2025年9月第2週のドル円相場は、弱い米雇用統計で利下げ観測が強まる一方、石破首相の辞任で日本の政治リスクも台頭。来週の注目は米CPI・PPIと自民党総裁選の行方。
今週(9/1〜9/5)の振り返り
ドル円相場は週初147.04円で寄り付いた。月曜日は米休場の影響で動意に乏しかったが、2日には氷見野日銀副総裁の発言(早期利上げに向けては踏み込んだ発言なし)を受けて円売りが進み148円台に接近。欧州時間にはポンド安に伴うドル買いも波及し149円目前まで上昇したものの、米ISM製造業景況指数が予想を下回ったことで上値が重くなった。
3日も円安の流れは進み一時149円台へ上伸したが、米JOLTS求人件数の減少を受けて148円を割り込み、その後も米ADP雇用統計など弱い指標が続きドル売り圧力が強まった。
週末5日に発表された米8月雇用統計では、非農業部門雇用者数が+2.2万人と市場予想(+8万人)を大幅に下回り、失業率は4.3%へ上昇した。6月分は減少に下方修正され、雇用市場の減速が一層鮮明となった。
これを受けてドル円は148円台から147円台前半へ下落し、米金利先物市場では9月FOMCでの利下げを確実視する動きが広がった。年内の利下げ回数増加や0.5%利下げの可能性まで意識されている。
来週(9/8〜9/12)の注目イベントと見通し
① 米インフレ指標とFOMC前の動き
来週は米8月CPI(11日)、PPI(10日)などインフレ指標が集中する。雇用市場の弱さに加えインフレ鈍化も確認されれば、FRBは9月17〜18日のFOMCで利下げ幅が50bpになるとの見方も出てくる。逆にインフレが底堅さを示せば、利下げ幅は25bpにとどまる可能性が高い。
② 日本の政治リスク:石破首相の辞任
9月7日に石破首相が辞任を表明した。森山幹事長辞任に続く政権基盤の揺らぎにより、与党は臨時総裁選を実施する見通しである。後継人事の不透明感は日本の財政・金融政策の一貫性への懸念を強め、短期的には円売り要因となりやすい。一方で、次期総裁候補の政策姿勢次第では円高に振れる局面もあり、相場は政治ニュースに敏感な状況が続くだろう。
③ 国内経済指標と日銀スタンス
日本では7月実質GDP改定値や法人企業景気予測調査が予定されている。7月の実質賃金がプラスに転じたことから、日銀の年内利上げ観測がくすぶっている。ただし次回会合(9/18〜19)での利上げはコンセンサスではなく、市場は新政権のスタンスや経済データを見極める展開となる。
テクニカル見通し
弱い雇用統計を受け、ドル円は大きく売られた者の、未だレンジの中に留まっていることには注意が必要。とはいえ、オシレーター系のテクニカル(MACDやRSI)はじりじりと下方向への動きに回帰しつつある。
9/8は7日の石破総理の辞任に伴って窓明けをするだろうが、それによりレンジ幅の外に出るのかどうかをまず確認したい。
結論:米利下げ観測と日本政治リスクのせめぎ合い
ドル円相場は、米雇用統計の弱さを受けた米金利低下によるドル安圧力と、石破首相辞任による日本政治リスクによる円売り圧力が交錯する週を迎える。来週は米CPI・PPIを通じたインフレ動向と、自民党総裁選の行方が最大の焦点となる。145〜150円の広めのレンジで上下に振れる可能性が高く、トレーダーはイベント前後の急変動に備えたリスク管理が求められる局面である。

