武部力也の週間為替相場見通し
予想レンジ:110.00 - 112.50
「前門の虎、後門の狼」に挟まれた安倍首相と円
11/20の衆院本会議で安倍首相は日銀に対し「物価2%目標の達成に向けて、大胆な金融緩和を着実に推進することを期待する」と述べた。但し、追加金融緩和が必要との声に黒田総裁は「現在のイールドカーブコントロール(長短金利操作)で十分適切なカーブが形成されている」と明言。突っぱねているようにも見えるが、次の一手が見えず、静観せざるをえないジレンマにも映る。そうしたなかで筆者が円高警戒感を抱いたのは、米感謝祭を控えた11/20の13時半頃だった。1ドル112.00近傍での攻防時、「もはやデフレではない状況を作り出せた」「行き過ぎた円高も是正された」と安倍首相が述べた局面である。
まさに、トランプ政権の米貿易赤字削減姿勢、パウエル次期FRB議長が緩やかな利上げペースを維持するとの見方、加えて米税制改革やロシア疑惑を巡る米政権の先行き不透明感を孕んでいる状況下である。
投機筋にしてみれば、円急騰を正当化し、円の売り持ち高解消を進める格好の発言だったのではないか。安倍首相が「デフレ脱却が見えない」と言えば、野党が国会でアベノミクス批判を強め、対して、「デフレ脱却が見えた」と言えば、投機筋は円買戻しとした“前門の虎、後門の狼”状態が、現在の状況と言えようか。
前号でも指摘したが、シカゴIMM通貨先物での投機筋の円売り(ドル買い)ポジションが、11/14時点では13.5万枚と今年の最高水準まで膨張。これは2013年12月以来の高水準だ。安倍首相の覚悟、発言を恣意的に解釈し、円売り持ち高の縮小・円買い戻しの可能性は、12/9までの特別国会審議終了まで継続、と読んでいる。
■11/27週ドル円
中期トレンドでは20日線が90・200日線に対しデッドクロス形成を推考させるのが気掛かり。上値焦点は200日線111.70圏越え、週足雲上限112.325、11/22高値112.485、11/20-21高値圏112.72-73。日足一目均衡表雲上限(112.715-113.108)が上値抑制か。
下値焦点は111.00節目、9/18安値110.99。緩やかに切り上がる雲下限(110.713-110.89)注視。下抜けた際は9/15安値109.535。これは北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を越えた際の「5分間」動意安値でありオーバーシュート感が強いことから節目の110.00圏が実質の最終橋頭堡か。
私見
もともとポジション調整が起こりやすいということもありますが、三週連続の陰線です。商いも薄く、既に年末年始モードとなっている雰囲気です。今年は儲かって仕方がなかった筋も多いでしょうから、12 月に無理してポジションメイクすることもない感じでしょうか。ただ、居残りトレーダーが無茶をしてくることもあるので、警戒は必要です。ドル円はテクニカル的にはここからの上昇トレンドが期待しづらいチャートとなってしまいました。ただし、なにか大きな事件が起こらない限り、年末にかけて値幅は期待できないので、ジリジリ下げて 110 円程度で今年は終えそうなシナリオがなんとなく見えてきました。
基本的には戻り売りですが、タイミングはよく見て図ったほうがいいですね。
予想 : 110.00 - 112.40